172 / 464
カルミナとブラーナ(第7話)
しおりを挟む
黒羽の掌にある黒い羽根が魔力を帯びてさらに黒く輝きだすー。
チーム《ユグドラシル》の面々はもちろん、チーム《ラピュタ》の面々も様々な特殊能力を持っている。《ラピュタ》の一員でもある黒羽の能力の一つが、遠距離での害蟲や魔物などの魔力反応を探るーというものだった。より正確に言えば、「距離に囚われず、対象の魔力反応を探る」ことができる。
ただし、その間、黒羽の意識は対象を俯瞰できる位置にある。より近いもので例えれば、一種の幽体離脱に近いものだ。これにより、彼女は目的の場所付近で生まれた害蟲や魔物たちの動向を知ることができる。
黒羽の瞳は、現在閉じられている。意識が外に向かっている以上、本体の方はまるで眠りに就いたように動くことはない。ただ、かすかな呼吸音だけが彼女から聞こえるだけだ。
ふ・・・と、黒羽の瞳が静かに開かれるーが、やはり眠そうな半眼状態のままだ。この辺はいつもと変わらないらしい。
「ふう」
黒羽が軽く息をつく。彼女にとってはそれほど精神力を使う能力というわけでもないが、能力を使ったあとに一息つくのは、もはや一種の癖みたいになってしまっている。
「黒羽、どうだった?」
カルミナが黒羽に尋ねた。他の面々も興味津々といった感じで黒羽の答えを待つ。
「・・・今回の魔力乱流で生まれた害蟲は、そんなに多くはないようですね・・・私たちでも十分対処できる数です・・・が」
黒羽は、何かに気が付いたのか、そこで少し逡巡を見せた。
「どうしたの?黒羽。何かあった?」
訝し気にブラーナが尋ねる。いつも淡々としている黒羽だけに、こうして戸惑うのは珍しいことでもあった。
「・・・ただ、1匹だけものすごく強い魔力を放つ個体がいます。さすがに亜人種型ほどではありませんが、それでも注意が必要です」
黒羽の言葉に、一同緊張が走る。
天空世界においても、亜人種型が暗躍している事例はある。亜人種型はA級クラスの害蟲とされ、正面からまともに戦っても勝てる見込みはかなり低い。
このメンバーの中で、亜人種型とまともにやり合って勝てる可能性があるのは、武人くらいなものだろう。翔や卓も戦いは得意とは言え、さすがに亜人種型と戦って生き延びられる自信はなかった。
幸い、今回の害蟲には亜人種型が関わっていないようなので、何とかなりそうではあるが・・・。
「亜人種型ではないなら、B級クラスかな。それなら俺と卓が二人でかかれば何とかなるかもな」
「ああ」
《ラピュタ》の面々は、武人と黒羽を除いて、2人1組を前提として戦う。カルミナはブラーナと、翔は卓とタッグを組み、害蟲や魔物と戦うのだ。
「強い個体はアンタたち任せになりそうね・・・」
カルミナの言う通り、B級クラスのやつに関しては男どもに任せた方がよさそうだー。
チーム《ユグドラシル》の面々はもちろん、チーム《ラピュタ》の面々も様々な特殊能力を持っている。《ラピュタ》の一員でもある黒羽の能力の一つが、遠距離での害蟲や魔物などの魔力反応を探るーというものだった。より正確に言えば、「距離に囚われず、対象の魔力反応を探る」ことができる。
ただし、その間、黒羽の意識は対象を俯瞰できる位置にある。より近いもので例えれば、一種の幽体離脱に近いものだ。これにより、彼女は目的の場所付近で生まれた害蟲や魔物たちの動向を知ることができる。
黒羽の瞳は、現在閉じられている。意識が外に向かっている以上、本体の方はまるで眠りに就いたように動くことはない。ただ、かすかな呼吸音だけが彼女から聞こえるだけだ。
ふ・・・と、黒羽の瞳が静かに開かれるーが、やはり眠そうな半眼状態のままだ。この辺はいつもと変わらないらしい。
「ふう」
黒羽が軽く息をつく。彼女にとってはそれほど精神力を使う能力というわけでもないが、能力を使ったあとに一息つくのは、もはや一種の癖みたいになってしまっている。
「黒羽、どうだった?」
カルミナが黒羽に尋ねた。他の面々も興味津々といった感じで黒羽の答えを待つ。
「・・・今回の魔力乱流で生まれた害蟲は、そんなに多くはないようですね・・・私たちでも十分対処できる数です・・・が」
黒羽は、何かに気が付いたのか、そこで少し逡巡を見せた。
「どうしたの?黒羽。何かあった?」
訝し気にブラーナが尋ねる。いつも淡々としている黒羽だけに、こうして戸惑うのは珍しいことでもあった。
「・・・ただ、1匹だけものすごく強い魔力を放つ個体がいます。さすがに亜人種型ほどではありませんが、それでも注意が必要です」
黒羽の言葉に、一同緊張が走る。
天空世界においても、亜人種型が暗躍している事例はある。亜人種型はA級クラスの害蟲とされ、正面からまともに戦っても勝てる見込みはかなり低い。
このメンバーの中で、亜人種型とまともにやり合って勝てる可能性があるのは、武人くらいなものだろう。翔や卓も戦いは得意とは言え、さすがに亜人種型と戦って生き延びられる自信はなかった。
幸い、今回の害蟲には亜人種型が関わっていないようなので、何とかなりそうではあるが・・・。
「亜人種型ではないなら、B級クラスかな。それなら俺と卓が二人でかかれば何とかなるかもな」
「ああ」
《ラピュタ》の面々は、武人と黒羽を除いて、2人1組を前提として戦う。カルミナはブラーナと、翔は卓とタッグを組み、害蟲や魔物と戦うのだ。
「強い個体はアンタたち任せになりそうね・・・」
カルミナの言う通り、B級クラスのやつに関しては男どもに任せた方がよさそうだー。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。
せいめ
恋愛
メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。
頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。
ご都合主義です。誤字脱字お許しください。
【完結】7年待った婚約者に「年増とは結婚できない」と婚約破棄されましたが、結果的に若いツバメと縁が結ばれたので平気です
岡崎 剛柔
恋愛
「伯爵令嬢マリアンヌ・ランドルフ。今日この場にて、この僕――グルドン・シルフィードは君との婚約を破棄する。理由は君が25歳の年増になったからだ」
私は7年間も諸外国の旅行に行っていたグルドンにそう言われて婚約破棄された。
しかも貴族たちを大勢集めたパーティーの中で。
しかも私を年増呼ばわり。
はあ?
あなたが勝手に旅行に出て帰って来なかったから、私はこの年までずっと結婚できずにいたんですけど!
などと私の怒りが爆発しようだったとき、グルドンは新たな人間と婚約すると言い出した。
その新たな婚約者は何とタキシードを着た、6、7歳ぐらいの貴族子息で……。
婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。
「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。
桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。
「不細工なお前とは婚約破棄したい」
この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。
※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。
※1回の投稿文字数は少な目です。
※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。
表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。
❇❇❇❇❇❇❇❇❇
2024年10月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。
1ページの文字数は少な目です。
約4500文字程度の番外編です。
バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`)
ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑)
※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。
【短編】婚約破棄したので、もう毎日卵かけご飯は食べられませんよ?
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
ふふん♪ これでやっとイチゴのタルトと、新作の二種類の葡萄のトライフル、濃厚プリンが食べられるわ♪)
「もうお前の顔を見るのもウンザリだ、今日限りで貴様とは婚約破棄する!」
(え?)
とあるパーティー会場での起こった婚約破棄。政略結婚だったのでアニータはサクッと婚約破棄を受け入れようとするが──。
「不吉な黒い髪に、眼鏡と田舎くさい貴様は、視界に入るだけで不快だったのだ。貴様が『王国に繁栄を齎すから』と父上からの命令がなければ、婚約者になどするものか。俺は学院でサンドラ・ロヴェット嬢と出会って本物の恋が何か知った! 」
(この艶やかかつサラサラな黒髪、そしてこの眼鏡のフレームや形、軽さなど改良に改良を重ねた私の大事な眼鏡になんて不遜な態度! 私自身はどこにでもいるような平凡な顔だけれど、この髪と眼鏡を馬鹿にする奴は許さん!)
婚約破棄後に爆弾投下。
「我が辺境伯──いえトリス商会から提供しているのは、ランドルフ様の大好物である、卵かけご飯の材料となっているコカトリスの鶏生卵と米、醤油ですわ」
「は?」
これは鶏のいない異世界転生した少女が、あの手この手を使って再現した「卵かけご飯」のお話?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる