147 / 464
チーム《ユグドラシル》と教会騎士たち(第11話)
しおりを挟む
晶が再び蟲憑きに斬りかかるー。
と、その時だった。
「なるほど・・・こちらの魔力を無効化できる技があるのか・・・」
白いコートの男ー正確には、その男の口を借りて、憑りついていた蟲憑きが語り始めた。
「晶!こいつは・・・もしかすると」
モリガンがみなまで話すまでもなくー。
これで、確実だ。
相手は、間違いなく知性を持った蟲憑きであるということがー。
晶は、相手に斬りかかる寸前で踏み留まった。相手が喋り出したのを見て、迂闊に手を出してはいけない予感がしたからだ。
いわゆるとは亜人種型異なり、蟲憑き自体はそこまでの能力はない。
ただ、憑りついている宿主の能力次第では、予想もつかない化け物となる可能性もある。それこそ、亜人種型に匹敵するくらいの実力を秘めることもあるのだ。
「へえ、アンタ、やはり知性持ちか」
なるべく平静を装った上で、晶が蟲憑きに確認する。今は、少しでもこいつの能力や性質の情報が欲しい。いくらかでも「会話」をさせて、相手の能力の一端でも見極めなければー。
「その通りだ・・・この男の体が宿主に適していたのでな。この街に来た時にその体を頂いてやった」
幾分、自慢げな口調で蟲憑きが答えた。体を頂くーつまりは、この人物の人格は喰われ、その能力も取り込まれてしまったということだ。そして、そのことを大したことでもないかのように語る蟲憑きーこいつにとっては、人間など、ただ自分が安全に憑依できればそれでいいだけの、体のいい器に過ぎなかった。
尤も、蟲憑きや害蟲相手に人間社会における倫理や道徳など振りかざしても全く意味はない。最初から、人に害をなすために活動しているような連中である。己の欲のままに喰らいつくし、社会を混乱させるのが、こいつらの目的であった。
「ついでに、我の仲間も呼び寄せるつもりであったが、その前に、この林の中にあの魔物がいたので、仲間が来る前に少し利用してやったのだ」
魔物ー今、ゼクスとイリアが対峙している個体のことである。
「弱い魔物ではあるが、我ーこの男の能力を活用すれば、例えどれだけの熟練の戦士であったとしても、手出しは一切できなくなる・・・まさに今のあの二人がそうではないか」
得意げに、蟲憑きが語り掛けてくる。確かに、ゼクスとイリアは、今はまだ魔物に手出しできないだろう。少なくとも、こいつが生きている限りは、無理だ。
「なら、アンタをさっさと倒さないといけないな・・・オレたち害蟲駆除チームがいる限り、これ以上好き勝手なことはさせねえぞ」
晶が魔笛剣の切っ先を、男ー蟲憑きに突きつける。それと同時に、モリガンは新たな術式を展開し始めた。早苗も、両手の鉄扇を再び構え直す。
その様子を見て、蟲憑きが不敵な笑みを浮かべながら、
「いいだろう。ここで邪魔者を一掃して、その上で同志たちを呼ぶことにしよう」
蟲憑きも、再び魔力を集中し始めたー。
と、その時だった。
「なるほど・・・こちらの魔力を無効化できる技があるのか・・・」
白いコートの男ー正確には、その男の口を借りて、憑りついていた蟲憑きが語り始めた。
「晶!こいつは・・・もしかすると」
モリガンがみなまで話すまでもなくー。
これで、確実だ。
相手は、間違いなく知性を持った蟲憑きであるということがー。
晶は、相手に斬りかかる寸前で踏み留まった。相手が喋り出したのを見て、迂闊に手を出してはいけない予感がしたからだ。
いわゆるとは亜人種型異なり、蟲憑き自体はそこまでの能力はない。
ただ、憑りついている宿主の能力次第では、予想もつかない化け物となる可能性もある。それこそ、亜人種型に匹敵するくらいの実力を秘めることもあるのだ。
「へえ、アンタ、やはり知性持ちか」
なるべく平静を装った上で、晶が蟲憑きに確認する。今は、少しでもこいつの能力や性質の情報が欲しい。いくらかでも「会話」をさせて、相手の能力の一端でも見極めなければー。
「その通りだ・・・この男の体が宿主に適していたのでな。この街に来た時にその体を頂いてやった」
幾分、自慢げな口調で蟲憑きが答えた。体を頂くーつまりは、この人物の人格は喰われ、その能力も取り込まれてしまったということだ。そして、そのことを大したことでもないかのように語る蟲憑きーこいつにとっては、人間など、ただ自分が安全に憑依できればそれでいいだけの、体のいい器に過ぎなかった。
尤も、蟲憑きや害蟲相手に人間社会における倫理や道徳など振りかざしても全く意味はない。最初から、人に害をなすために活動しているような連中である。己の欲のままに喰らいつくし、社会を混乱させるのが、こいつらの目的であった。
「ついでに、我の仲間も呼び寄せるつもりであったが、その前に、この林の中にあの魔物がいたので、仲間が来る前に少し利用してやったのだ」
魔物ー今、ゼクスとイリアが対峙している個体のことである。
「弱い魔物ではあるが、我ーこの男の能力を活用すれば、例えどれだけの熟練の戦士であったとしても、手出しは一切できなくなる・・・まさに今のあの二人がそうではないか」
得意げに、蟲憑きが語り掛けてくる。確かに、ゼクスとイリアは、今はまだ魔物に手出しできないだろう。少なくとも、こいつが生きている限りは、無理だ。
「なら、アンタをさっさと倒さないといけないな・・・オレたち害蟲駆除チームがいる限り、これ以上好き勝手なことはさせねえぞ」
晶が魔笛剣の切っ先を、男ー蟲憑きに突きつける。それと同時に、モリガンは新たな術式を展開し始めた。早苗も、両手の鉄扇を再び構え直す。
その様子を見て、蟲憑きが不敵な笑みを浮かべながら、
「いいだろう。ここで邪魔者を一掃して、その上で同志たちを呼ぶことにしよう」
蟲憑きも、再び魔力を集中し始めたー。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
おっさんの神器はハズレではない
兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
スキル【合成】が楽しすぎて最初の村から出られない
紅柄ねこ(Bengara Neko)
ファンタジー
15歳ですべての者に授けられる【スキル】、それはこの世界で生活する為に必要なものであった。
世界は魔物が多く闊歩しており、それによって多くの命が奪われていたのだ。
ある者は強力な剣技を。またある者は有用な生産スキルを得て、生活のためにそれらを使いこなしていたのだった。
エメル村で生まれた少年『セン』もまた、15歳になり、スキルを授かった。
冒険者を夢見つつも、まだ村を出るには早いかと、センは村の周囲で採取依頼をこなしていた。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる