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ゼクスとイリア(第7話)
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「彼らって・・・まさか」
「ちょうど、この街に来てるだろ。あっちの方は、僕たちに気が付いていないようだけどね」
ゼクスがかたる「彼ら」には彼女にも思い当たるふしがあった。だがー。
「あいつらは単なる害蟲駆除業チームだろうが。魔物や魔族相手じゃ話になんねえぞ」
害蟲駆除チームーつまりは《ユグドラシル》のことだが、確かに彼女の言う通り、彼らは害蟲退治が専門なわけであって、魔物退治はその範疇にはないはずだ。
そんな彼らに、魔物の相手が務まるわけが・・・。
「いや、魔力の波動の痕跡からわかったけど、多分あの魔物を支配しているのは「蟲憑き」だよ」
「な!?」
イリアが驚愕する。「蟲憑き」というのは、何らかの形で害蟲が人間を乗っ取り、支配下に置いている者を示す。「蟲憑き」の強さは、もともとの蟲の能力にもよるが、亜人種型ほどではないにしろ、人間の脳に寄生しているだけあって、ある程度の知性は備えている。
「よりによって、寄生型の蟲かよ・・・それなら確かに、あたしらの範疇じゃねえな・・・」
もっとも、イリアたちも害蟲と戦えないというわけではない。ただ、やはり自分たちの専門外の相手であるだけに、魔物相手なら特攻の「聖十字魔法」も通用しないことがあるため、なかなか手を出しにくい相手であるのは確かだった。
それに・・・。
「まあ、教会のテリトリーからも外れているしな・・・あいつらの「領分」にあまり手を出すのもあれか・・・」
「そういうことだね・・・でも、彼らとは面識もあるし、せっかくだから、ここは一時的に手を結ぶってのもありかな・・・」
「はあ!?」
イリアが素っ頓狂な声を上げる。
「おいおい、あいつらと組むってのか・・・あたしゃ面倒くさいことはいやだぜ」
「でも、魔物はともかく、害蟲に関しては僕たちだと不利だ・・・そこで」
ゼクスがイリアを諭すように説明する。
「彼らに「蟲憑き」の相手をしてもらっている間に、僕らは魔物を退治する。これなら、お互いの領分を侵すということもないだろ」
「そりゃそうだが・・・」
「貸し借りってのもないだろう。僕らも彼らも、自分たちが戦うべき相手を始末する。ただ、それだけだよ」
「・・・」
なんか、ゼクスにうまいこと言い包められた気もするが、確かに彼の言う通り、これなら「役割分担」はできそうである。
「ああ、わかったよ。それが確かに一番よさそうだ。だがよ、あいつらは今どこにいるんだ?」
「ああ、それなら問題ないよ、イリア。彼らの場所は把握している・・・僕の小型機械が・・・ね」
「お前、またチビマシンを使ったのかよ・・・」
「公園で彼らを見かけたときに、こんなこともあろうかと、後をつけさせておいたんだ。まあ、実際こういうことになっちゃったしね」
一応の保険のために、《ユグドラシル》のメンバーを尾行させておいたのだ。これで位置は把握できる。
「それじゃあ、さっそく向かってみようか」
「わかったよ」
こうして、二人はベンジャミンの家を目指すことにしたのだー。
「ちょうど、この街に来てるだろ。あっちの方は、僕たちに気が付いていないようだけどね」
ゼクスがかたる「彼ら」には彼女にも思い当たるふしがあった。だがー。
「あいつらは単なる害蟲駆除業チームだろうが。魔物や魔族相手じゃ話になんねえぞ」
害蟲駆除チームーつまりは《ユグドラシル》のことだが、確かに彼女の言う通り、彼らは害蟲退治が専門なわけであって、魔物退治はその範疇にはないはずだ。
そんな彼らに、魔物の相手が務まるわけが・・・。
「いや、魔力の波動の痕跡からわかったけど、多分あの魔物を支配しているのは「蟲憑き」だよ」
「な!?」
イリアが驚愕する。「蟲憑き」というのは、何らかの形で害蟲が人間を乗っ取り、支配下に置いている者を示す。「蟲憑き」の強さは、もともとの蟲の能力にもよるが、亜人種型ほどではないにしろ、人間の脳に寄生しているだけあって、ある程度の知性は備えている。
「よりによって、寄生型の蟲かよ・・・それなら確かに、あたしらの範疇じゃねえな・・・」
もっとも、イリアたちも害蟲と戦えないというわけではない。ただ、やはり自分たちの専門外の相手であるだけに、魔物相手なら特攻の「聖十字魔法」も通用しないことがあるため、なかなか手を出しにくい相手であるのは確かだった。
それに・・・。
「まあ、教会のテリトリーからも外れているしな・・・あいつらの「領分」にあまり手を出すのもあれか・・・」
「そういうことだね・・・でも、彼らとは面識もあるし、せっかくだから、ここは一時的に手を結ぶってのもありかな・・・」
「はあ!?」
イリアが素っ頓狂な声を上げる。
「おいおい、あいつらと組むってのか・・・あたしゃ面倒くさいことはいやだぜ」
「でも、魔物はともかく、害蟲に関しては僕たちだと不利だ・・・そこで」
ゼクスがイリアを諭すように説明する。
「彼らに「蟲憑き」の相手をしてもらっている間に、僕らは魔物を退治する。これなら、お互いの領分を侵すということもないだろ」
「そりゃそうだが・・・」
「貸し借りってのもないだろう。僕らも彼らも、自分たちが戦うべき相手を始末する。ただ、それだけだよ」
「・・・」
なんか、ゼクスにうまいこと言い包められた気もするが、確かに彼の言う通り、これなら「役割分担」はできそうである。
「ああ、わかったよ。それが確かに一番よさそうだ。だがよ、あいつらは今どこにいるんだ?」
「ああ、それなら問題ないよ、イリア。彼らの場所は把握している・・・僕の小型機械が・・・ね」
「お前、またチビマシンを使ったのかよ・・・」
「公園で彼らを見かけたときに、こんなこともあろうかと、後をつけさせておいたんだ。まあ、実際こういうことになっちゃったしね」
一応の保険のために、《ユグドラシル》のメンバーを尾行させておいたのだ。これで位置は把握できる。
「それじゃあ、さっそく向かってみようか」
「わかったよ」
こうして、二人はベンジャミンの家を目指すことにしたのだー。
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