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土竜の街は・・・?(第6話)

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 オドローンとの対面も終え、夕暮れ(といっても、ここは地下世界なので、あくまでも地上の時間設定に併せて天井の照明ー人工太陽を操作しているだけなのだが)の街の中を歩く晶たち一行。

「魔力供給のための配管はたくさんあるよな、ここ」

「ああ、それは」

 ベンジャミンが、この街の魔力供給について解説してくれるようだ。

「おいらたち地下世界の住民は、実はあまり魔法が得意ではないんだよ。だから、地中から湧き出る魔力を、配管を通じて各家庭や大型施設などに供給しているんだ」

「なるほどな」

 まあ、かくいう大樹の人々も全員が魔力を備えているというわけではない。やはり適性や素質の問題もあるので、どちらかといえば、本格的に魔法を使いこなせているのは少数派だ。ただ、この街程魔力供給の手段は困って稲野も事実である。

 大気中のマナと呼ばれる魔力の源は、大樹自身によって吸収され、そして大樹に住むすべての存在のためにおのずと供給される。植物の光合成の魔力バージョンといった感じだった。それゆえ、大樹ではこういった配管は、滅多にお目にかかれるものではない。

「その代わり、地下世界には魔力結晶がある。あれから魔力を抽出しているってなところか」

 地下世界には、魔力が凝縮された魔力結晶というものが存在する。おそらく、これらの配管はそれに接続され、エネルギーとして活用されているといったところだろう。

「その通り。だから、地下世界では主に、魔力結晶が埋まっている場所付近に街が作られるんだ」

「まあ、そうだろうな・・・これも地下世界の住人たちの知恵ってわけだ」

 地下世界の人々の暮らしぶりの一端が垣間見えた気がした。

「まあ、エネルギー源についてはよくわかったが・・・やっぱりさっきのお化けは理解できんな」

 夕暮れの公園を飛び回るオドローンは、さすがに理解しがたいものがある。

「いや、だって前文明時代の神話に冥府ってのがあるだろ。あれなんかは死んでから行く世界だと言われていて、しかも場所ははるか地の底だって言われているわけだし」

「・・・だから、お化けの存在が当たり前なのか、ここは・・・」

 自分たちの住んでいる場所を「冥府」に例えるのもよくわからない感性である・・・。

 多分、地下世界の住人と大樹の出身者とでは、死生観そのものにもかなりのズレがあるのではないだろうか・・・?

 死生観そのものが異なれば、確かに夜にお化けが飛び交っていてもおかしくはないわけか・・・。

「晶君、もしかしたら、夜のこの街はお化け屋敷になっているかも!」

 なぜだかやたらと楽し気な早苗であった。

 もっとも、早苗の推測がそんなに的外れなものではないことを、晶たちはこの後思う存分に思い知らされる羽目になるー。

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