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ゼクスとイリア(第2話)

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 ゼクスは、自分のドローンであるFO(エフオー)を飛ばした。ドローンといっても、その容姿は生物に近く、よく似ているものを敢えて示すとすれば、ムササビといった感じだった(ただし、ムササビではないので、別に滑空しかできないわけではなく、普通に飛行することができる)。このドローンの名前に特に深い意味などない。何となく語感が良かったのでそう名付けただけだった。

「少なくとも、地下世界のお化け型ドローンのオドローンよりはいいと思うよ、謎の自称新米ラノベ作家さん」

 ・・・それは確かに言える(汗)。

 イリアは、飛び去って行くFOを見ながら、

「間違ってFOを撃つと、白い服を着た民間人と同じように、お~の~とか言いそうだな」

「駄目だよ、イリア。それを言っちゃあ!」

「ついでにとある症候群の特効薬にもなりそうな・・・」

「駄目だって!」

 ・・・なぜか、ゼクスが激しく反応するが、イリアにはその理由がよくわからなかった・・・。

「・・・神のお告げが聞こえたんだ、あたしにだってなんだかよくわからんよ」

「どんな神様だよ・・・ったく」

 ゼクスが多少突っ込むが、今は他にやるべきこともあるので、とりあえず、それ以上は抑えることにする。

 ・・・と思ったが・・・。

「この調子でいくと、そのうちこの街で謎の階段を見つけて、せっかくだからと開けたくなる〇の扉が・・・」

「わー、もうやめい!」

 これ以上、彼女の「神のお告げ」が続くと、確実に「危ない何か」に引っかかりそうなので、さすがに大声で遮ることにした。

「あたしじゃねえし!神様に文句言ってくれよ、ゼクス!!」

「・・・って、君、シスターだよね。神様に文句言えって・・・そんなこと言っていいの?」

「はっはっは!あたしは普段から敬虔なシスターだからな・・・くたばるまで半永久的に神様に尽くしている分、多少のお目こぼしはあって当然だろうが!」

 ・・・やたらと自信満々に、しかも右手の親指を立てて「グー」のポーズまで決めている左目眼帯シスターの姿がそこにはあった。

 それにしても、ずいぶんと自分に都合よく解釈された神様である・・・。

 まあ、前文明時代までさかのぼれば、確かに教会が権威を守るために都合よく聖書を解釈したり捏造したりということがあったらしいが、しかし、イリアのは根本的にそういったものとは次元が異なっている気がする・・・。

 ゼクス自身は無宗教ではあるが・・・これは自分の神様に対するすごい冒涜ではないかと一瞬思ってしまった。だが、このシスターはいつもこんな調子なので(いうまでもなく、これを見て彼女のことを「敬虔なシスター」など思う者はいないだろう)、これ以上は彼女のペースに飲まれないように、敢えて適当に受け流すことにした・・・。

「・・・まあ君たちの教義についてはとりあえず今はおいておくとして・・・FOからの映像を今、空間に投影してみよう」

 ゼクスは、FOから送られてきた映像を、目の前の空中に投影して見せた。

「うへえ、真っ暗だな~って、夜だから当たり前か」

「まあ、地下に夜っていうのも違和感はあるけどね」

 FOが、上空から林ー森というほどではないーを撮影しながら飛び回っているが、目的物らしいものは今のところ発見には至っていない。ただ・・・。

「姿そのものは確認できずとも、魔力の波動は掴めているからね。すぐに見つかるよ」

「そうなったら、あたしの出番だな」

 獲物を待ちきれないといった感じで、期待に口元を歪めながら、眼帯シスター殿は映像を凝視した。右目は爛々としており、すでに「やる気」満々である。

 いや、どちらかというと「殺る気」か・・・。

「・・・なんでこんな奴がシスターやってるんだ・・・どんな教会だよ」

 心の中で愚痴をこぼすゼクスであったー。
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