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ユグドラシルの双子の主・和泉鏡香(第1話)
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秋の領域ーー
季節の変化というものがほとんどないこの時代ー各領域に限定される四季というものがある。樹木は常に紅葉し、落ち葉が道を支配するという光景が当たり前のこの領域は、人々から「秋の領域」と呼ばれていた。
この場所を一人の女性が歩いていた。中華風のドレスに身を包んだ美しい女性だ。まだ20代に入ったばかりといった、どこか温和そうな顔立ちをした女性で、紫がかった、少しウェーブのかかった髪が特徴的だった。着ている服が体のラインをくっきりと浮かび上がらせており、それが彼女の魅力を引き立たせている。だが、不思議とそこにいやらしさは存在しない。彼女が、どこか凛とした雰囲気を持っているためだろうか。
髪が風によりあおられたので、彼女は片手で抑えた。風がかなり強く、地面の落ち葉もそれにあおられる形で舞い上がる。女性は、ふと空を見上げつつ、
「この領域も、前に来た時とあまり変わりませんね」
と、数年前にこの場所を訪れた時のことを思い出しながら、ひとり呟いた。穏やかな雰囲気に似合ったおっとりとした口調だった。
和泉鏡香ーこの女性の名前であり、チーム《ユグドラシル》を率いる「双子の王」こと和泉姉弟の双子の姉だ。
旧時代ーこの時代の人々が「前文明」と呼称するそれは、突然終わりを迎えた。様々な歴史学者がその終焉の原因を研究しているものの、なぜ前文明が終焉したのかは定かではないという。
そして、この時代においてチームと呼ばれている集合体が、前文明における「国家」や「組織」の代わりとなっている。当然ながら、チームにはそれを率いるリーダーが必須だ。それがマスターと呼ばれる存在なのである。
各チームのマスター達は、一人でも高い異能力を有しているといわれている。各チームの構成員たちは、各能力によってランク付けがなされているが、いかな達人と呼ばれるランクの者達でもマスターには絶対にかなわない。たとえそれが100人掛かりで勝負を挑んだとしてもだ。
鏡香と、彼女の双子の弟である和泉奏多がチーム《ユグドラシル》のマスターだ。だからこそ二人は「双子の王」とも呼ばれている。
しばらく森を歩いていると、開けた場所に出た。ここで行き止まりか。この先に道はなく、辺り一面紅葉した樹木で覆われているだけだ。ただ、風はますます強くなっている。そして、この風には強い魔力を感じる。
事前に近くの村ーこの時代においてはコミュニティと呼称されているーで聞いた話だと、ここに今回の目的の対象となる相手がいるはずだ。そして、風には魔力の波動が感じられる。その波動の中心は・・・上か?
「何者じゃ」
突然声が響いた。やはり上の方からだ。鏡香が見上げると、そこには宙に浮かんだ少女が仁王立ちよろしくこちらを見下ろしていた。
季節の変化というものがほとんどないこの時代ー各領域に限定される四季というものがある。樹木は常に紅葉し、落ち葉が道を支配するという光景が当たり前のこの領域は、人々から「秋の領域」と呼ばれていた。
この場所を一人の女性が歩いていた。中華風のドレスに身を包んだ美しい女性だ。まだ20代に入ったばかりといった、どこか温和そうな顔立ちをした女性で、紫がかった、少しウェーブのかかった髪が特徴的だった。着ている服が体のラインをくっきりと浮かび上がらせており、それが彼女の魅力を引き立たせている。だが、不思議とそこにいやらしさは存在しない。彼女が、どこか凛とした雰囲気を持っているためだろうか。
髪が風によりあおられたので、彼女は片手で抑えた。風がかなり強く、地面の落ち葉もそれにあおられる形で舞い上がる。女性は、ふと空を見上げつつ、
「この領域も、前に来た時とあまり変わりませんね」
と、数年前にこの場所を訪れた時のことを思い出しながら、ひとり呟いた。穏やかな雰囲気に似合ったおっとりとした口調だった。
和泉鏡香ーこの女性の名前であり、チーム《ユグドラシル》を率いる「双子の王」こと和泉姉弟の双子の姉だ。
旧時代ーこの時代の人々が「前文明」と呼称するそれは、突然終わりを迎えた。様々な歴史学者がその終焉の原因を研究しているものの、なぜ前文明が終焉したのかは定かではないという。
そして、この時代においてチームと呼ばれている集合体が、前文明における「国家」や「組織」の代わりとなっている。当然ながら、チームにはそれを率いるリーダーが必須だ。それがマスターと呼ばれる存在なのである。
各チームのマスター達は、一人でも高い異能力を有しているといわれている。各チームの構成員たちは、各能力によってランク付けがなされているが、いかな達人と呼ばれるランクの者達でもマスターには絶対にかなわない。たとえそれが100人掛かりで勝負を挑んだとしてもだ。
鏡香と、彼女の双子の弟である和泉奏多がチーム《ユグドラシル》のマスターだ。だからこそ二人は「双子の王」とも呼ばれている。
しばらく森を歩いていると、開けた場所に出た。ここで行き止まりか。この先に道はなく、辺り一面紅葉した樹木で覆われているだけだ。ただ、風はますます強くなっている。そして、この風には強い魔力を感じる。
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「何者じゃ」
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