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西遊記ならぬニャイ遊記(第1話)

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 ーこうして、リリィの手により、ミケさんに魔道具が与えられることとなったー。

「ニャっはっは!吾輩がついに真ニョ力を発揮できるときが来ましたニャー!」

「・・・まあ、単なる穀潰しから少しは役に立つニャンコになってくれればそれに越したことはないけどな・・・」

 ミケさんに合う魔道具というものがどのようなものなのか、まるで見当もつかないが、一応ミケさんも害蟲駆除チームの一員であることには違いない。これから先のことを考えると、せめて自衛手段くらいは自分で確保してもらわないと、確かにきついだろう。

「では、「魔女の金庫」から魔道具を取り出しましょう」

「魔女の金庫?」

 聞きなれない単語に首をかしげる晶に対して、リリィの代わりに、モリガンが答える。

「別空間に存在している魔女専用の収納スペースじゃな。主に魔道具や魔女にとってお宝に当たるものなどが保管されておる。貴重なものは基本的にそこに収納されるから、金庫に例えられるというわけじゃ。そこから、ミケさん向けの魔道具を取り出すというわけじゃ」

「へえ、便利だな」

 リリィは、慣れた手つきで魔法陣を空中に描き出した。晶が見たことのないものだが、それゆえに、いかにも魔女専用であることを認識させられる。

 やがて、空中に描かれた魔法陣は、少しずつ形を揺らがせながら、光り輝く水面のように波打ち出した。リリィは、その魔方陣に片手を挿入した。

「ああ、なるほど。咲那ねえのエクセリオンを取り出す時と同じようなものか」

「まあ、基本的にはそう変わらなんじゃろうな」

「・・・ミケさんの缶ビールやつまみを召喚するのも、結局は似たようなものか」

「・・・まあ、原理的には同じことなんじゃろうが・・・」

 缶ビールやつまみ限定の「召喚魔法」と「魔女の金庫」では、さすがにレベルが違うような気もするが、別空間にあるものをこちら側に取り出すという点では確かに一緒ではある。

「あ、出てきました。こちらになります」

 どうやら、リリィが目的のものを探り当てたようだ。その手には、何やら棒のようなものと輪っか、そして・・・。

「なんだこれ、綿あめか?」

 リリィが引っ張り出したものは、なんと大きな綿あめに見える「何か」であった。

「・・・うーん、何でしょう。私もよくわからないのですが、ただ・・・」

 リリィ自身も首を傾げつつ、

「触った感じでは、綿あめのようなネバネバ感はありませんね。それに、なんというか「薄い」感じのものです」

 見た目と感触から、どうやら綿あめではないらしいが、そういえば、この棒と輪っかも気になる。

「あ、この魔道具の説明書も出てきました」

 どうやら、この魔道具の説明書も魔女の金庫に保管されていたようだ。さっそく、リリィはその内容を読み上げることにした。

「ええっと、これは前文明時代の中国のおとぎ話をヒントに作られた魔道具で、「西遊記」がモデルだそうです」

 ・・・西遊記?

「・・・確か、僧侶が猿と豚と河童引き連れて天竺目指す話だったよな。まあ、メジャーといえばそうだが、なんで西遊記?」

 晶の疑問はもっともである。そして何より・・・。

「我輩は、猿でも豚でも河童でもニャく、ニェコですニャー」

 ・・・アトリエの中ではあるが、寒い風が吹いたような気がしたー。
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