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土竜の街を目指せ(第6話)
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ベンジャミンの集落まであと半分を切った頃ー。
「まあ、ここらで少し灯り草を増やすとするかのう」
モリガンが再び使い魔を生み出し、それに灯り草の種を付着させた。確かに、そろそろ照明もなくなってきたし、必普段真っ暗な地中生活に慣れきっているベンジャミンはともかく、人間である晶たちにとってはこの暗がりはきつい。
「そういや、人間は暗い場所が苦手だったな・・・おいら土竜だから、特に気にならないんだけど」
ただ、土竜の視覚は退化しており、ほとんど見えていないらしい。
それがそのまま、このベンジャミンに当てはまるのかどうかは不明だが(なにせ普通の土竜の10倍は平気で生きている種族なので)・・・。
「今更だけど、ベンジャミン。灯り草の光とか大丈夫か。土竜はあまり光に強くはないだろ?」
今まで通ってきた通路の中にも、前にモリガンが使い魔を通して生やしておいた灯り草がちらほらと見られた。その光のおかげで、何とか晶たちは足元に気を取られずここまで来ることができたのだが、考えてみれば、土竜であるベンジャミンにとって強い光はNGだったのではないだろうか。
「うーん、普通の土竜ならともかく、おいらたちはある程度地上の光でも耐えられる性質を備えているからな~。このくらいの光なら何とかなるよ」
考えてみれば、こいつはモリガンのアトリエ爆破のたびに、穴から光あふれる地上へと飛び出て来たんだっけ。それなら大丈夫か・・・。
「それならいいか・・・モリガン。頼むよ」
「ほいな」
・・・なんだかおかしな返事をするモリガンであった。とりあえず、使い魔をベンジャミンの背後辺りに浮かべて、そこから灯り草の種を撒き、魔法で瞬時に発芽させる。それを一定間隔ごとに行うのだ。
「まあ、これだけ暗いと、さすがに照明になるものがないと厳しいからな、オレたちにとっては」
「あと半分くらいは歩かなければならんしのう」
使い魔やら灯り草の種の調達やらで、少々魔力を消費しているためか、いささか力なくぼやくモリガンである。
「まあでも、ここまで来たんだ、あと少しさ」
・・・ただ、たどり着いた後のことも考えなければならない。ベンジャミンの言う得体の知れないやつらが本当に害蟲であれば、戦いは必至だ。少なくとも、仲良く話し合い~なんてできるような連中ではないことは確かである。
話の具合では、確かに蟲はいるだろう。それよりも問題は「人間に近い容姿のやつら」の方だ。果たして亜人種型なのか、それとも蟲ではなく友好的な他種族なのかー。
前者でないことを祈るばかりである。
「これが咲那姉とかなら、亜人種型と戦える~とか、喜ぶんだろうけどな・・・」
バトルマニアックーとまではいかないまでも、咲那自身はかなりの戦闘好きだ。特に、強いやつと戦っている時が一番充実しているらしい。
「わしらでは、まだ太刀打ちできないじゃろうて」
「・・・ああ」
この魔女殿、普段はお騒がせキャラだが、自分の実力も推し量れぬほど無能でもない。さすがに、無理をすべきところと慎重にすべきところの区別はできているようだ。
「土竜さん達の街ってどんなのかな~晶君」
早苗の、どこか間延びした声が穴の中に響き渡る。
緊張感がないように聞こえるが、それでもこれからやり合うかもしれない相手のことはよく知っているので、話題を変えて晶たちの緊張感を少しでも和らげようとしているのかもしれない。
「ベンジャミンの街かー。とりあえずその得体の知れないやつらのことを何とかした後なら、少し観光してみてもいいかもな」
「うん!」
「それもそうじゃな。わしも土竜たちの街がどうなっているのか興味があるわい」
「我輩もですニャー」
ベンジャミンの街まであと半分。期待と不安を抱えつつ、街を目指す晶たち一行であったー。
「まあ、ここらで少し灯り草を増やすとするかのう」
モリガンが再び使い魔を生み出し、それに灯り草の種を付着させた。確かに、そろそろ照明もなくなってきたし、必普段真っ暗な地中生活に慣れきっているベンジャミンはともかく、人間である晶たちにとってはこの暗がりはきつい。
「そういや、人間は暗い場所が苦手だったな・・・おいら土竜だから、特に気にならないんだけど」
ただ、土竜の視覚は退化しており、ほとんど見えていないらしい。
それがそのまま、このベンジャミンに当てはまるのかどうかは不明だが(なにせ普通の土竜の10倍は平気で生きている種族なので)・・・。
「今更だけど、ベンジャミン。灯り草の光とか大丈夫か。土竜はあまり光に強くはないだろ?」
今まで通ってきた通路の中にも、前にモリガンが使い魔を通して生やしておいた灯り草がちらほらと見られた。その光のおかげで、何とか晶たちは足元に気を取られずここまで来ることができたのだが、考えてみれば、土竜であるベンジャミンにとって強い光はNGだったのではないだろうか。
「うーん、普通の土竜ならともかく、おいらたちはある程度地上の光でも耐えられる性質を備えているからな~。このくらいの光なら何とかなるよ」
考えてみれば、こいつはモリガンのアトリエ爆破のたびに、穴から光あふれる地上へと飛び出て来たんだっけ。それなら大丈夫か・・・。
「それならいいか・・・モリガン。頼むよ」
「ほいな」
・・・なんだかおかしな返事をするモリガンであった。とりあえず、使い魔をベンジャミンの背後辺りに浮かべて、そこから灯り草の種を撒き、魔法で瞬時に発芽させる。それを一定間隔ごとに行うのだ。
「まあ、これだけ暗いと、さすがに照明になるものがないと厳しいからな、オレたちにとっては」
「あと半分くらいは歩かなければならんしのう」
使い魔やら灯り草の種の調達やらで、少々魔力を消費しているためか、いささか力なくぼやくモリガンである。
「まあでも、ここまで来たんだ、あと少しさ」
・・・ただ、たどり着いた後のことも考えなければならない。ベンジャミンの言う得体の知れないやつらが本当に害蟲であれば、戦いは必至だ。少なくとも、仲良く話し合い~なんてできるような連中ではないことは確かである。
話の具合では、確かに蟲はいるだろう。それよりも問題は「人間に近い容姿のやつら」の方だ。果たして亜人種型なのか、それとも蟲ではなく友好的な他種族なのかー。
前者でないことを祈るばかりである。
「これが咲那姉とかなら、亜人種型と戦える~とか、喜ぶんだろうけどな・・・」
バトルマニアックーとまではいかないまでも、咲那自身はかなりの戦闘好きだ。特に、強いやつと戦っている時が一番充実しているらしい。
「わしらでは、まだ太刀打ちできないじゃろうて」
「・・・ああ」
この魔女殿、普段はお騒がせキャラだが、自分の実力も推し量れぬほど無能でもない。さすがに、無理をすべきところと慎重にすべきところの区別はできているようだ。
「土竜さん達の街ってどんなのかな~晶君」
早苗の、どこか間延びした声が穴の中に響き渡る。
緊張感がないように聞こえるが、それでもこれからやり合うかもしれない相手のことはよく知っているので、話題を変えて晶たちの緊張感を少しでも和らげようとしているのかもしれない。
「ベンジャミンの街かー。とりあえずその得体の知れないやつらのことを何とかした後なら、少し観光してみてもいいかもな」
「うん!」
「それもそうじゃな。わしも土竜たちの街がどうなっているのか興味があるわい」
「我輩もですニャー」
ベンジャミンの街まであと半分。期待と不安を抱えつつ、街を目指す晶たち一行であったー。
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