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カルミナとブラーナ(第32話)

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 飛行船「白波号」は、惑星Σ-11の外殻付近まで航行したー。

「見慣れているつもりだけど、やっぱり近くで惑星を見ると、圧倒されるねえ・・・」

 惑星ー浮遊大陸を内包する巨大な鉱物体ーを見て、思わず感嘆の声を上げるカルミナ。他のみんなも声には出さないものの、その見事なまでの存在感の大きさに圧倒されてしまう。

 惑星にもいろいろな種類があるが、その内部に、浮遊大陸が内包されているものと、全体が巨大な鉱石として天空を周回しているものが多数派を占める。

 この惑星Σ-11は前者で、惑星内部そのものは空洞だが、その中に大陸が魔力によって固定されているのだ。いや、より正確に言えば、惑星と共に大樹を周回しているのである。

 内部の浮遊大陸の住民たちは、浮遊大陸を包み込むかのように存在する惑星を外殻と呼称している。そして、その裂け目が浮遊大陸への進入路となるのだ。裂け目とは言っても、実際には外殻の鉱石部分の面積は、実はあまり大きくはない。イメージ的には、公園によくある回転ジャングルジムがぴったりと来るかもしれない。あれが巨大化して鉱石の塊となって空を周回しているといった感じか。

 害蟲を負い、飛行船「白波号」は惑星の裂け目を通り、浮遊大陸ーゼルキンス村付近を目指した。裂け目を通り抜ける時、その裂け目の表面ー惑星の断面を改めて目にすることができた。巨大な絶壁ー当然だが、惑星は巨大なだけに、その裂け目の断面もかなりの距離になる。

「こんな巨大なものが空を回っているなんて・・・ね」

「そんなこと言ったら、本当の宇宙ではそれこそ本物の惑星が恒星の周りを周回しているわけでしょ?」

「まあ、それはそうだけど・・・」

「この世界は、まさに宇宙そのものの縮図なのよ、カルミナ」

 ブラーナの言う通りかもしれない。大樹を恒星、そしてそれを周回する惑星、さらにその周りをまわる衛星ーまさに宇宙そのものをこの地上に再現したようなものと言えなくもなかった。

 前文明時代においては、空に浮かぶ大地ですら、おとぎ話だけのことだというのにー。

「・・・武人さん、害蟲がまた少し動きました。ゼルキンス村から距離139・・・」

「・・・おいおい、さっきよりも村に近づいてないか、あいつ」

 黒羽の報告に、翔が焦り始める。手負いとは言え、この距離なら村までそんなにはかからないはずーこのままだと、害蟲が先に村にたどり着いてしまう。

「もう少し、私の魔力で動きの抑制を試みます」

 そういって、黒羽は半眼だった瞳を閉じたー精神統一して、害蟲へと送り込んだ羽根に、さらに意識を集中し始める。

「よし、黒羽の嬢ちゃんが抑えている間に、適当な場所を見つけて着陸するぞ、おめえら」

「わかった」

 こうして、飛行船「白波号」は、ゼルキンス村から南方120の地点へと降り立ったー。

 

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