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カルミナとブラーナ(第33話)
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ゼルキンス村よりも南方に距離120の地点ー。
飛行船「白波号」は無事に外殻の裂け目を潜り抜け、目標の地点に着陸した。
「すまねえな、お前らばかりに戦いを任せて・・・オレも現役だったらいくらでも力になれたんだが」
かつてはA級クラスである亜人種型とも対等に渡り合うことができた武人だったが、最後の戦いでの後遺症のため、もはや前線で戦うことはできなくなっていた。その代わりに、飛行船操縦士としての技能を身に着けて、今は「白波号」の操縦士となっている。
「武人さんには「白波号」の操縦で十分助けられているし、戦いはあたしたちに任せて!」
「操縦の腕なら武人さんの右に出る者はいないわよね、実際」
カルミナが、武人に軽くウィンクしながら部屋を後にする。他の面々もその後に続いた。
「では、私も行きます」
先ほどまで意識を集中していた黒羽も後に続く。だが、部屋を出る前に、ふと武人の方を見やって、
「そう言えば、武人は伝説の害蟲ハンターでしたね」
思い出したように、武人に確認した。
「ああ、現役の頃は、それなりに名は知られていたな」
黒羽に指摘され、かつての自分を思い出しながら、武人は煙草の箱を取り出した。
「任務達成率ほぼ100%だった・・・と聞いておりますが」
「ほぼ・・・な」
煙草をくわえながら、武人が語り始める。
「あの・・・最後の1匹だけは仕留められなかったんだよな・・・しかもこっちは再起不能になるケガまで負っちまった。最後にして、最初にしくじった案件さ。オレもあの頃は若かったから、功を焦りすぎたんだ」
武人の昔語りを、黒羽はただ静かに聞き続ける。他人の過去について、あれこれ詮索するのはよくないと思いつつも、それでもかつては一流のハンターだった武人のことをもっと知りたいと思った。
「お前さん、結構特殊な能力を持ってるんだろ?」
ふいに武人が、黒羽に尋ねてきた。
「・・・まあ、他の皆さんよりは色々できるといった程度ですが・・・」
「謙遜すんな。お前さんにはかなり助けられているんだ、オレも、この船の他の連中もな」
煙草の煙をゆっくりと吐きながら、武人は黒羽の頭を軽く撫でてやる。
「・・・ですが、私の力は・・・」
「わかってるさ。お前さんの能力には、危険が伴うってことくらい。それで、ブラーナの姉さん辺りから目をつけられてんだろ?」
「・・・っ!知って・・・いたんですか」
どうやら、武人も、黒羽の能力の持つ異質さと危険性について気が付いていたようだ。それに、ブラーナとのことまで見抜かれていたとは・・・。
「オレは、ブラーナの姉さんほどお前さんを警戒してはいない。もちろん、やばいことになりそうなら、その時はオレも全力でお前さんを止めるけどな・・・」
「・・・」
「あいつらのこと、頼んだぜ、黒羽の嬢ちゃん」
「・・・はい」
武人は、黒羽の頭から手を離すと、再び煙草へと手を伸ばした。
「それでは行ってきます」
部屋から出ていこうとする黒羽に対し、軽く手を振って送り出す武人だったー。
飛行船「白波号」は無事に外殻の裂け目を潜り抜け、目標の地点に着陸した。
「すまねえな、お前らばかりに戦いを任せて・・・オレも現役だったらいくらでも力になれたんだが」
かつてはA級クラスである亜人種型とも対等に渡り合うことができた武人だったが、最後の戦いでの後遺症のため、もはや前線で戦うことはできなくなっていた。その代わりに、飛行船操縦士としての技能を身に着けて、今は「白波号」の操縦士となっている。
「武人さんには「白波号」の操縦で十分助けられているし、戦いはあたしたちに任せて!」
「操縦の腕なら武人さんの右に出る者はいないわよね、実際」
カルミナが、武人に軽くウィンクしながら部屋を後にする。他の面々もその後に続いた。
「では、私も行きます」
先ほどまで意識を集中していた黒羽も後に続く。だが、部屋を出る前に、ふと武人の方を見やって、
「そう言えば、武人は伝説の害蟲ハンターでしたね」
思い出したように、武人に確認した。
「ああ、現役の頃は、それなりに名は知られていたな」
黒羽に指摘され、かつての自分を思い出しながら、武人は煙草の箱を取り出した。
「任務達成率ほぼ100%だった・・・と聞いておりますが」
「ほぼ・・・な」
煙草をくわえながら、武人が語り始める。
「あの・・・最後の1匹だけは仕留められなかったんだよな・・・しかもこっちは再起不能になるケガまで負っちまった。最後にして、最初にしくじった案件さ。オレもあの頃は若かったから、功を焦りすぎたんだ」
武人の昔語りを、黒羽はただ静かに聞き続ける。他人の過去について、あれこれ詮索するのはよくないと思いつつも、それでもかつては一流のハンターだった武人のことをもっと知りたいと思った。
「お前さん、結構特殊な能力を持ってるんだろ?」
ふいに武人が、黒羽に尋ねてきた。
「・・・まあ、他の皆さんよりは色々できるといった程度ですが・・・」
「謙遜すんな。お前さんにはかなり助けられているんだ、オレも、この船の他の連中もな」
煙草の煙をゆっくりと吐きながら、武人は黒羽の頭を軽く撫でてやる。
「・・・ですが、私の力は・・・」
「わかってるさ。お前さんの能力には、危険が伴うってことくらい。それで、ブラーナの姉さん辺りから目をつけられてんだろ?」
「・・・っ!知って・・・いたんですか」
どうやら、武人も、黒羽の能力の持つ異質さと危険性について気が付いていたようだ。それに、ブラーナとのことまで見抜かれていたとは・・・。
「オレは、ブラーナの姉さんほどお前さんを警戒してはいない。もちろん、やばいことになりそうなら、その時はオレも全力でお前さんを止めるけどな・・・」
「・・・」
「あいつらのこと、頼んだぜ、黒羽の嬢ちゃん」
「・・・はい」
武人は、黒羽の頭から手を離すと、再び煙草へと手を伸ばした。
「それでは行ってきます」
部屋から出ていこうとする黒羽に対し、軽く手を振って送り出す武人だったー。
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