上 下
66 / 464

スライ蟲退治(第5話)

しおりを挟む
 穴自体はそんなに大きいものではなかった。かろうじて晶が立って歩けるくらいの高さである。さすがに森林内のトンネルらしく、ところどころに、木の根っこらしきものを確認できる。

 さすがに真っ暗だが、モリガンが照明の魔法を使ってくれたため、何とか進むことができた。モリガンの右掌の少し上に、蛍光灯くらいの明るさを放つ魔法の球が浮かんでいる。これにより、中の様子を容易に確認することができた。

 最初、穴は一本道かと思っていたが、進んでみると、途中で二又に分かれていた。

 さて、左と右、どっちに進もうか・・・。

「さあ、赤い線か青い線か、間違った方を切れば大爆発ニャ!」

 ミケさんが何やら意味不明なことを喚いているが、この際無視することにする。

「さて、どっちが正解かな・・・」

「ふむ」

 モリガンが顎に手を当てて思案しながら、

「この穴は、少なくとも動物系害蟲による掘削でできたもののようじゃ。となると・・・」

 モリガンは、何者かが掘り進むことでできた通路の土壁に手を触れて、魔力の痕跡を確認しているようだ。

「少なくとも、魔力ではなく力技で掘り進めているようなので、魔力の痕跡を追うのは難しいのう」

「これだけの穴を力技だけで掘り進めるというのも、考えてみればかなりやばい相手なんじゃないか」

 晶の言う通り、人が立って歩けるだけの高さの通路を魔力なしで掘り進められるというのは、それだけパワーがある存在であるといえる。今の4人・・・というか、完全に戦力外のミケさんを除いて、果たして3人だけでどうにかできる相手なのか・・・。

「うっかりこの先で出くわしても、果たしてオレたちだけで対処できるかどうかわからん相手だろ?ここは一旦穴の外に出た方がよくないか」

 確かに、この場所でそんな相手と遭遇しても、勝てる見込みはほとんどないだろう。

「それもそうじゃな」

 勝気な魔女にしては珍しく引き下がった。

「ただ、万が一のために、ここに目印は残しておこうかのう」

「目印って?モリガンちゃん」

 早苗の問いかけに、魔女殿はいたずら好きな子供が浮かべるような笑顔で、

「なに、ここにちょっとしたわしのしもべを配置するのじゃ。そ奴らに、この先を追跡させる。さすがにこのままわしら自身が追跡するのは危険そうじゃからな」

 モリガンが、今度は左手に魔力を集め始めた。それは、やがて複数の小さな蝙蝠の形を取り、モリガンから離れて、左右それぞれの穴をめがけて飛んでいった。蝙蝠というか、可愛らしい姿をした単眼の魔物といった感じだ。ぱたぱたと小さな翼をはためかせながら飛んでいく姿は微笑ましくもある。

「これで、この先何かを見つければ、わしのもとにこ奴らの見た映像が届くというわけじゃ。まあ、即席で作った使い魔みたいなものかのう」

 得意げにモリガンが説明する。

「オレが笛で一部の蟲を操れるのと似たようなものか」

 晶は、自身の笛の音でごく一部の蟲を使役することができる。時としては、害蟲でさえ操ることができるのだ。まさに、「毒を以て毒を制す」ことが可能である。

「ちと違うのう。わしの場合は自身の魔力そのものを擬生物化することができるのじゃ」

 なるほど、いうなれば、モリガンの魔力そのものというわけか。

「これで追跡に関しては危険はなくなった。とりあえず、穴の外に向かおう」

 4人は、一旦穴の外に出て、モリガンの使い魔たちからの情報を待つこととしたー。
 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

愛想を尽かした女と尽かされた男

火野村志紀
恋愛
※全16話となります。 「そうですか。今まであなたに尽くしていた私は側妃扱いで、急に湧いて出てきた彼女が正妃だと? どうぞ、お好きになさって。その代わり私も好きにしますので」

異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。 ※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。 ※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 異世界帰りのオッサン冒険者。 二見敬三。 彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。 彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。 彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。 そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。 S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。 オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?

伯爵令嬢が効率主義の権化になったら。 〜第二王子に狙われてるので、セシリアは口で逃げてみせます〜

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「楽しみだなぁ」  第二王子・アリティーは、全てが自分の思い通りになると信じてやまない男だった。     ◇ ◇ ◇    華々しい社交界デビューを飾り、それ以降も何かと目立っている伯爵令嬢・セシリア。  デビューの日にドレスをジュースで汚された件も落ち着いて、やっと美味しく紅茶が飲めると思いきや、今度は社交界デビューであったもう一つの珍事・セシリアが王族から『第二王子・アリティーと仲良くする権利』を与えられた件が、遂に水面下で動き出す。    今度の相手は、めげない曲者権力者。  そんな彼に、義務以外の無興味事は全てゴミ箱にポイしたい伯爵令嬢・セシリアが、社交力と頭脳で立ち向かう。  そう、全ては己の心の平穏と、優雅なティータイムのために。     ◇ ◆ ◇ 最低限の『貴族の義務』は果たしたい。 でもそれ以外は「自分がやりたい事をする」生活を送りたい。 これはそんな願望を抱く令嬢が、何故か自分の周りで次々に巻き起こる『面倒』を次々へと蹴散らせていく物語・『効率主義な令嬢』シリーズの第6部作品です。 ※本作品までのあらすじを第1話に掲載していますので、本編からでもお読みいただけます。  もし「きちんと本作を最初から読みたい」と思ってくださった方が居れば、第2部から読み進める事をオススメします。  (第1部は主人公の過去話のため、必読ではありません)  以下のリンクを、それぞれ画面下部(この画面では目次の下、各話画面では「お気に入りへの登録」ボタンの下部)に貼ってあります。  ●物語第1部・第2部へのリンク  ●本シリーズをより楽しんで頂ける『各話執筆裏話』へのリンク  

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!  父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 その他、多数投稿しています! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

『役立たず』のはずが、いつの間にか王宮の救世主だと知ってました? ~放り出してくれて感謝します。おかげで私が本気を出す理由ができました~

昼から山猫
ファンタジー
王子と婚約していた辺境伯の娘サフィールは、控えめで目立たない性格ゆえ「役立たず」と侮られ、ついに破棄を言い渡される。胸の痛みを抱えながらも、「私は本当に無能だろうか?」と自問自答。実は祖母から受け継いだ古代魔法の知識を、ほとんど見せたことがないだけでは――と気づく。 意を決したサフィールは、王都を離れてひっそりと各地を回り、祖母の足跡を辿る旅に出る。 その頃、王都は魔物の侵入と自然災害で大混乱に陥っていた。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

処理中です...