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土竜の街は・・・?(第1話)

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 何とか、土竜たちの集落にたどり着いた晶たち一行。

 目の前には、地下でありながら立派な門がある。

「ここがベンジャミン達が住んでいる場所か・・・ずいぶんと立派な門だな」

「そりゃあ、おいらたちの街は、この辺りでは一番大きな場所だからな。見栄えが悪いと恰好が付かないだろ」

「一番大きいって・・・ベンジャミンよ、お主らの集落以外もこの近くにあるのかえ?」

 モリガンが小首をかしげながらベンジャミンに尋ねる。さすがの魔女殿も、この近辺に他の集落があるとは思わなかったようだ。

「そりゃあ、もちろんあるさ。この近くだと、北西方向に歩いて半日くらいで他の街もあるぞ」

「おお」

 地下世界のことなど全く知らない晶たちにとって、他の集落の存在など考えもしなかった。ゆえに、ベンジャミンの話はかなり貴重である。

「近くの街と交易もやっているからな」

「そこら辺は、地上と同じってわけか・・・なるほどな」

 晶個人としては、ぜひ行ってみたい気持ちもあるが、さすがに今はこの集落の問題に集中しなければならない。もっとも、他の街の話くらいならあとで訊いてみてもいいだろう。

「ちょっと待ってな、今門番に話を通すから」

 よく見ると、ベンジャミンとは異なる種族が門の傍に構えている。少なくとも土竜ではないが・・・。

「あれは・・・前文明時代に地下に逃れた人間が変異した種族じゃな」

 モリガンが小声で晶に囁いた。

 浅黒い肌に、人間よりも背丈は低めだが、がっしりとした体型。髭面・・・と、まるで、彼らは・・・。

「前文明時代のおとぎ話などに出てくるドワーフってやつに似ているな」

「前文明時代にはいなかった・・・というか、前文明時代は人間オンリーじゃったからな。前文明の崩壊後、生き残った人間が、それぞれの活動地域で独自に適応していった。そこに魔力の影響が加わり、亜人種と呼ばれる種族が現れたわけじゃ。あいつらは、ドワーフに似ているから、そのままドワーフで通っておるようじゃがのう」

 前文明時代において、エルフやドワーフなどはおとぎ話や神話、ファンタジーの中にしか存在しえない架空の種族だった。しかし、その前文明が突如の崩壊を迎え、その後世界各地に出現した魔力の流れの影響を色濃く受けた一部の人間たちが、それぞれ亜人種化していったという説がある。

 そして、それぞれの種族は、前文明時代の神話やファンタジーをもとにして、その容姿や特徴にちなんでエルフやドワーフなどと呼ばれているのだ。中には、昆虫のような透明な翅と触覚を持つロカ族という新種の種族も存在する。

 ちなみに、害蟲の上位種である亜人種型デミヒューマンタイプは、現文明と共に発生した蟲を起源としているので、人間起源である彼らとは全く異なる存在である。

「まあ、あやつらの種族は、もともと地下での暮らしが長いからのう。土竜たちとも仲がいいのかもしれん」

「しかし、ベンジャミンの話だと、土竜以外の連中もいそうだけどな、この街。結構大きいようだし」

 おそらく、「人種のるつぼ」みたいな形で、様々な種族が混在しているのではないかと推測されるが、それは、これから実際に入ってみればわかることである。

「晶たち、門を通してくれるって」

 ベンジャミンがこちらを呼んでいる。さっそく、街の中の様子を確認できるようだ。

「よ~し、早く行こうよ、晶君」

 早苗が、待ちきれないといった様子で晶を促す。

「それもそうだな、よし、行くか」

 晶たちは、ベンジャミンの後を追って門をくぐったー。
 
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