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チーム《ユグドラシル》と教会騎士たち(第5話)
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晶たちとゼクスたちの合同作戦ー。
出発前に、ベンジャミン夫妻に事情を話し、せっかく夕飯を用意してもらったのに申し訳ないと謝罪するが、逆にベンジャミン達からお仕事頑張ってと励まされた。食事は、みんなが帰ってくるまでとっておいてくれるらしい。
「ベンジャミン達には悪いことをしたな・・・」
「ごめん、夕飯時に押しかけちゃって。でも緊急事態だから」
「いや、お前らを別に責めてるわけじゃないからな。早く終わらせて帰るとするか」
さすがに、人々に害をなす可能性のある蟲憑きを放置しておくわけにはいかない。それは全員わかっていることだった。
再び夜の公園まで訪れると、そこには相変わらずお化け型ドローンの「オドローン」が「ひゅ~どろどろ」という効果音付きで飛び回っていた。大した働きぶりと言いたいところだが、なぜ効果音まで必要なのかは地下世界の住人達にしかわからないだろう。
「・・・地下のやつらって、本当に何考えてるかわからねえ時があるな・・・」
およそシスターらしくないシスター殿にまで言われては救いもないだろう。
「目標は、この公園を抜けた先の林・・・だったよな?」
晶が敵の位置を再度確認する。
「そうだ。FOが追跡している」
「わしの使い魔も、魔物らしきやつを確認したぞ」
モリガンも、先ほど飛ばした使い魔からの通信で状況を確認していた。
「あれが、イリアたちが可視化したという魔物じゃな。魔力の波動から察するに、こいつ自体はあまり強くはなさそうじゃが・・・」
「だが、そいつに力を与えている蟲憑きがいるからな・・・おかげであたしらの攻撃が無効化されてしまう上に、分裂までしやがる」
前の戦いを思い出したのか、イリアが忌々しそうに舌打ちをする。もはや、シスターというのは恰好だけではないかと思えるほどのお行儀の悪さであった。
「まあ、蟲憑きはオレが何とかする。多分、この魔物を視認できる位置で操っているんだろう」
「そうだろうね。そっちは任せる」
夜の公園を抜けて、目的の林の入口へとたどり着く。地下世界の人工照明の光は、既に人工太陽から人口月に切り替わっており、その月の光を浴びて、林がぼうっと淡く輝いている。林の中に充満している魔力が、月の灯りと相まって、幻想的な光景を生み出している。この中に魔物や蟲憑きがいなければ、その光景に見とれてしまいそうである。
「着いたな・・・まだ目標はこの中にいるようだ」
ゼクスが、FOからの映像を空中に投影した。モリガンも、同様に使い魔からの情報を投影する。
「一気にけりをつけるか」
イリアが、今度こそはとばかりに意気込む。すでにボウガンを用意し、臨戦態勢は整っているようだ。
「待て、イリア。相手はこちらの顔を見ている。それでもまだここで待ち構えているとなると・・・罠の可能性もあるんじゃないか」
「だったらここで待てってのか?早くしないと逃げられちまうぞ」
「まあ、蟲憑きの能力にもよるが・・・」
晶が、イリアを抑えて蟲月について説明し始めた。
「蟲憑きは、確かに人間の脳に寄生するんだが、元の蟲憑き自体の能力が低ければ、知性までは発揮できない。元々の能力が高い蟲月であれば、憑りついた相手の脳を活用して知性を発揮できる。つまりは・・・」
晶がにっと意地の悪い笑みを浮かべて言った。
「相手がどれだけ「猫を被っているか」によって危険度が違ってくるってわけだな」
蟲憑きの能力がどれだけのものかーそこがポイントとなるー。
出発前に、ベンジャミン夫妻に事情を話し、せっかく夕飯を用意してもらったのに申し訳ないと謝罪するが、逆にベンジャミン達からお仕事頑張ってと励まされた。食事は、みんなが帰ってくるまでとっておいてくれるらしい。
「ベンジャミン達には悪いことをしたな・・・」
「ごめん、夕飯時に押しかけちゃって。でも緊急事態だから」
「いや、お前らを別に責めてるわけじゃないからな。早く終わらせて帰るとするか」
さすがに、人々に害をなす可能性のある蟲憑きを放置しておくわけにはいかない。それは全員わかっていることだった。
再び夜の公園まで訪れると、そこには相変わらずお化け型ドローンの「オドローン」が「ひゅ~どろどろ」という効果音付きで飛び回っていた。大した働きぶりと言いたいところだが、なぜ効果音まで必要なのかは地下世界の住人達にしかわからないだろう。
「・・・地下のやつらって、本当に何考えてるかわからねえ時があるな・・・」
およそシスターらしくないシスター殿にまで言われては救いもないだろう。
「目標は、この公園を抜けた先の林・・・だったよな?」
晶が敵の位置を再度確認する。
「そうだ。FOが追跡している」
「わしの使い魔も、魔物らしきやつを確認したぞ」
モリガンも、先ほど飛ばした使い魔からの通信で状況を確認していた。
「あれが、イリアたちが可視化したという魔物じゃな。魔力の波動から察するに、こいつ自体はあまり強くはなさそうじゃが・・・」
「だが、そいつに力を与えている蟲憑きがいるからな・・・おかげであたしらの攻撃が無効化されてしまう上に、分裂までしやがる」
前の戦いを思い出したのか、イリアが忌々しそうに舌打ちをする。もはや、シスターというのは恰好だけではないかと思えるほどのお行儀の悪さであった。
「まあ、蟲憑きはオレが何とかする。多分、この魔物を視認できる位置で操っているんだろう」
「そうだろうね。そっちは任せる」
夜の公園を抜けて、目的の林の入口へとたどり着く。地下世界の人工照明の光は、既に人工太陽から人口月に切り替わっており、その月の光を浴びて、林がぼうっと淡く輝いている。林の中に充満している魔力が、月の灯りと相まって、幻想的な光景を生み出している。この中に魔物や蟲憑きがいなければ、その光景に見とれてしまいそうである。
「着いたな・・・まだ目標はこの中にいるようだ」
ゼクスが、FOからの映像を空中に投影した。モリガンも、同様に使い魔からの情報を投影する。
「一気にけりをつけるか」
イリアが、今度こそはとばかりに意気込む。すでにボウガンを用意し、臨戦態勢は整っているようだ。
「待て、イリア。相手はこちらの顔を見ている。それでもまだここで待ち構えているとなると・・・罠の可能性もあるんじゃないか」
「だったらここで待てってのか?早くしないと逃げられちまうぞ」
「まあ、蟲憑きの能力にもよるが・・・」
晶が、イリアを抑えて蟲月について説明し始めた。
「蟲憑きは、確かに人間の脳に寄生するんだが、元の蟲憑き自体の能力が低ければ、知性までは発揮できない。元々の能力が高い蟲月であれば、憑りついた相手の脳を活用して知性を発揮できる。つまりは・・・」
晶がにっと意地の悪い笑みを浮かべて言った。
「相手がどれだけ「猫を被っているか」によって危険度が違ってくるってわけだな」
蟲憑きの能力がどれだけのものかーそこがポイントとなるー。
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