31 / 464
清野江紀と薬師寺咲那(第11話)
しおりを挟む
ーー咲那視点ーー
あたしは、刀身に宿していた魔力を自身の体へと移した。魔法耐性を高めるためだった。相手の魔法球や移動地雷のダメージを少しでも抑えなければ、この弾幕の嵐を乗り越えることはできない。代わりに、エクセリオンの攻撃力は下がるが、それでも致命傷を避けるためにはやむを得ない措置だった。
だが、いくら魔法耐性を高めても、こちらから攻撃しないことにはじり貧となるのは必至だ。結局は攻め込むしかない!
例えて言うなら、火事の現場に水を被って中に飛び込むような感じか・・・?魔法耐性を水に置き換えれば、まさに火事場に突入をかけるようなものだった。
魔法耐性を高めているため、ダメージそのものは先ほどよりは少ない・・・とはいえ、相手は亜人種型だ。その魔力は桁違いである。あくまでも今までに比べれば・・・という話である。1発でも体に当たれば多少なりともこちらの体勢は崩されてしまう。
可能な限り、エクセリオンで弾き返せる魔法球はそうするものの、それ以外のものを完全に回避するのは無理だった。あらゆる方向から野球ボールが飛んできて、それをすべて打ち返すかかわせるかと言ったら、人間の動きではまず無理である。さらに言えば、空中だけでなく、地中にも移動地雷が設置されているのだ。足元にも気を配りつつ対処するには限界があった。
「っつぅ!」
左腕に一発当たった。まさにデッドボール状態だった。さすがに魔法耐性のおかげで腕が折れるとか、そこまではいかないものの、痛みが一瞬、あたしの動きを鈍らせてしまう。
他にも何発かあたしの体のすぐ脇を掠めていく。移動地雷も、あたしの足元に移動し、小爆発を起こした。何とか爆発寸前でかわすが、まともに食らえば本物の地雷と同じで下半身がなくなっていてもおかしくはない。たとえ魔法耐性を高めていたとしても、足にかなりのダメージを負うだろう。
さすがに足をやられると動けなくなってしまう。そうなれば完全にあたしの負けだ。それだけは、なんとしても避けなければならない。
だが・・・。
「はあ!」
ガキィィン!
あたしはすでに、やつの間合いに飛び込んでいた。実は、こいつの近くこそが弾幕から身を守るための安全圏だったりする。剣同士で斬り合い、お互いがほぼ密着状態となっている以上、相手も迂闊に魔法を使えない。距離が近すぎて自分の攻撃の巻き添えを食らう恐れがあるからだ。予想通り、やつはあたしのエクセリオンを剣と化した右腕で受け止めた。
だが、その腕には鏡幕は張り巡らされていない。さすがに、これだけの魔法球やら移動地雷やらを操っているからか、相手も鏡幕を再展開する余裕はなかったようだ。
「さすが亜人種型だけはあるな。魔法球を維持しつつあたしの攻撃を受け止めるとは」
お互いの剣が激しくぶつかり合った状態で、あたしはにぃっと唇を歪めた。ダメージはあるものの、まだまだ余裕はある。もっとも、相手はほぼ無傷に近いのだが、あたしの反撃はここから始まる・・・!
「君こそ、人間風情にしては僕の攻撃をこれだけ食らっていながら、よく攻撃していられると、褒めてあげるよ」
亜人種型にしても、あたしみたいにここまで食い下がるやつは初めてなのだろう。ニヤケ面とは裏腹に、口調にはいささか驚愕や戸惑いの色も混じってた。
こいつも決定打は出せないでいる。まだ、あたしが逆転できる可能性はあるはず・・・。
「これだけ密着されちゃあ、自慢の魔法も簡単には食らわせられねえみたいだな」
さすがに、自身も巻き添えを食らうような形で攻撃を仕掛けるつもりはないのだろう。いくら再生能力があるとはいえ、見た目上は肉体の再生が行われたとしても、内部に蓄積されたダメージまでは回復できないのだ。
ただ、こちらも魔法耐性に魔力の大半を使っているため、エクセリオンの刀身に送る魔力はどうしても減らさざるを得なくなっている。ここで魔法耐性を低めてもいいが、実は逃げ場がないのはあたしも一緒だ。万が一、やつが捨て身の覚悟であたしに魔法球や移動地雷をぶつけてきたとき、まず間違いなくやられてしまう。したがって、防御面を疎かにはできない。
やるとすれば、瞬間的に魔力をエクセリオンに集中させて一気に相手をぶった斬るといったくらいかー。しかし、この小賢しい亜人種型のことだ。おそらくそれを見越した上で攻撃を仕掛けてくるだろう。
やるなら、確実に仕留められる状態でなければだめだ。例えば、魔法耐性を維持しつつ、エクセリオンの魔力を大幅に高められる状況とかだ。残念だが、今はまだその準備が整っていない。
今はー。
亜人種型と斬り合いながら、あたしはその時を待ったー。
あたしは、刀身に宿していた魔力を自身の体へと移した。魔法耐性を高めるためだった。相手の魔法球や移動地雷のダメージを少しでも抑えなければ、この弾幕の嵐を乗り越えることはできない。代わりに、エクセリオンの攻撃力は下がるが、それでも致命傷を避けるためにはやむを得ない措置だった。
だが、いくら魔法耐性を高めても、こちらから攻撃しないことにはじり貧となるのは必至だ。結局は攻め込むしかない!
例えて言うなら、火事の現場に水を被って中に飛び込むような感じか・・・?魔法耐性を水に置き換えれば、まさに火事場に突入をかけるようなものだった。
魔法耐性を高めているため、ダメージそのものは先ほどよりは少ない・・・とはいえ、相手は亜人種型だ。その魔力は桁違いである。あくまでも今までに比べれば・・・という話である。1発でも体に当たれば多少なりともこちらの体勢は崩されてしまう。
可能な限り、エクセリオンで弾き返せる魔法球はそうするものの、それ以外のものを完全に回避するのは無理だった。あらゆる方向から野球ボールが飛んできて、それをすべて打ち返すかかわせるかと言ったら、人間の動きではまず無理である。さらに言えば、空中だけでなく、地中にも移動地雷が設置されているのだ。足元にも気を配りつつ対処するには限界があった。
「っつぅ!」
左腕に一発当たった。まさにデッドボール状態だった。さすがに魔法耐性のおかげで腕が折れるとか、そこまではいかないものの、痛みが一瞬、あたしの動きを鈍らせてしまう。
他にも何発かあたしの体のすぐ脇を掠めていく。移動地雷も、あたしの足元に移動し、小爆発を起こした。何とか爆発寸前でかわすが、まともに食らえば本物の地雷と同じで下半身がなくなっていてもおかしくはない。たとえ魔法耐性を高めていたとしても、足にかなりのダメージを負うだろう。
さすがに足をやられると動けなくなってしまう。そうなれば完全にあたしの負けだ。それだけは、なんとしても避けなければならない。
だが・・・。
「はあ!」
ガキィィン!
あたしはすでに、やつの間合いに飛び込んでいた。実は、こいつの近くこそが弾幕から身を守るための安全圏だったりする。剣同士で斬り合い、お互いがほぼ密着状態となっている以上、相手も迂闊に魔法を使えない。距離が近すぎて自分の攻撃の巻き添えを食らう恐れがあるからだ。予想通り、やつはあたしのエクセリオンを剣と化した右腕で受け止めた。
だが、その腕には鏡幕は張り巡らされていない。さすがに、これだけの魔法球やら移動地雷やらを操っているからか、相手も鏡幕を再展開する余裕はなかったようだ。
「さすが亜人種型だけはあるな。魔法球を維持しつつあたしの攻撃を受け止めるとは」
お互いの剣が激しくぶつかり合った状態で、あたしはにぃっと唇を歪めた。ダメージはあるものの、まだまだ余裕はある。もっとも、相手はほぼ無傷に近いのだが、あたしの反撃はここから始まる・・・!
「君こそ、人間風情にしては僕の攻撃をこれだけ食らっていながら、よく攻撃していられると、褒めてあげるよ」
亜人種型にしても、あたしみたいにここまで食い下がるやつは初めてなのだろう。ニヤケ面とは裏腹に、口調にはいささか驚愕や戸惑いの色も混じってた。
こいつも決定打は出せないでいる。まだ、あたしが逆転できる可能性はあるはず・・・。
「これだけ密着されちゃあ、自慢の魔法も簡単には食らわせられねえみたいだな」
さすがに、自身も巻き添えを食らうような形で攻撃を仕掛けるつもりはないのだろう。いくら再生能力があるとはいえ、見た目上は肉体の再生が行われたとしても、内部に蓄積されたダメージまでは回復できないのだ。
ただ、こちらも魔法耐性に魔力の大半を使っているため、エクセリオンの刀身に送る魔力はどうしても減らさざるを得なくなっている。ここで魔法耐性を低めてもいいが、実は逃げ場がないのはあたしも一緒だ。万が一、やつが捨て身の覚悟であたしに魔法球や移動地雷をぶつけてきたとき、まず間違いなくやられてしまう。したがって、防御面を疎かにはできない。
やるとすれば、瞬間的に魔力をエクセリオンに集中させて一気に相手をぶった斬るといったくらいかー。しかし、この小賢しい亜人種型のことだ。おそらくそれを見越した上で攻撃を仕掛けてくるだろう。
やるなら、確実に仕留められる状態でなければだめだ。例えば、魔法耐性を維持しつつ、エクセリオンの魔力を大幅に高められる状況とかだ。残念だが、今はまだその準備が整っていない。
今はー。
亜人種型と斬り合いながら、あたしはその時を待ったー。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。
せいめ
恋愛
メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。
頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。
ご都合主義です。誤字脱字お許しください。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
【完結】7年待った婚約者に「年増とは結婚できない」と婚約破棄されましたが、結果的に若いツバメと縁が結ばれたので平気です
岡崎 剛柔
恋愛
「伯爵令嬢マリアンヌ・ランドルフ。今日この場にて、この僕――グルドン・シルフィードは君との婚約を破棄する。理由は君が25歳の年増になったからだ」
私は7年間も諸外国の旅行に行っていたグルドンにそう言われて婚約破棄された。
しかも貴族たちを大勢集めたパーティーの中で。
しかも私を年増呼ばわり。
はあ?
あなたが勝手に旅行に出て帰って来なかったから、私はこの年までずっと結婚できずにいたんですけど!
などと私の怒りが爆発しようだったとき、グルドンは新たな人間と婚約すると言い出した。
その新たな婚約者は何とタキシードを着た、6、7歳ぐらいの貴族子息で……。
婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。
【短編】婚約破棄したので、もう毎日卵かけご飯は食べられませんよ?
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
ふふん♪ これでやっとイチゴのタルトと、新作の二種類の葡萄のトライフル、濃厚プリンが食べられるわ♪)
「もうお前の顔を見るのもウンザリだ、今日限りで貴様とは婚約破棄する!」
(え?)
とあるパーティー会場での起こった婚約破棄。政略結婚だったのでアニータはサクッと婚約破棄を受け入れようとするが──。
「不吉な黒い髪に、眼鏡と田舎くさい貴様は、視界に入るだけで不快だったのだ。貴様が『王国に繁栄を齎すから』と父上からの命令がなければ、婚約者になどするものか。俺は学院でサンドラ・ロヴェット嬢と出会って本物の恋が何か知った! 」
(この艶やかかつサラサラな黒髪、そしてこの眼鏡のフレームや形、軽さなど改良に改良を重ねた私の大事な眼鏡になんて不遜な態度! 私自身はどこにでもいるような平凡な顔だけれど、この髪と眼鏡を馬鹿にする奴は許さん!)
婚約破棄後に爆弾投下。
「我が辺境伯──いえトリス商会から提供しているのは、ランドルフ様の大好物である、卵かけご飯の材料となっているコカトリスの鶏生卵と米、醤油ですわ」
「は?」
これは鶏のいない異世界転生した少女が、あの手この手を使って再現した「卵かけご飯」のお話?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる