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清野江紀と薬師寺咲那(第7話)
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ーー咲那視点ーー
あたしと亜人種型との戦いの幕が切って降ろされたー。
あたしの予測通り、やつは指先にためた魔力を光線の形で放ってきた。速射性に優れるタイプの魔法属性攻撃だ。威力そのものは大したことはない・・・というのは、あくまでも魔法全体としてみればの話であって、さすがに亜人種型が放つそれは格段に威力が違う。まともに食らっていれば、あたしの体に風穴が空いただろう。
相手の魔法攻撃を先読みし、魔法剣で弾き返した。
「へえ」
亜人種型__デミヒューマンタイプ__#が心底感心したような声を上げる。
「人間がこれを弾き返すなんて・・・お嬢さん、なかなかやるね」
だが、あたしにとってはこれくらいは序の口だ。この程度のことで感心されても、逆に馬鹿にされたような気分になる。
「なめんな、蟲けら」
剣ーエクセリオンの刀身に再び魔力を込めてから、
「この程度の芸当なんかあたしらにとってはできて当たり前だ」
実際、今まで幾度となく大型の蟲どもとやり合ってきた。さすがに亜人種型__デミヒューマンタイプ__#ほどではないが、似たような攻撃を仕掛けてくるやつとも戦ったこともある。
戦いの経験だけでいえば、江紀にも負けてはいないはずだ。
「なるほど、戦闘経験は豊富というわけだね」
からかうような口調でーというか、最初からあたしら人間を馬鹿にしているのだろうがー亜人種型__デミヒューマンタイプ__#が感想を漏らした。
「伊達にこんな仕事、何年もやってねえよ」
あたしは、ふんと鼻を鳴らして相手をにらみ返した。
「今度はこっちから行くぜ」
エクセリオンの刀身に宿った魔力を確認し、亜人種型__デミヒューマンタイプ__#に対して斬りかかる。まず、攻撃してみないことには相手の実力がわからない。
ガキイィィン!
「!」
魔法剣を受け止められたー。
亜人種型__デミヒューマンタイプ__#の右腕が変形している。あれは・・・
「鏡幕か!」
一部の蟲が防御の際に用いる手段だ。鏡幕の名前の由来は莢膜からきている。
莢膜とは、真性細菌の一部が有するとされる皮膜状の構造物で、例えば人体の白血球による食作用といったあらゆる免疫機能から細菌そのものを保護する働きを持つ。主に、菌体そのものの表面一帯に存在する層状のものだ。
そして、今回こいつが張り巡らせた鏡幕は、その蟲版に当たるもので、蟲の体表面一帯をほぼ均一な厚みで覆い、外敵のあらゆる攻撃を防ぐ役割を持っている。つまりは、莢膜によく似た性質を持つからこそこの名がついたともいえる。
ただ、莢膜と異なる点は、「鏡」が名称に含まれることからもわかる通り、相手の魔法攻撃そのものを反射させることもできるということだ。
さすがに魔法剣のように付与されたものについては反射されることはないものの、剣を弾かれることについては変わりはない。
今のやつは、右腕の部分が鏡幕の層で均一に覆われている。しかもー
「お嬢さん、剣術が得意なようだね。なら、こちらも剣で行かせてもらおうかな」
右腕そのものが、禍々しさを感じさせる剣の形へと変形していた。どうやら、腕など一部の部位であれば自由に変形できるタイプの蟲であるらしい。
「蟲けらも剣を使うのか・・・」
別に自慢するというわけではないが、並大抵の奴なら、剣術であたしの右に出る者はいない。いまのところ、江紀とあとはかつて共に流派を学んだ姉弟子くらいしか、あたしと互角以上の使い手はいないだろう。
もっとも、この亜人種型__デミヒューマンタイプ__#の剣術の腕がどれほどのものかは、実際にこれから斬り合ってみないとわからないだろうが・・・。
「おもしれえ」
先の見えない戦いもまた一興か。自然とあたしの頬が緩む。やはり強い相手とやり合うのは楽しい。これがあるからこそ、害蟲駆除なんて誰もが敬遠したがるような仕事ができるのだ。
亜人種型__デミヒューマンタイプ__#の右腕がギラギラと不気味に輝いている。その輝きは、獲物を目の前に下猛獣の瞳のようだ。実際、あいつにとってあたしは単なる獲物にすぎないだろうが・・・こちらも負けるつもりなどない!
「さあ、来なよ人間のお嬢さん」
「いいぜ、とことんやってやるよ!」
あたしと亜人種型__デミヒューマンタイプ__#、双方の剣が再び交わったー。
あたしと亜人種型との戦いの幕が切って降ろされたー。
あたしの予測通り、やつは指先にためた魔力を光線の形で放ってきた。速射性に優れるタイプの魔法属性攻撃だ。威力そのものは大したことはない・・・というのは、あくまでも魔法全体としてみればの話であって、さすがに亜人種型が放つそれは格段に威力が違う。まともに食らっていれば、あたしの体に風穴が空いただろう。
相手の魔法攻撃を先読みし、魔法剣で弾き返した。
「へえ」
亜人種型__デミヒューマンタイプ__#が心底感心したような声を上げる。
「人間がこれを弾き返すなんて・・・お嬢さん、なかなかやるね」
だが、あたしにとってはこれくらいは序の口だ。この程度のことで感心されても、逆に馬鹿にされたような気分になる。
「なめんな、蟲けら」
剣ーエクセリオンの刀身に再び魔力を込めてから、
「この程度の芸当なんかあたしらにとってはできて当たり前だ」
実際、今まで幾度となく大型の蟲どもとやり合ってきた。さすがに亜人種型__デミヒューマンタイプ__#ほどではないが、似たような攻撃を仕掛けてくるやつとも戦ったこともある。
戦いの経験だけでいえば、江紀にも負けてはいないはずだ。
「なるほど、戦闘経験は豊富というわけだね」
からかうような口調でーというか、最初からあたしら人間を馬鹿にしているのだろうがー亜人種型__デミヒューマンタイプ__#が感想を漏らした。
「伊達にこんな仕事、何年もやってねえよ」
あたしは、ふんと鼻を鳴らして相手をにらみ返した。
「今度はこっちから行くぜ」
エクセリオンの刀身に宿った魔力を確認し、亜人種型__デミヒューマンタイプ__#に対して斬りかかる。まず、攻撃してみないことには相手の実力がわからない。
ガキイィィン!
「!」
魔法剣を受け止められたー。
亜人種型__デミヒューマンタイプ__#の右腕が変形している。あれは・・・
「鏡幕か!」
一部の蟲が防御の際に用いる手段だ。鏡幕の名前の由来は莢膜からきている。
莢膜とは、真性細菌の一部が有するとされる皮膜状の構造物で、例えば人体の白血球による食作用といったあらゆる免疫機能から細菌そのものを保護する働きを持つ。主に、菌体そのものの表面一帯に存在する層状のものだ。
そして、今回こいつが張り巡らせた鏡幕は、その蟲版に当たるもので、蟲の体表面一帯をほぼ均一な厚みで覆い、外敵のあらゆる攻撃を防ぐ役割を持っている。つまりは、莢膜によく似た性質を持つからこそこの名がついたともいえる。
ただ、莢膜と異なる点は、「鏡」が名称に含まれることからもわかる通り、相手の魔法攻撃そのものを反射させることもできるということだ。
さすがに魔法剣のように付与されたものについては反射されることはないものの、剣を弾かれることについては変わりはない。
今のやつは、右腕の部分が鏡幕の層で均一に覆われている。しかもー
「お嬢さん、剣術が得意なようだね。なら、こちらも剣で行かせてもらおうかな」
右腕そのものが、禍々しさを感じさせる剣の形へと変形していた。どうやら、腕など一部の部位であれば自由に変形できるタイプの蟲であるらしい。
「蟲けらも剣を使うのか・・・」
別に自慢するというわけではないが、並大抵の奴なら、剣術であたしの右に出る者はいない。いまのところ、江紀とあとはかつて共に流派を学んだ姉弟子くらいしか、あたしと互角以上の使い手はいないだろう。
もっとも、この亜人種型__デミヒューマンタイプ__#の剣術の腕がどれほどのものかは、実際にこれから斬り合ってみないとわからないだろうが・・・。
「おもしれえ」
先の見えない戦いもまた一興か。自然とあたしの頬が緩む。やはり強い相手とやり合うのは楽しい。これがあるからこそ、害蟲駆除なんて誰もが敬遠したがるような仕事ができるのだ。
亜人種型__デミヒューマンタイプ__#の右腕がギラギラと不気味に輝いている。その輝きは、獲物を目の前に下猛獣の瞳のようだ。実際、あいつにとってあたしは単なる獲物にすぎないだろうが・・・こちらも負けるつもりなどない!
「さあ、来なよ人間のお嬢さん」
「いいぜ、とことんやってやるよ!」
あたしと亜人種型__デミヒューマンタイプ__#、双方の剣が再び交わったー。
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