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カルミナとブラーナ(第25話)
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卓の鋭い突きが、害蟲の右肩の花弁に襲い掛かるー。
「・・・つぅ」
だが、卓自身にもダメージはある。紫色の毒煙に足を突っ込んでいるのだから、全くの無傷というわけにもいかない。
黒羽によれば、強い幻覚性の毒素らしいが、幻覚ばかりではなく、直接接触することで痛みを感じさせる作用もあるのかもしれない。
黒羽の能力補助と、自身の闘気で守りを固めて挑んでもこれだ。これらの支えがなかったらと思うとぞっとする。
「まだだ・・・まだ始まったばかりだ」
卓は自身を奮い立たせ、孤軍奮闘している相棒のためにも早急に花弁を潰そうと、激しい連撃を繰り出していた。花弁そのものは、害蟲本体に比べればはるかに脆く、卓の打突により、無残にも散らされていくー。
「あと・・・あと少しだ」
もう、花弁がほとんど害蟲からなくなってきたその時ー。
「・・・っ!」
突然、視界が揺れた。そして、目の前にいるはずの害蟲が、二重に見えてくる。
「・・・これが、幻覚か・・・」
狙いがうまく定まらない。さらには、打突を繰り出す両腕にも次第に痺れが走るようになった。
「だが、これで最後だ!」
卓が、最後の力を振り絞り、害蟲に残ったわずかな花弁を完全に潰した。花弁を潰された怒りによるものなのか、害蟲の咆哮が辺り一面に響き渡る。
そして、今にも倒れそうな卓を睨みつけたーが。
「てめえの相手はこっちだ!」
そこへ翔が挑発してきた。卓から敵を引きはがさないとかなり危ない。花弁は潰したものの、既にまき散らした毒煙そのものは、まだ卓の足元に滞留したままだ。このまま、卓が倒れでもしたら、頭から毒煙の中に入り込むことになってしまうー。
「卓、今助けます!」
黒羽が、自身の周囲に舞う黒い羽根のうち、その一つを卓へと飛ばした。羽根は、卓の右腕に突き刺さった。
「・・・っ!」
「お、おい、黒羽、なんで卓を!」
翔が黒羽に問い詰める。相棒がいきなり羽根で刺されたのだ。驚くのも無理はないだろう。
「心配いりません」
黒羽は、いつも通り冷静な様子で翔に説明する。
「あれは、強い解毒作用を持つ羽根ー正確に言えば、羽根が刺さった相手の毒素を吸引し、無害化するものです」
「ってことは、つまりあれか・・・例えば毒蛇に咬まれたときに毒を吸い出すのと似たようなもんか?」
「・・・たとえはあまりよろしくはありませんが・・・そうですね。そうやって、毒素を卓の体から取り除くのが狙いです」
実際、さっきまで倒れ掛かっていた卓が、何とか持ち直して一旦安全な場所へと後退していた。
「解毒の羽根を用意しておいて正解でした」
黒羽も、卓が無事な様子を見てほっと胸をなでおろしたようだ。
「これで、残りは腕だけになりました。なるべく敵を毒煙が充満している場所から引き離してから、3人で一気に攻めましょう」
「おお!」
これで残るは腕3本・・・もう勝利は目前だー。
「・・・つぅ」
だが、卓自身にもダメージはある。紫色の毒煙に足を突っ込んでいるのだから、全くの無傷というわけにもいかない。
黒羽によれば、強い幻覚性の毒素らしいが、幻覚ばかりではなく、直接接触することで痛みを感じさせる作用もあるのかもしれない。
黒羽の能力補助と、自身の闘気で守りを固めて挑んでもこれだ。これらの支えがなかったらと思うとぞっとする。
「まだだ・・・まだ始まったばかりだ」
卓は自身を奮い立たせ、孤軍奮闘している相棒のためにも早急に花弁を潰そうと、激しい連撃を繰り出していた。花弁そのものは、害蟲本体に比べればはるかに脆く、卓の打突により、無残にも散らされていくー。
「あと・・・あと少しだ」
もう、花弁がほとんど害蟲からなくなってきたその時ー。
「・・・っ!」
突然、視界が揺れた。そして、目の前にいるはずの害蟲が、二重に見えてくる。
「・・・これが、幻覚か・・・」
狙いがうまく定まらない。さらには、打突を繰り出す両腕にも次第に痺れが走るようになった。
「だが、これで最後だ!」
卓が、最後の力を振り絞り、害蟲に残ったわずかな花弁を完全に潰した。花弁を潰された怒りによるものなのか、害蟲の咆哮が辺り一面に響き渡る。
そして、今にも倒れそうな卓を睨みつけたーが。
「てめえの相手はこっちだ!」
そこへ翔が挑発してきた。卓から敵を引きはがさないとかなり危ない。花弁は潰したものの、既にまき散らした毒煙そのものは、まだ卓の足元に滞留したままだ。このまま、卓が倒れでもしたら、頭から毒煙の中に入り込むことになってしまうー。
「卓、今助けます!」
黒羽が、自身の周囲に舞う黒い羽根のうち、その一つを卓へと飛ばした。羽根は、卓の右腕に突き刺さった。
「・・・っ!」
「お、おい、黒羽、なんで卓を!」
翔が黒羽に問い詰める。相棒がいきなり羽根で刺されたのだ。驚くのも無理はないだろう。
「心配いりません」
黒羽は、いつも通り冷静な様子で翔に説明する。
「あれは、強い解毒作用を持つ羽根ー正確に言えば、羽根が刺さった相手の毒素を吸引し、無害化するものです」
「ってことは、つまりあれか・・・例えば毒蛇に咬まれたときに毒を吸い出すのと似たようなもんか?」
「・・・たとえはあまりよろしくはありませんが・・・そうですね。そうやって、毒素を卓の体から取り除くのが狙いです」
実際、さっきまで倒れ掛かっていた卓が、何とか持ち直して一旦安全な場所へと後退していた。
「解毒の羽根を用意しておいて正解でした」
黒羽も、卓が無事な様子を見てほっと胸をなでおろしたようだ。
「これで、残りは腕だけになりました。なるべく敵を毒煙が充満している場所から引き離してから、3人で一気に攻めましょう」
「おお!」
これで残るは腕3本・・・もう勝利は目前だー。
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