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土竜の街に蠢く何か・・・
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晶たちが、ベンジャミンの家で歓迎を受けていた頃ー。
あまり住宅もなく、人通りも少ない場所。民家がまばらに点在し、夜になればまず人が歩くことがほとんどない区画においてー。
「この街に反応があったんだろ、害蟲なのかあるいは別の存在なのかはわからないけど、魔力反応が」
左目が眼帯に覆われている修道服姿の女性ーといっても、まだ未成年のようだーが、隣にいる男性に話しかけていた。
「まあ、そうらしいね。もしかしたら害蟲かもしれないし、それ以外の何者かの魔力反応が」
男性の方は、パーカー姿だった。ただ、年齢的には修道服姿の少女とそんなに変わらないようではあるが。
少年の方は、何やら端末をいじり続けている。エンジニア関係者なのだろうかーまだ若干幼さの残る顔立ちではあるが、隣のシスターよりはどこか落ち着いた雰囲気を受ける。
「害蟲だった場合は、どうやらちょうど、専門の連中が来ているようだし、そいつらに任せておけばいいよ」
先ほど、この街に《ユグドラシル》のメンバーが入り込んだのを、二人は確認していた。以前、《ユグドラシル》のメンバーに接触した時に、そのメンバーの魔力反応もついでに確認しておいた。したがって、個人から発する魔力波動を探っていけば、その対象が誰なのかを特定できるのだ。
分析魔法の使い手でもある彼にとっては、朝飯前の芸当だった。
「なんだ、あの《ユグドラシル》とかいう連中もここに来たのか」
「土竜さんに案内されて・・・ね」
遠くからだが、夕暮れの公園を案内されている彼らの姿も確認済みである。もっとも、相方のシスターの方は、周囲の様子には全く無頓着だったようで、彼らには気が付かなかったらしい。
「君も、もう少し周囲に気を配った方がいいんじゃないか。教会の「使い手」ならなおのことだろ」
これは、口が酸っぱくなるまで彼女に言い続けていることだったが、今のところ、改善の見込みはなさそうである。
「うるせーな、あたしゃそういうの向いてねえんだよ」
不貞腐れた感じでシスターが言い返す。それも、いつものことであった。
「とにかく、今はその魔力反応の方が優先だ。あんな蟲退治しか能のねえ連中なんてほっとけ」
他チームに対する対抗意識が強いのも、このシスター殿の性分だった。
「・・・まあいいや。確かに、そっちの方が重要だからな・・・反応はこっちの方からだ」
少年が民家よりもさらに奥にある林の方に目を向ける。森ーというほど生い茂っているわけでもないが、何かが身を隠すにはちょうどいい場所だった。
「はっ!いいねえ、さっさとやっちまうか」
「・・・だから、相手がわからない以上は手を出しちゃダメだって」
「・・・つまんねえの」
目標がきちんと確認できない以上、うかつには手を出せない。まずは遠くから様子見ーとなるが、それにしても・・・。
「いつもながら思うが、君ってこういう仕事向かないよねえ」
さらに言えば、これだけガサツで口が悪いのにシスターというのも悪い冗談のような話ではあるが、それを喋ると確実にキレられるので、そこは抑えておくことにする。
「ちまちまやるのが面倒だってんだよ・・・ったく」
「はいはい、まあ近くまで行ってみよう。まずは相手がどんなのか確認しないと」
「あいよ」
このシスター殿の相手をするのも仕事の内だーと、自分に言い聞かせつつ、少年は端末に目を向けたー。
あまり住宅もなく、人通りも少ない場所。民家がまばらに点在し、夜になればまず人が歩くことがほとんどない区画においてー。
「この街に反応があったんだろ、害蟲なのかあるいは別の存在なのかはわからないけど、魔力反応が」
左目が眼帯に覆われている修道服姿の女性ーといっても、まだ未成年のようだーが、隣にいる男性に話しかけていた。
「まあ、そうらしいね。もしかしたら害蟲かもしれないし、それ以外の何者かの魔力反応が」
男性の方は、パーカー姿だった。ただ、年齢的には修道服姿の少女とそんなに変わらないようではあるが。
少年の方は、何やら端末をいじり続けている。エンジニア関係者なのだろうかーまだ若干幼さの残る顔立ちではあるが、隣のシスターよりはどこか落ち着いた雰囲気を受ける。
「害蟲だった場合は、どうやらちょうど、専門の連中が来ているようだし、そいつらに任せておけばいいよ」
先ほど、この街に《ユグドラシル》のメンバーが入り込んだのを、二人は確認していた。以前、《ユグドラシル》のメンバーに接触した時に、そのメンバーの魔力反応もついでに確認しておいた。したがって、個人から発する魔力波動を探っていけば、その対象が誰なのかを特定できるのだ。
分析魔法の使い手でもある彼にとっては、朝飯前の芸当だった。
「なんだ、あの《ユグドラシル》とかいう連中もここに来たのか」
「土竜さんに案内されて・・・ね」
遠くからだが、夕暮れの公園を案内されている彼らの姿も確認済みである。もっとも、相方のシスターの方は、周囲の様子には全く無頓着だったようで、彼らには気が付かなかったらしい。
「君も、もう少し周囲に気を配った方がいいんじゃないか。教会の「使い手」ならなおのことだろ」
これは、口が酸っぱくなるまで彼女に言い続けていることだったが、今のところ、改善の見込みはなさそうである。
「うるせーな、あたしゃそういうの向いてねえんだよ」
不貞腐れた感じでシスターが言い返す。それも、いつものことであった。
「とにかく、今はその魔力反応の方が優先だ。あんな蟲退治しか能のねえ連中なんてほっとけ」
他チームに対する対抗意識が強いのも、このシスター殿の性分だった。
「・・・まあいいや。確かに、そっちの方が重要だからな・・・反応はこっちの方からだ」
少年が民家よりもさらに奥にある林の方に目を向ける。森ーというほど生い茂っているわけでもないが、何かが身を隠すにはちょうどいい場所だった。
「はっ!いいねえ、さっさとやっちまうか」
「・・・だから、相手がわからない以上は手を出しちゃダメだって」
「・・・つまんねえの」
目標がきちんと確認できない以上、うかつには手を出せない。まずは遠くから様子見ーとなるが、それにしても・・・。
「いつもながら思うが、君ってこういう仕事向かないよねえ」
さらに言えば、これだけガサツで口が悪いのにシスターというのも悪い冗談のような話ではあるが、それを喋ると確実にキレられるので、そこは抑えておくことにする。
「ちまちまやるのが面倒だってんだよ・・・ったく」
「はいはい、まあ近くまで行ってみよう。まずは相手がどんなのか確認しないと」
「あいよ」
このシスター殿の相手をするのも仕事の内だーと、自分に言い聞かせつつ、少年は端末に目を向けたー。
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