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アサギと黒羽(第20話)
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「ブラーナって、東方出身だったの?」
ブラーナの恋人であるカルミナすら知らされていなかった事実ー。
「東方出身者は、お主らと異なり気の扱い方が異なる。その気の流れを探っていけば、その者の出自もわかるというものだ」
アサギは、本来ならば「同胞」ともいうべきブラーナの端正な顔を見つめながら、
「顔立ちは、東方というよりは西方出身者のようだがな・・・」
「そうよ」
ブラーナが、眼鏡をはずしながら答えた。彼女のストレートの黒い髪が、天空世界の強めの風に激しく靡く。
「直接の両親は、どちらも西方出身者らしかったんだけど、二人とも、私を生んですぐに亡くなったので、その後、幼い私は、東方にいる今の両親に引き取られた。そこで、東方の戦闘技術を学んだのよ」
そして、アサギの太刀を一瞥し、鞘に収まったままの自らの太刀を前に突き出した。
「私の武器が、アンタの太刀と似ているのも、私が東方で学んだから」
「だろうな」
アサギも納得したようだった。
「先ほども言った通り、東方では気の使い方が、西方の者達とは異なるのでな・・・立ち振る舞いや雰囲気などから、ある程度修練した者であればすぐにわかる」
「ブラーナ、ってことはアンタ・・・もしかして黒羽のことも」
カルミナが、そのことに思い至って、ブラーナに確認しようとする。
「ええ、多少はね・・・黒羽の使っている術が、少なくとも私が暮らした東方では禁忌とされていることは、知っていたわ・・・それゆえに、仲間でありながら警戒もしていた」
時折、ブラーナと黒羽の間に微妙な空気が流れることがあったが、こういうことだったのか・・・カルミナは、腕を支えている黒羽の横顔を思わず見つめた。
「カルミナ・・・隠していてごめんなさい」
黒羽がか細い声でカルミナに謝る。
「い、いや、謝る必要なんてないよ?黒羽・・・」
カルミナにしてみれば、この世界に邪術師と呼ばれている存在がいて、しかも彼らが東方では禁忌とされているという事実でさえ、初めて知ったことだ。別に隠す隠さないの問題でもなかった。
「でも、あくまでもそれは東方だけの話だよな・・・現に、黒羽は今まで何もしてこなかったぞ」
「たまに、戦闘に出る時くらいだ、こいつが能力を使うのは」
「翔、卓、それは・・・」
黒羽をかばおうとした翔と卓を、黒羽が止めようとする。その態度に、アサギがかすかに笑った。
「邪術師の厄介なところは」
アサギがゆっくりと立ち上がりながら、邪術師に関するある性質について、語り始めた。
「本人の意志とは関係なく、人に害をなしてしまう可能性が高いということだ」
その言葉に、黒羽とブラーナを除く全員が息を呑んだー。
ブラーナの恋人であるカルミナすら知らされていなかった事実ー。
「東方出身者は、お主らと異なり気の扱い方が異なる。その気の流れを探っていけば、その者の出自もわかるというものだ」
アサギは、本来ならば「同胞」ともいうべきブラーナの端正な顔を見つめながら、
「顔立ちは、東方というよりは西方出身者のようだがな・・・」
「そうよ」
ブラーナが、眼鏡をはずしながら答えた。彼女のストレートの黒い髪が、天空世界の強めの風に激しく靡く。
「直接の両親は、どちらも西方出身者らしかったんだけど、二人とも、私を生んですぐに亡くなったので、その後、幼い私は、東方にいる今の両親に引き取られた。そこで、東方の戦闘技術を学んだのよ」
そして、アサギの太刀を一瞥し、鞘に収まったままの自らの太刀を前に突き出した。
「私の武器が、アンタの太刀と似ているのも、私が東方で学んだから」
「だろうな」
アサギも納得したようだった。
「先ほども言った通り、東方では気の使い方が、西方の者達とは異なるのでな・・・立ち振る舞いや雰囲気などから、ある程度修練した者であればすぐにわかる」
「ブラーナ、ってことはアンタ・・・もしかして黒羽のことも」
カルミナが、そのことに思い至って、ブラーナに確認しようとする。
「ええ、多少はね・・・黒羽の使っている術が、少なくとも私が暮らした東方では禁忌とされていることは、知っていたわ・・・それゆえに、仲間でありながら警戒もしていた」
時折、ブラーナと黒羽の間に微妙な空気が流れることがあったが、こういうことだったのか・・・カルミナは、腕を支えている黒羽の横顔を思わず見つめた。
「カルミナ・・・隠していてごめんなさい」
黒羽がか細い声でカルミナに謝る。
「い、いや、謝る必要なんてないよ?黒羽・・・」
カルミナにしてみれば、この世界に邪術師と呼ばれている存在がいて、しかも彼らが東方では禁忌とされているという事実でさえ、初めて知ったことだ。別に隠す隠さないの問題でもなかった。
「でも、あくまでもそれは東方だけの話だよな・・・現に、黒羽は今まで何もしてこなかったぞ」
「たまに、戦闘に出る時くらいだ、こいつが能力を使うのは」
「翔、卓、それは・・・」
黒羽をかばおうとした翔と卓を、黒羽が止めようとする。その態度に、アサギがかすかに笑った。
「邪術師の厄介なところは」
アサギがゆっくりと立ち上がりながら、邪術師に関するある性質について、語り始めた。
「本人の意志とは関係なく、人に害をなしてしまう可能性が高いということだ」
その言葉に、黒羽とブラーナを除く全員が息を呑んだー。
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