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さて、穴の方は?(第1話)

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 モリガンとミケさんが何とか復帰し、穴の調査を再開することになったーとはいえ、モリガンは、まだ早苗を直視することができないでいるが・・・。

「とにかく、使い魔を送ってみるわい」

 先ほど毒舌ニャンドラゴラのせいで中断されていた穴の調査のため、モリガンは可愛らしい外見の単眼蝙蝠を作り出し、穴に向かわせる。

「まあ、この穴を掘ったやつのところまで行けるのかどうかはわからんが、何かの情報は得られるかもしれんしのう」

「何か、相手の性質がわかるようなものさえつかめればありがたいが・・・、穴の距離にもよるだろうしな」

 穴の距離が長すぎれば、使い魔とてその最奥までたどり着くのは難しいだろう。使い魔は、モリガンの魔力により生み出されたいわば彼女の分身だ。それだけに、彼女から離れれば離れるほど、必然的に力は弱まってしまう。

「最悪、調査は途中までということもありえそうじゃが・・・」

「その際は仕方がないさ。ただ、何があってもすぐに対処できるように、穴の中になんか目印になりそうなものくらいは置いておきたいな」

「・・・それもそうじゃな」

 モリガンは少しの間、思案顔になり、すぐに何らかの魔法の準備を行い始めたーどうやら、普段の彼女のペースを取り戻しつつあるようだった。

「とりあえず、使い魔を通じて、穴の一定間隔ごとに灯り花の種を撒こうかと思っておるんじゃが・・・」

「灯り草?」

「その名の通り、灯りを放つ植物じゃ。まあ、光ゴケの親戚みたいなもんじゃな。これがあれば、わしたちが穴に入った時の道しるべとなるし、何か異変が起こった時には、それを撒いたわし自身が感知できるというわけじゃ」

 なるほど、それであれば・・・。

「何かあれば、モリガンがその異変をキャッチできるってわけか」

「その通りじゃ」

 さっそく、使い魔を通して灯り花の種をまき散らすことにした。狭い通路の中を、一定間隔で灯り花の種を撒きながら、使い魔は突き進んでいく。

「ちなみに、その灯り花の種だが・・・まさか調合で作ったもんじゃないよな?」

 先ほどの大騒ぎのことを考えれば、当分はこいつの調合したものは一切信用ができない。一応モリガンに確認してみることにする。

「ああ、それならこの種は自生のものじゃから心配は要らない・・・って、わしの調合の腕を信じとらんな、晶」

 晶は、盛大にため息をつきながら、

「さっきまでの大騒ぎを忘れたのか、モリガン。また早苗のドSモードを見る羽目になるかもしれんぞ」

「あれは・・・我輩もさすがにガクブル状態でしたニャー」

 先ほどのことを指摘され、顔が青白くなり、冷や汗だらだら状態のモリガンである。ミケさんも、精神に少なからず傷を負っていたようであった・・・。

「?なになに、私のこと呼んだ?晶君」

「ああ、いや何でもないんだ、清野」

「・・・?」

 不思議そうに、首をかしげる早苗。

 ・・・少なくとも、早苗本人は自覚しない方がいいだろう、きっと。

「モリガン、とにかく穴の方は頼む」

「うむ、わしに任せておくがよい!」

 穴の調査は自信満々のモリガンに一任し、晶は自身の武器である笛の手入れを行うことにしたー。


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