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水無杏里の物語(第27話)

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「え・・・」

 楓に何を言われたのか・・・一瞬わからなかった。

 完全に・・・墜とされた・・・?

「ま、待ってください、楓さん!先輩たちが・・・まさか!!」

 体がガタガタと震え出す・・・まるで、何かの病気でも発症したかのような、小刻みな震えだった。

 口の中が異様に乾いた。言葉が・・・うまく出てこない。楓を問いただしたいのだが、口が動かないのだ。

 脂汗が全身から吹き出る。まるで、他の誰かが自分の体を乗っ取り、主導権を奪われたかのような、そんな錯覚に陥った。

 そんな、まさか・・・先輩たちが!!

「カイト!」

 カイトの豹変ぶりを見て、心配した杏里が、カイトの隣に座り、彼の背中を撫でる。だが、そんな彼女の手の感触も、カイトは気にする余裕さえなかった。

「楓さん・・・まさか、カイトに伝えたいことって・・・」

 杏里が恐る恐る楓に尋ねた。楓は、神妙な面持ちのまま、

「それ以外にも話はあるんだが・・・このことはカイトに知らせておく必要があると思ったんだ」

「楓・・・そういえば、カイトは空のハンターだとさっき言っておったのう・・・まさか、あの戦いのときに?」

 モリガンはどうやら思い当たることがあるらしい。杏里と共に楓に尋ねる。

「ああ、そうだ」

 楓が応えたー静かな声で。ただ淡々と語っているようにも聞こえるが、それがより厳しい現実を物語っているように思われた。

「モリガン、アンタは使い魔を通じて戦いの顛末を見ていたんだろう?蒼き風アウラ・カエルレウムと・・・」

 自信を落ち着かせる意味もあるのか・・・そこで一旦言葉を区切り、そして・・・、

「東方の大陸のチーム燎原リンイェン紫の牙ズーツァオリャとの戦いを」

ーー

 モリガンは、たまたま戦いの場に居合わせただけだった。

「わしも、大樹の地下世界での用事を済ませた後じゃったからのう・・・その後、チームのみんなと別行動となって、わしだけちょっと空に用があったから、飛空船に乗っていたんじゃ」

「それで、そのはるか遠くでドンパチやっているカイトたちの飛空鎧の姿を見たと・・・」

 楓は、ある程度モリガンから様子は窺っていたものの、まだ聞いていないこともあるようで、頷きながら、モリガンに先を促した。

「まあ、飛空船の窓から見える距離ではなかったからのう・・・ただ、飛空鎧特有の魔力波動を感じたので、そっちの方に使い魔を飛ばして、何が起こっているのか、様子を確認させたんじゃよ。すると・・・」

 そこで、4機の飛空鎧が空の上でバトルを繰り広げている場面に出くわしたーということだったー。
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