212 / 464
水無杏里の物語(第11話)
しおりを挟む
カイトが予想した通り、梓から質問攻めにされることとなったー。
空での生活はどうか、飛空鎧で空を飛び回るのはどんな感じか、同じチームにはどんな人たちがいるのか、ここ以外にも他の浮遊大陸を訪れたことがあるのかー杏里もそうだが、梓もまた空の上の世界にはかなりの興味があるらしかった。
よく考えてみれば、この町には年頃の女子が楽しめるような娯楽には乏しい。一応学校や教会など、人の集まる施設はあるものの、町の規模が小さいこの町では学校と言ってもそんなに大勢が通っているわけではないし、前文明時代と異なり、必ず通学しなければならないという決まりがあるわけでもない。教会に至っては、そもそも友達と集まるような場所でもないだろう。
杏里だけでなく、梓のような年頃の少女たちにとって、なるほど確かに外の世界ー空の上での生活は、憧れになるというのもわからなくはなかった。
「梓、ごめん。カイトをこれからグエンさんのところに連れて行くから、そのぐらいにしてあげて」
さすがに、杏里もこれ以上話が長引くとカイトに悪いと思ったのか、これからカイトを病院に連れていくつもりだということを打ち明ける。
「ああ、ごめんなさいカイト君。いっぱい質問しちゃって・・・どうしても、外のことが知りたくなって、つい・・・」
顔を赤くして、恥ずかし気にうつむく梓。しかし、上目使いにカイトを窺う彼女の表情には、まだ聞きたりなさそうな雰囲気が漂っていた。
そんな彼女に気を使ってか、カイトは、
「川岸さん、今度またゆっくり話そうよ」
そう言われて、梓の顔がぱあっと輝いた。
「ええ!」
ーー
「こっちよ、カイト」
梓と別れて、カイトと杏里、壮太の3人は道の途中で自動走行車を拾ってグエン爺さんが開業しているという診療所を訪れていた。
この町の規模に相応しく、小さな診療所だった。だが、それなりに人で混雑しており、後から来たカイトたちは、かなり待たされることになりそうであった。
「結構待つことになるかもしれないけど、カイトは大丈夫かしら」
「僕なら大丈夫だよ。待つのには慣れているし・・・」
カイトが周囲を見回す。空の上での生活がメインとなっていたカイトにとって、こういった診療所を訪れる機会はめったにない。一応「蒼き風」が所有する飛空船の中にも医務室はあるが、さすがに診療所とは比較にはならない。
「杏里、カイト君のことを頼めるか、私は先に、カイト君の飛空鎧のことを町工場に頼みに行ってくるよ」
飛空鎧をこのままあの森の近くに放置しておくわけにはいかない。壮太の言う通り、ここは早めに工場に頼みに行った方がいいだろう。
「ええ、わかったわ。お父さんは飛空鎧のことをお願いね。私は終わるまでカイトについているから」
「すいません、何から何まで面倒見てもらって。飛空鎧のこと、よろしくお願いします」
カイトが壮太に頭を下げる。そんな彼に、壮太は笑いながら、
「この町では助け合いは当り前さ。それじゃ、また後で」
壮太は診療所を後にしたー。
空での生活はどうか、飛空鎧で空を飛び回るのはどんな感じか、同じチームにはどんな人たちがいるのか、ここ以外にも他の浮遊大陸を訪れたことがあるのかー杏里もそうだが、梓もまた空の上の世界にはかなりの興味があるらしかった。
よく考えてみれば、この町には年頃の女子が楽しめるような娯楽には乏しい。一応学校や教会など、人の集まる施設はあるものの、町の規模が小さいこの町では学校と言ってもそんなに大勢が通っているわけではないし、前文明時代と異なり、必ず通学しなければならないという決まりがあるわけでもない。教会に至っては、そもそも友達と集まるような場所でもないだろう。
杏里だけでなく、梓のような年頃の少女たちにとって、なるほど確かに外の世界ー空の上での生活は、憧れになるというのもわからなくはなかった。
「梓、ごめん。カイトをこれからグエンさんのところに連れて行くから、そのぐらいにしてあげて」
さすがに、杏里もこれ以上話が長引くとカイトに悪いと思ったのか、これからカイトを病院に連れていくつもりだということを打ち明ける。
「ああ、ごめんなさいカイト君。いっぱい質問しちゃって・・・どうしても、外のことが知りたくなって、つい・・・」
顔を赤くして、恥ずかし気にうつむく梓。しかし、上目使いにカイトを窺う彼女の表情には、まだ聞きたりなさそうな雰囲気が漂っていた。
そんな彼女に気を使ってか、カイトは、
「川岸さん、今度またゆっくり話そうよ」
そう言われて、梓の顔がぱあっと輝いた。
「ええ!」
ーー
「こっちよ、カイト」
梓と別れて、カイトと杏里、壮太の3人は道の途中で自動走行車を拾ってグエン爺さんが開業しているという診療所を訪れていた。
この町の規模に相応しく、小さな診療所だった。だが、それなりに人で混雑しており、後から来たカイトたちは、かなり待たされることになりそうであった。
「結構待つことになるかもしれないけど、カイトは大丈夫かしら」
「僕なら大丈夫だよ。待つのには慣れているし・・・」
カイトが周囲を見回す。空の上での生活がメインとなっていたカイトにとって、こういった診療所を訪れる機会はめったにない。一応「蒼き風」が所有する飛空船の中にも医務室はあるが、さすがに診療所とは比較にはならない。
「杏里、カイト君のことを頼めるか、私は先に、カイト君の飛空鎧のことを町工場に頼みに行ってくるよ」
飛空鎧をこのままあの森の近くに放置しておくわけにはいかない。壮太の言う通り、ここは早めに工場に頼みに行った方がいいだろう。
「ええ、わかったわ。お父さんは飛空鎧のことをお願いね。私は終わるまでカイトについているから」
「すいません、何から何まで面倒見てもらって。飛空鎧のこと、よろしくお願いします」
カイトが壮太に頭を下げる。そんな彼に、壮太は笑いながら、
「この町では助け合いは当り前さ。それじゃ、また後で」
壮太は診療所を後にしたー。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
『転生した無名藩士、幕末の動乱を生き抜く~時代・技術考証や設定などは完全無視です!~』
姜維信繁
ファンタジー
佐賀藩より早く蒸気船に蒸気機関車、アームストロング砲。列強に勝つ!
人生100年時代の折り返し地点に来た企画営業部長の清水亨は、大きなプロジェクトをやり遂げて、久しぶりに長崎の実家に帰ってきた。
学生時代の仲間とどんちゃん騒ぎのあげく、急性アルコール中毒で死んでしまう。
しかし、目が覚めたら幕末の動乱期。龍馬や西郷や桂や高杉……と思いつつ。あまり幕末史でも知名度のない「薩長土肥」の『肥』のさらに隣の藩の大村藩のお話。
で、誰に転生したかと言うと、これまた誰も知らない、地元の人もおそらく知らない人の末裔として。
なーんにもしなければ、間違いなく幕末の動乱に巻き込まれ、戊辰戦争マッシグラ。それを回避して西洋列強にまけない国(藩)づくりに励む事になるのだが……。
当て馬悪役令息のツッコミ属性が強すぎて、物語の仕事を全くしないんですが?!
犬丸大福
ファンタジー
ユーディリア・エアトルは母親からの折檻を受け、そのまま意識を失った。
そして夢をみた。
日本で暮らし、平々凡々な日々の中、友人が命を捧げるんじゃないかと思うほどハマっている漫画の推しの顔。
その顔を見て目が覚めた。
なんと自分はこのまま行けば破滅まっしぐらな友人の最推し、当て馬悪役令息であるエミリオ・エアトルの双子の妹ユーディリア・エアトルである事に気がついたのだった。
数ある作品の中から、読んでいただきありがとうございます。
幼少期、最初はツラい状況が続きます。
作者都合のゆるふわご都合設定です。
1日1話更新目指してます。
エール、お気に入り登録、いいね、コメント、しおり、とても励みになります。
お楽しみ頂けたら幸いです。
***************
2024年6月25日 お気に入り登録100人達成 ありがとうございます!
100人になるまで見捨てずに居て下さった99人の皆様にも感謝を!!
2024年9月9日 お気に入り登録200人達成 感謝感謝でございます!
200人になるまで見捨てずに居て下さった皆様にもこれからも見守っていただける物語を!!
2025年1月6日 お気に入り登録300人達成 感涙に咽び泣いております!
ここまで見捨てずに読んで下さった皆様、頑張って書ききる所存でございます!これからもどうぞよろしくお願いいたします!
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
称号は神を土下座させた男。
春志乃
ファンタジー
「真尋くん! その人、そんなんだけど一応神様だよ! 偉い人なんだよ!」
「知るか。俺は常識を持ち合わせないクズにかける慈悲を持ち合わせてない。それにどうやら俺は死んだらしいのだから、刑務所も警察も法も無い。今ここでこいつを殺そうが生かそうが俺の自由だ。あいつが居ないなら地獄に落ちても同じだ。なあ、そうだろう? ティーンクトゥス」
「す、す、す、す、す、すみませんでしたあぁあああああああ!」
これは、馬鹿だけど憎み切れない神様ティーンクトゥスの為に剣と魔法、そして魔獣たちの息づくアーテル王国でチートが過ぎる男子高校生・水無月真尋が無自覚チートの親友・鈴木一路と共に神様の為と言いながら好き勝手に生きていく物語。
主人公は一途に幼馴染(女性)を想い続けます。話はゆっくり進んでいきます。
※教会、神父、などが出てきますが実在するものとは一切関係ありません。
※対応できない可能性がありますので、誤字脱字報告は不要です。
※無断転載は厳に禁じます
うちの冷蔵庫がダンジョンになった
空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞
ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。
そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。
目が覚めたら異世界でした!~病弱だけど、心優しい人達に出会えました。なので現代の知識で恩返ししながら元気に頑張って生きていきます!〜
楠ノ木雫
恋愛
病院に入院中だった私、奥村菖は知らず知らずに異世界へ続く穴に落っこちていたらしく、目が覚めたら知らない屋敷のベッドにいた。倒れていた菖を保護してくれたのはこの国の公爵家。彼女達からは、地球には帰れないと言われてしまった。
病気を患っている私はこのままでは死んでしまうのではないだろうかと悟ってしまったその時、いきなり目の前に〝妖精〟が現れた。その妖精達が持っていたものは幻の薬草と呼ばれるもので、自分の病気が治る事が発覚。治療を始めてどんどん元気になった。
元気になり、この国の公爵家にも歓迎されて。だから、恩返しの為に現代の知識をフル活用して頑張って元気に生きたいと思います!
でも、あれ? この世界には私の知る食材はないはずなのに、どうして食事にこの四角くて白い〝コレ〟が出てきたの……!?
※他の投稿サイトにも掲載しています。
異世界で作ろう!夢の快適空間in亜空間ワールド
風と空
ファンタジー
並行して存在する異世界と地球が衝突した!創造神の計らいで一瞬の揺らぎで収まった筈なのに、運悪く巻き込まれた男が一人存在した。
「俺何でここに……?」「え?身体小さくなってるし、なんだコレ……?[亜空間ワールド]って……?」
身体が若返った男が異世界を冒険しつつ、亜空間ワールドを育てるほのぼのストーリー。時折戦闘描写あり。亜空間ホテルに続き、亜空間シリーズとして書かせて頂いています。採取や冒険、旅行に成長物がお好きな方は是非お寄りになってみてください。
毎日更新(予定)の為、感想欄の返信はかなり遅いか無いかもしれない事をご了承下さい。
また更新時間は不定期です。
カクヨム、小説家になろうにも同時更新中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる