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吾妻晶と清野早苗(第4話)
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というわけで、神社の巫女さんに確認してみることにした。晶たちよりも年上で、右目の下に小さなほくろがあり、なかなか可愛らしい巫女さんである。
巫女さんの名前は春奈といった。チームメンバーに例えれば、大体薬師寺咲那や和泉鏡香と同じくらいの年齢だろう。優しそうなお姉さんといった感じで、周囲の蟲達にも好かれているようだった。
それにしても、小さなものから等身大のものまでさまざまな蟲がこの神社に集まっていた。もちろんここに集まっているのは益蟲ばかりだ。害蟲であれば、他者を害する意図を示す特殊な波動を放っている。こいつらには、そういった邪気はないので人に害を及ぼす心配はなさそうだ。
「うわあ、可愛いねえ」
なんとも気の抜けるような間延びした声で、早苗は近くにいる犬によく似た蟲を抱きかかえた。適応力が高い彼女は、すぐに誰とでも仲良くなろうとする・・・もちろん害蟲は別だが。
その犬・・・というか、目が点状態の着物(このサイズの着物があるとは)を着た蟲だ。頭に角が1本あるが、それ以外は子犬のようにも見える。早苗に抱きかかえられて、まんざらでもないのか、ハアハアと息をしながら盛んに尻尾を振って喜んでいる・・・まあ、単なるスケベ犬ではないと思いたいが。
「お嬢さん。もっとなでなでして」
・・・こいつはどうやら人間の言葉を理解できるらしいが、その会話の内容から、人間に例えれば多分セクハラ親父といったところだろう・・・。
「ここに来る蟲さん達はみんないい子ばかりですよ」
春奈が優しく微笑みながら、晶たちに応対する。さすがに鏡香や咲那ほどの美人ではなかったが、その笑顔は十分魅力的で、話し方もどことなく鏡香を連想させるものがあった。
彼女の頭の上に小さな蟲が飛びついた。前文明時代、RPGと呼ばれるゲームがあったが、そこでメジャーな敵としてよく使用されていた「スライム」によく似た形状の蟲だ。やはり目が点状態で、なんとも締まりのない口をしており、まるで敵意を感じない容姿をしている。実際に友好的な種族なのは、その気配から察することもできた。
多分、ここにいる蟲達は、頻繁にこの神社に集まっているのだろう。窺ってみたところ、ほとんどが春奈の顔見知りのようだった。
さっそく、この神社で少し舞を披露したいとの旨を春奈に伝える。舞といっても、晶も早苗も即興で行うだけで、別に伝統芸能を意識した本格的なものをやるわけではない。晶の笛の音に併せて早苗が2枚の扇を使って自由に踊るーこんなところだ。
「あら、楽しそうですね。いいですよ、蟲さん達もみんな喜ぶでしょうから」
春奈の返事に、蟲達も歓喜の声を上げた。どうやら、ここに集まっている蟲達は気のいい連中ばかりのようだ。
なんにせよ、相手に喜んでもらえるのなら、こちらとしてもやりがいがあるというものだ。春奈が蟲を一か所に集めて、晶や早苗が舞を披露できるスペースを確保する。
さて、久しぶりの「野外公演」だー害蟲駆除業者が蟲相手に公演というのもおかしな気がするが、これはこれで悪くはない。晶は笛を取り出すと、自身の唇に当てがったー。
巫女さんの名前は春奈といった。チームメンバーに例えれば、大体薬師寺咲那や和泉鏡香と同じくらいの年齢だろう。優しそうなお姉さんといった感じで、周囲の蟲達にも好かれているようだった。
それにしても、小さなものから等身大のものまでさまざまな蟲がこの神社に集まっていた。もちろんここに集まっているのは益蟲ばかりだ。害蟲であれば、他者を害する意図を示す特殊な波動を放っている。こいつらには、そういった邪気はないので人に害を及ぼす心配はなさそうだ。
「うわあ、可愛いねえ」
なんとも気の抜けるような間延びした声で、早苗は近くにいる犬によく似た蟲を抱きかかえた。適応力が高い彼女は、すぐに誰とでも仲良くなろうとする・・・もちろん害蟲は別だが。
その犬・・・というか、目が点状態の着物(このサイズの着物があるとは)を着た蟲だ。頭に角が1本あるが、それ以外は子犬のようにも見える。早苗に抱きかかえられて、まんざらでもないのか、ハアハアと息をしながら盛んに尻尾を振って喜んでいる・・・まあ、単なるスケベ犬ではないと思いたいが。
「お嬢さん。もっとなでなでして」
・・・こいつはどうやら人間の言葉を理解できるらしいが、その会話の内容から、人間に例えれば多分セクハラ親父といったところだろう・・・。
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春奈が優しく微笑みながら、晶たちに応対する。さすがに鏡香や咲那ほどの美人ではなかったが、その笑顔は十分魅力的で、話し方もどことなく鏡香を連想させるものがあった。
彼女の頭の上に小さな蟲が飛びついた。前文明時代、RPGと呼ばれるゲームがあったが、そこでメジャーな敵としてよく使用されていた「スライム」によく似た形状の蟲だ。やはり目が点状態で、なんとも締まりのない口をしており、まるで敵意を感じない容姿をしている。実際に友好的な種族なのは、その気配から察することもできた。
多分、ここにいる蟲達は、頻繁にこの神社に集まっているのだろう。窺ってみたところ、ほとんどが春奈の顔見知りのようだった。
さっそく、この神社で少し舞を披露したいとの旨を春奈に伝える。舞といっても、晶も早苗も即興で行うだけで、別に伝統芸能を意識した本格的なものをやるわけではない。晶の笛の音に併せて早苗が2枚の扇を使って自由に踊るーこんなところだ。
「あら、楽しそうですね。いいですよ、蟲さん達もみんな喜ぶでしょうから」
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なんにせよ、相手に喜んでもらえるのなら、こちらとしてもやりがいがあるというものだ。春奈が蟲を一か所に集めて、晶や早苗が舞を披露できるスペースを確保する。
さて、久しぶりの「野外公演」だー害蟲駆除業者が蟲相手に公演というのもおかしな気がするが、これはこれで悪くはない。晶は笛を取り出すと、自身の唇に当てがったー。
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