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水無杏里の物語(第17話)
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杏里は、白い世界にいた。彼女自身、今自分がいる場所がどこなのかも知っている。そして、なぜ自分がここに「拘束」されているのかもわかっている。
自分が過去に犯した過ちのため・・・自身の心が荊に絡まれ、傷つけられ続けるのは、当然のことなのだー。
一面が白い世界ーはるか遠く、地平の彼方のみが宇宙のような暗黒に包まれたこの世界において、色彩を有しているのは、彼女自身と、彼女を縛り上げる荊ー彼女の体の至る所から出血しているが、これは自身の肉体に対する傷というよりも、心に負ったダメージを表している。
裸体の杏里の全身を締め上げる荊は、日に日にその強さを増していき、彼女の心を少しずつ傷つけ、壊していくー。
このままでは、いずれ自身の心が完全に壊れてしまう時も来るだろうーが、それは、自分が犯した過ちを見れば、むしろ当然のことだと言える。
魔女と呼ばれ、ある少年の手により、あらゆる動きを封じられた彼女は、カイトに対して別れを告げた。
ただ、大好きだったーと。
それが、彼女の「最期の言葉」ーとなるはずだった・・・。
ーー
「やあ」
白亜の空間に、鈴のような声が響く。親し気に聞こえるが、一方で警戒心をそそられるような、そんな危なっかしさも秘めた声だー。
「肉体的にはまだ木の中で眠ったままだけど、こちらの世界ではこうして会話ができるようね・・・少なくとも、今のところは」
自分に向けられた声に、思わず顔を上げる杏里。愁いを秘めた瞳が、前に立つ着物姿の女性の姿を映し出した。なぜか、相手は鬼の面をつけている。
「あなたは・・・」
「尋ねなくても、お前の能力でわかるんじゃないかしら・・・まあでも、一応初対面には違いないし、自己紹介は必要ね」
女性は、鬼の面をゆっくりと外した。そして、その美しい相貌が露となるーが、その美貌に似合わない額の傷が、一際印象に残る。
「初めまして、私は世羅ー我が従者たちは、私のことを姫と呼ぶけどね・・・お前が水無杏里だね」
面を外し、薄く微笑む女性ー世羅姫は、荊で締め上げられた杏里にゆっくりと近づいて行った。
「ずいぶんと痛々しい姿ね・・・その荊、お前自身が作り上げたものでしょう?」
荊に軽く触れる。その棘一つ一つが、杏里を傷つけ、その精神をいずれは破壊に追いやるということは、見ればわかることだ。
「自信の破滅を望むのかしら、お前は」
「・・・」
杏里は応えない。ただ、突如目の前に現れた、この世羅と名乗る闖入者を、力のない瞳で見守り続けることしかできなかった。
「お前が最終的にどのような道を選ぼうとも、それを拒むつもりはないわ・・・ただ、今しばらくは滅びの道を選ばせるつもりはない」
世羅が冷厳に告げたーそれはまるで、今のお前には生死を選ぶ権利さえないと言わんとしているかのようなーそんな強固な意志さえ感じさせるものでもあったー。
自分が過去に犯した過ちのため・・・自身の心が荊に絡まれ、傷つけられ続けるのは、当然のことなのだー。
一面が白い世界ーはるか遠く、地平の彼方のみが宇宙のような暗黒に包まれたこの世界において、色彩を有しているのは、彼女自身と、彼女を縛り上げる荊ー彼女の体の至る所から出血しているが、これは自身の肉体に対する傷というよりも、心に負ったダメージを表している。
裸体の杏里の全身を締め上げる荊は、日に日にその強さを増していき、彼女の心を少しずつ傷つけ、壊していくー。
このままでは、いずれ自身の心が完全に壊れてしまう時も来るだろうーが、それは、自分が犯した過ちを見れば、むしろ当然のことだと言える。
魔女と呼ばれ、ある少年の手により、あらゆる動きを封じられた彼女は、カイトに対して別れを告げた。
ただ、大好きだったーと。
それが、彼女の「最期の言葉」ーとなるはずだった・・・。
ーー
「やあ」
白亜の空間に、鈴のような声が響く。親し気に聞こえるが、一方で警戒心をそそられるような、そんな危なっかしさも秘めた声だー。
「肉体的にはまだ木の中で眠ったままだけど、こちらの世界ではこうして会話ができるようね・・・少なくとも、今のところは」
自分に向けられた声に、思わず顔を上げる杏里。愁いを秘めた瞳が、前に立つ着物姿の女性の姿を映し出した。なぜか、相手は鬼の面をつけている。
「あなたは・・・」
「尋ねなくても、お前の能力でわかるんじゃないかしら・・・まあでも、一応初対面には違いないし、自己紹介は必要ね」
女性は、鬼の面をゆっくりと外した。そして、その美しい相貌が露となるーが、その美貌に似合わない額の傷が、一際印象に残る。
「初めまして、私は世羅ー我が従者たちは、私のことを姫と呼ぶけどね・・・お前が水無杏里だね」
面を外し、薄く微笑む女性ー世羅姫は、荊で締め上げられた杏里にゆっくりと近づいて行った。
「ずいぶんと痛々しい姿ね・・・その荊、お前自身が作り上げたものでしょう?」
荊に軽く触れる。その棘一つ一つが、杏里を傷つけ、その精神をいずれは破壊に追いやるということは、見ればわかることだ。
「自信の破滅を望むのかしら、お前は」
「・・・」
杏里は応えない。ただ、突如目の前に現れた、この世羅と名乗る闖入者を、力のない瞳で見守り続けることしかできなかった。
「お前が最終的にどのような道を選ぼうとも、それを拒むつもりはないわ・・・ただ、今しばらくは滅びの道を選ばせるつもりはない」
世羅が冷厳に告げたーそれはまるで、今のお前には生死を選ぶ権利さえないと言わんとしているかのようなーそんな強固な意志さえ感じさせるものでもあったー。
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