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ユグドラシルの双子の主・和泉奏多(第3話)
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ーー晶視点ーー
害蟲駆除専門の方が来てくださったのは幸いだった。
何せ、オレの能力では蟲が外に出ないように屋敷に結界を張るのが精いっぱいで、倒すのは無理だからだ。
もちろん、武術系の術の心得がないわけではない。並の蟲ならオレでも何とかなる。ただ、こいつは本の「文字そのもの」を食って、今や蔵の中から溢れんばかりの存在となっている。そりゃ、書籍に書かれた文字数ともなれば莫大なわけで、それらを吸収して力を蓄えているのだから、とてもオレの手には負えないだろう。
姉さんと爺さんには親戚の家に避難してもらったが、オレがいつまでこいつらを抑えていられるか内心焦りを感じていたところだ。
というわけで、ここは素直に、専門家である和泉さんの手を借りることにしよう。
「こちらです、和泉さん」
蔵のある庭へと案内しようとする。
「奏多でいいよ、晶君」
「では・・・奏多さん、こちらです」
オレは和泉さんー奏多さんを庭へと案内した。
ーー
庭から蔵のある林の方に案内する。自分でいうのもなんだが、この屋敷は結構広い。蔵がある場所も、実は母屋から結構離れている。もっとも、今は蔵の中に蟲を封じ込めているため、母屋から離れているのはある意味好都合かもしれない。
林の半ばで蔵にたどり着く。かなり古い蔵で、外壁の塗装が一部剥げていたりする歴史を感じさせるといえばそうだが、屋敷自体はそれほど朽ちてはおらず、蔵だけが古めかしいというのも違和感があったりする。
だからと言って今のところ補修する予定はないのだが。
「この蔵に例の蟲を閉じ込めています。二重結界にしているので、簡単には出られないかと思いますが・・・」
ただ、相手がどれだけの力を蓄えているかで状況が違ってくるはず。封じ込めてから1週間近くが経過した。この間、こいつは自身が食らった文字により、さらに巨大化や群生化している可能性もある。そうなれば、この結界と手無事では済まないだろう。
「これは・・・結界が一部弱まっているね」
事実、今結界を確認してみると、あちこちにひびが入っているようだった。おそらく、蔵の中の蟲の魔力が増大化して、蔵の外に張り巡らせた二重結界にも影響が及んでいるためだろう。
このままでは、あと数日以内に結界が破られる可能性が高い。今のうちに何とかしなければ、この屋敷どころか、付近にも影響が及んでしまう・・・。
「このまま結界を破られるようなことがあれば、周囲のコミュニティにも悪影響が出ます。とはいっても、オレにできることと言ったらせいぜい閉じ込めることくらいで、この有様ですよ」
自嘲気味に説明する。自分の無力さというものを痛感するばかりだ。
確かに結界術というのは、守りや抑制においては高い効果をもたらす。ただ、相手を倒すための力ではないため、根本的な解決策とはなりえない。状況にもよるが、結局は一時しのぎとなってしまうのだ。
「いや、これだけの結界を作ることができて、しかもこのレベルの蟲を閉じ込めておけるのは大したものだと思うよ」
専門家の奏多さんに褒められるのなら、少なくとも結界術に関しては自身をもっていいのだろうか。そんなことを考えていると、
「あとは僕たちの仕事だ。とにかく、このレベルにまで成長したこいつを見過ごすことはできない。結界のひびから漏れてくる魔力の波動から考えても、こいつは明らかに害蟲だ。あとは僕に任せてくれないか」
と、奏多さんは自信ありげな笑みを浮かべつつ、再び蔵の方を見やった。どうやら、これから害蟲駆除が本格的に始まろうとしているようだ。
「あの、差し支えなければですが」
オレは、害蟲駆除が実際にどのようにして行われるのか、ふと気になった。
「オレも害蟲駆除しているところを見学してもいいですか、後学のために。もちろん、危険なことは承知していますが・・・」
今回のような事態が再び起きないとも限らない。というか、高い確率でまた起きるような予感がある。その時、奏多さんが再びこの場に現れるとは限らないのだ。そうなれば、結局は自分の手で解決するしかない。
力を身につけなければ。そのために、彼の力を見極めてみたいと思った。
「オレ自身は、足手まといにならないように自分の身は自分で守りますから、もしよければお願いします」
と、奏多さんにお願いすることにしたー
害蟲駆除専門の方が来てくださったのは幸いだった。
何せ、オレの能力では蟲が外に出ないように屋敷に結界を張るのが精いっぱいで、倒すのは無理だからだ。
もちろん、武術系の術の心得がないわけではない。並の蟲ならオレでも何とかなる。ただ、こいつは本の「文字そのもの」を食って、今や蔵の中から溢れんばかりの存在となっている。そりゃ、書籍に書かれた文字数ともなれば莫大なわけで、それらを吸収して力を蓄えているのだから、とてもオレの手には負えないだろう。
姉さんと爺さんには親戚の家に避難してもらったが、オレがいつまでこいつらを抑えていられるか内心焦りを感じていたところだ。
というわけで、ここは素直に、専門家である和泉さんの手を借りることにしよう。
「こちらです、和泉さん」
蔵のある庭へと案内しようとする。
「奏多でいいよ、晶君」
「では・・・奏多さん、こちらです」
オレは和泉さんー奏多さんを庭へと案内した。
ーー
庭から蔵のある林の方に案内する。自分でいうのもなんだが、この屋敷は結構広い。蔵がある場所も、実は母屋から結構離れている。もっとも、今は蔵の中に蟲を封じ込めているため、母屋から離れているのはある意味好都合かもしれない。
林の半ばで蔵にたどり着く。かなり古い蔵で、外壁の塗装が一部剥げていたりする歴史を感じさせるといえばそうだが、屋敷自体はそれほど朽ちてはおらず、蔵だけが古めかしいというのも違和感があったりする。
だからと言って今のところ補修する予定はないのだが。
「この蔵に例の蟲を閉じ込めています。二重結界にしているので、簡単には出られないかと思いますが・・・」
ただ、相手がどれだけの力を蓄えているかで状況が違ってくるはず。封じ込めてから1週間近くが経過した。この間、こいつは自身が食らった文字により、さらに巨大化や群生化している可能性もある。そうなれば、この結界と手無事では済まないだろう。
「これは・・・結界が一部弱まっているね」
事実、今結界を確認してみると、あちこちにひびが入っているようだった。おそらく、蔵の中の蟲の魔力が増大化して、蔵の外に張り巡らせた二重結界にも影響が及んでいるためだろう。
このままでは、あと数日以内に結界が破られる可能性が高い。今のうちに何とかしなければ、この屋敷どころか、付近にも影響が及んでしまう・・・。
「このまま結界を破られるようなことがあれば、周囲のコミュニティにも悪影響が出ます。とはいっても、オレにできることと言ったらせいぜい閉じ込めることくらいで、この有様ですよ」
自嘲気味に説明する。自分の無力さというものを痛感するばかりだ。
確かに結界術というのは、守りや抑制においては高い効果をもたらす。ただ、相手を倒すための力ではないため、根本的な解決策とはなりえない。状況にもよるが、結局は一時しのぎとなってしまうのだ。
「いや、これだけの結界を作ることができて、しかもこのレベルの蟲を閉じ込めておけるのは大したものだと思うよ」
専門家の奏多さんに褒められるのなら、少なくとも結界術に関しては自身をもっていいのだろうか。そんなことを考えていると、
「あとは僕たちの仕事だ。とにかく、このレベルにまで成長したこいつを見過ごすことはできない。結界のひびから漏れてくる魔力の波動から考えても、こいつは明らかに害蟲だ。あとは僕に任せてくれないか」
と、奏多さんは自信ありげな笑みを浮かべつつ、再び蔵の方を見やった。どうやら、これから害蟲駆除が本格的に始まろうとしているようだ。
「あの、差し支えなければですが」
オレは、害蟲駆除が実際にどのようにして行われるのか、ふと気になった。
「オレも害蟲駆除しているところを見学してもいいですか、後学のために。もちろん、危険なことは承知していますが・・・」
今回のような事態が再び起きないとも限らない。というか、高い確率でまた起きるような予感がある。その時、奏多さんが再びこの場に現れるとは限らないのだ。そうなれば、結局は自分の手で解決するしかない。
力を身につけなければ。そのために、彼の力を見極めてみたいと思った。
「オレ自身は、足手まといにならないように自分の身は自分で守りますから、もしよければお願いします」
と、奏多さんにお願いすることにしたー
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