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ユグドラシルの双子の主・和泉奏多(第1話)
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チーム《ユグドラシル》のあるセントラルから北方に数十キロの地点にある小さな町ー。
そこに、風変わりな屋敷があった。どこか古風な趣のあるその屋敷には、なぜか周囲を拒絶するかの如く、結界が張り巡らされていた。
チーム《ユグドラシル》の双子の王ー和泉奏多は、この地方の蟲の噂を聞きつけ、そしてこの屋敷を見つけた。この結界は、明らかに蟲除けのタイプだ。蟲を寄せ付けず、内部に入れさせないーそのために張り巡らされたものであるということはすぐに分かった。
この辺りの町の中では結構大きな屋敷だ。この大きさの屋敷全体を覆う結界となると、かなりの腕の結界師がこれを張り巡らせたということになる。あくまで蟲対策用の結界なので、人間が入るには特に制限を受けないが、このような結界を張り巡らせている以上、何か特別な事情があるはずである。
奏多が屋敷の様子を窺っていると、
「オレの屋敷に御用ですか」
ふいに、声をかけられる。どうやら、この屋敷の主らしい。
振り返ると、そこには着物姿の少年がー一瞬少女かと見まごうほどの綺麗な顔立ちで、小柄でもあるーただずんでいた。前文明時代、日本という国があったが、そこの明治、大正と呼ばれる時代の書生に近い恰好だ。意外と似合っている。
「やあ、君の屋敷だったんだね」
奏多は少年の方に向き直ると、
「ごめんなさい。別に怪しいものじゃないんだ。僕は害蟲駆除チームの一員でね。この町を通りかかったら、やたらと大きな蟲除けの結界を見つけて、それがこの屋敷から張り巡らされているようだったから、それで確認していたというわけさ」
自分の立場を明かして、なぜこの屋敷を観察していたのか事情を話す。
「僕は和泉奏多。君はこの屋敷の人だよね」
「オレは吾妻晶。この屋敷の住人です」
年のころは、大体15~16歳くらいだろうか、女顔で、背は低め。うちのチームの一員である清野早苗より少し上くらいの年代といったところか。小奇麗な少年である。
「それにしても、まさか害蟲駆除チームの方がお見えになるとは・・・」
吾妻少年は奏多が害蟲駆除チームの一員だということを聞き、何か思案し始めた。
正確に言えば、一員というよりチームを率いる「双子の王」なのだが。出会って間もない相手にそこまで話す必要はないだろう。
奏多には双子の姉がいる。和泉鏡香という。彼女は今、チームが取り逃がした大型の蟲を追いかけて「秋の領域」と呼ばれる場所に赴いているはずだ。鏡香なら心配はないだろう。力比べをしたことはないが、異能力に関しては二人ともマスターランクでほぼ互角のはず。
それよりも、今はこの目の前の結界である。何の目的でーといっても用途は蟲除けに限られたものだといえばそうなのだがーこの結界を張り巡らせたのか、ここは吾妻本人に確認した方がよさそうだ。
「和泉さんとおっしゃいましたね。あなたを害蟲駆除チームの方と見込んで、少しお願いがあるのですが」
先に、吾妻少年の方から申し出があった。これだけの蟲除け結界を張り巡らせているのだ、当然蟲が原因だろう。
蟲が屋敷に入らないようにするためか、それともー
「この敷地にいる蟲を退治してほしいのです」
蟲をここから出さないようにするためかー
そこに、風変わりな屋敷があった。どこか古風な趣のあるその屋敷には、なぜか周囲を拒絶するかの如く、結界が張り巡らされていた。
チーム《ユグドラシル》の双子の王ー和泉奏多は、この地方の蟲の噂を聞きつけ、そしてこの屋敷を見つけた。この結界は、明らかに蟲除けのタイプだ。蟲を寄せ付けず、内部に入れさせないーそのために張り巡らされたものであるということはすぐに分かった。
この辺りの町の中では結構大きな屋敷だ。この大きさの屋敷全体を覆う結界となると、かなりの腕の結界師がこれを張り巡らせたということになる。あくまで蟲対策用の結界なので、人間が入るには特に制限を受けないが、このような結界を張り巡らせている以上、何か特別な事情があるはずである。
奏多が屋敷の様子を窺っていると、
「オレの屋敷に御用ですか」
ふいに、声をかけられる。どうやら、この屋敷の主らしい。
振り返ると、そこには着物姿の少年がー一瞬少女かと見まごうほどの綺麗な顔立ちで、小柄でもあるーただずんでいた。前文明時代、日本という国があったが、そこの明治、大正と呼ばれる時代の書生に近い恰好だ。意外と似合っている。
「やあ、君の屋敷だったんだね」
奏多は少年の方に向き直ると、
「ごめんなさい。別に怪しいものじゃないんだ。僕は害蟲駆除チームの一員でね。この町を通りかかったら、やたらと大きな蟲除けの結界を見つけて、それがこの屋敷から張り巡らされているようだったから、それで確認していたというわけさ」
自分の立場を明かして、なぜこの屋敷を観察していたのか事情を話す。
「僕は和泉奏多。君はこの屋敷の人だよね」
「オレは吾妻晶。この屋敷の住人です」
年のころは、大体15~16歳くらいだろうか、女顔で、背は低め。うちのチームの一員である清野早苗より少し上くらいの年代といったところか。小奇麗な少年である。
「それにしても、まさか害蟲駆除チームの方がお見えになるとは・・・」
吾妻少年は奏多が害蟲駆除チームの一員だということを聞き、何か思案し始めた。
正確に言えば、一員というよりチームを率いる「双子の王」なのだが。出会って間もない相手にそこまで話す必要はないだろう。
奏多には双子の姉がいる。和泉鏡香という。彼女は今、チームが取り逃がした大型の蟲を追いかけて「秋の領域」と呼ばれる場所に赴いているはずだ。鏡香なら心配はないだろう。力比べをしたことはないが、異能力に関しては二人ともマスターランクでほぼ互角のはず。
それよりも、今はこの目の前の結界である。何の目的でーといっても用途は蟲除けに限られたものだといえばそうなのだがーこの結界を張り巡らせたのか、ここは吾妻本人に確認した方がよさそうだ。
「和泉さんとおっしゃいましたね。あなたを害蟲駆除チームの方と見込んで、少しお願いがあるのですが」
先に、吾妻少年の方から申し出があった。これだけの蟲除け結界を張り巡らせているのだ、当然蟲が原因だろう。
蟲が屋敷に入らないようにするためか、それともー
「この敷地にいる蟲を退治してほしいのです」
蟲をここから出さないようにするためかー
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