ツイノベ置き場

椎名サクラ

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ナンパから助けてくれた年上と付き合うDDの話

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恋人に振られた受けは海に来ていた。

ただ一人静かに考えたかった。

二人で何度も来た海。

思いにふけるのにぴったりだと思った。

秋の人気のなさを期待したが、何故か声をかけられた。

いかにもナンパしますという風情の男たちだった。

無視したら彼らの車に連れて行かれそうになって抵抗した。

どうして自分ばっかりこんな目に遭うんだと悲しくなった。

そこにthe海の男軍団がやってきた。

「その子、俺らの連れなんだが、なんの用だ?」

一番ごつい人が声をかけたら、男たちは慌てて逃げ出した。

「大丈夫か? ああいうのはしつこいから気をつけないと」

受けをすぐに男たちから引き離したガタイのいい髭の男が注意してきた。

「違う! 強引に引っ張られて」

弁解してだんだん泣きそうになった。

今日は散々だと思うと本当に泣けてきた。

「髭が若い子を泣かしたぞー」

すぐさま海の男達がからかい始めた。

「違うって。君も男なら簡単に泣くな」

慌てる姿が面白くて涙を流して笑った。

海の男達はこのあたりのパトロールをしている有志だった。

近頃は強引なナンパによるトラブルや事件が絶えないという。

しかも男女問わない無差別ぶりに目を光らせているのだという。

「君みたいな可愛い子は危険なんだよ、気をつけないと」

髭の男が頭を撫でてきた。

「俺、男ですから」

顔が赤くなる。

「さっきも言っただろ、男でも無差別なんだよ」

余計に髪をワシャワシャされて怒ったが笑われた。

大学生なのに子供扱いしてくる髭の男に、気がつけば失恋の痛みを忘れていた。

サーフボードやウインドサーフィンの道具を見せてもらってと有意義な一日だった。

気持ちを切り替えた受けは、恋人のことすら忘れて大学生活を満喫した。

オシャレなカフェでアルバイトを始めてみた。

南国をモチーフにしたその店は繁盛していて、忙しかったが受けにはありがたがった。

ある日オーナーが来ると先輩バイトが騒いでいたが受けは気にせずバイトに励んでいると声をかけられた。

髭の男だ。

「お久しぶりです」

からかわれていたのを思い出して不機嫌な対応をしてしまう受けに髭の男は豪快に笑った。

「新しいバイトは君なのか。頑張ってくれよ」

それから髭の男は店長と話し始めた。

髭の男がオーナーだと知って驚いたが、今更すぎて対応を変えられなかった。

髭の男もそれを笑って済ませてくれた。

それから髭の男は度々店にやってきては受けをからかって遊んだ。

「いい大人が」と怒ると「今度飯、奢ってやる」と言われて許してしまう。

シフトが夕方に終わる日、約束通り食事に連れて行ってくれた。

受けが入ったこともないようないかにも高そうなレストランだった。

高架下の飲み屋だろうと思っていた受けは驚いた。

「好きなものを頼め、お詫びだからいくらでも頼め」

本当にいいのかなと思いつつも、えいやっと今まで食べたこともない料理を頼んでみた。

サメにワニの唐揚げは思ったより美味しくて夢中で平らげた。

髭の男はニコニコしてそれを見守った。

「スタッフから聞いたけど、受けは失恋したんだって?」

「失恋したんじゃないです、二股かけられた挙げ句に振られたんです!」

一応付き合ってたんだぞ! とアピールして気持ちが滅入った。

せっかく忘れていたのにと怒りたくなる。

「悪かったよ。で、その後は誰かと付き合わないのか?」

「誰でもいいわけじゃないし……」

「そうか。なら俺はどうだ?」

「あんたおっさんだろ。それにすぐ飽きて捨てそう」

「ひどいな」

髭の男は笑って、すぐに真剣な顔をした。

「結構本気なんだけどね。しかも執着心はそれなりに強いし、恋人にはめっぽう甘いんだが、それでもだめか?」

あまりに真剣で驚いたが、嫌な気はしなかった。

「お試しなら……」

「絶対に惚れさせるから覚悟しろ」

顔が赤くなった。

また頭を撫でられた。

髭の男の家に連れて行かれ、ベッドに押し倒された。

「……念のため聞くが、成人はしてるんだよな」

「バカにすんな! もうあんたやだ!」

「からかったわけじゃないんだ。やっちまったら絶対離せる気がしないんだ。本当にいいんだな」

念押しされ、恥ずかしかったが頷いた。

大人のテクニックは受けをすぐさまグズグズにしていく。

前の恋人との行為が子供の遊びに思えるくらい濃厚で、感じすぎてわけがわからなくなった。

しがみついていないと変になりそうで必死に髭の男にしがみついた。

髭の男が一回いくまでに何回もいかされた受けは、内腿をピクピクさせてしまうほどで、何か言われても意味がわからなかった。

当然一回で終わるはずもなく、気がつけば翌朝でベッドに一人だった。

見回しても髭の男の姿がない。

初めての朝に一人にするとかありえないとプンプン怒っていると部屋のドアが開いた。

「……あんた、誰?」

「ひどいな、お前の恋人だろ?」

「うそっ、こんなに若くねーし!」

「ひどいな」

ヒゲを綺麗に剃った姿に驚いて、真っ赤になる。

すっごくかっこいいとか反則だと叫んでベッドに潜った。

ドキドキしているのを隠そうとしているのに布団をはぎ取られてしまう。

「……なんで剃ったんだよ」

「そりゃ若い恋人におっさんって言われないためだな」

「……卑怯者」

「なんだ、好みだったのか、この顔。だったら早く剃っとけばよかった」

ベタベタ触ってきて、若い受けはその気になってしまってまた気持ちよくされてしまう。

それから受けがバイト休みの日はいつも二人で過ごすようになった。

高そうな車で大学に迎えにくるし、高いものを食べさせようとしてくる。

そんなに甘やかすなと言いたいのに、嬉しそうにしているもんだから言えなくなる。

振ったくせに元恋人がやってきて幸福のお裾分けしろと集ってくるようになって迷惑するし、新しい彼氏から恨まれるしで二次被害はあるものの、溺愛されているのがわかるから拒めない。

「今日バイト休みでデートだろ。いいもん食うんだだったら俺もつれて行けよ」

構内から付きまとってくる元恋人を振り切ろうとするのに体格差で出来なくて泣きそうになっているところに、いつものように高そうな車でやってきた恋人に見つかってしまう。

「どうしたんだ、受け?」

「あっ、俺受けの友達です。いいところで食事するからって誘われたんですよ」

図々しい物言いに慌てて首を降ったら、「へえ。でもごめんね、デートだから遠慮してくれないか」とスマートに断ってくれたのにホッとする。

「あれは誰だ?」

車に乗り込むと剣呑な声で聞かれた。

「元カレ。付きまとわれて辟易してた」

本当に嫌そうにすると「そっか」と頭を撫でてもらって気持ちが浮上する。

都内ばかりのデートなのに、その日はそのままあの海に連れて行かれた。

「ここは?」

「本宅。ここに誰かを連れてくるの初めてだ」

すぐに裸にむかれ立ったままされてしまう。

「嫉妬してるの、わかってるのか?」

「わかった、わかったから許してぇ……やだっでちゃっ!」

「もっと危機感を持ってくれ、そうじゃないと気が気じゃない!」

嫉妬や苛立ちをぶつけられているのに受けは嬉しかった。

しかも終わってシャワーで綺麗にしてもらってから用意してもらったご飯を食べているときに「このままここに閉じ込めたいな」なんて言われて、怖いのに嬉しいと思ってしまった。

「いいよ、閉じ込めて」

「バカ、大人を煽るな。明日も大学なんだろう」

「休む。どうせもうすぐ冬休みだし……バイトあるけど」

「バイトは休め、俺から店長に連絡しておく」

「特権乱用すぎ」

「そりゃオーナーだからな」

イチャイチャして甘やかされて、ベッドに入ればめちゃくちゃにされてと、受けは自分が恋人に溺れていくのがわかった。

年上で頼りがいがあって、でも時々子供みたいに拗ねるしからかってくる恋人が。

海の男集団とはサーフィン仲間で、紹介してもらった。

彼らも受けのことを覚えていて、「手を出すの早いだろう!」とからかってきた。

「ストーカーしたのか?」

「うちの店のバイトに来たんだよ。もう運命だね」

恥ずかしいことを平気で言う恋人に、受けのほうが恥ずかしくなってしまう。

彼らがサーフィンで腕を競っている間、受けは浜辺でそれを見守っていた。

そこにやってきたのはあのナンパな男たちだった。

「ねえ一人? 暇なら俺達と遊ぼうよ」

受けのことを覚えていないのか同じ誘い方だ。

「連れがいるから結構です」

はっきり断っているのに男たちはニヤニヤして腕を引っ張ってくる。

抵抗しても小柄で細身の受けは敵わなくて、そのまま引きずられていった。

連れ込まれたのは海の家の名残のプレハブ。

「やめろよっ!」

「メンドーだから薬でキメさせようぜ」

男たちが怪しい薬を塗ってくる。

嫌なのに塗られたところから熱くなっていく。

「やだ、やめろっ……助けろよぉ髭ぇ!!」

受けは何度も恋人の名前を呼んでは悪態をついた。

服を剥ぎ取られてあちこち触られて、悔しいのに気持ちよくなってしまう。

もうヤダと涙を流せば、プレハブが壊れる勢いの衝撃に建物が揺れた。

四方八方から蹴られ、男たちもビビり始める。

「壊されたくなかったらここあけろや!」

恐ろしい怒声に男たちは逃げ出そうとしてすぐに捕まった。

「逮捕な」

海の男の一人がそう言ってすぐに電話して警察を呼んだ。

恋人もすぐ入ってきて抱きしめてくれた。

「なんでもっと早く来てくれねーんだよぉばかぁ」

「ごめんな、怖い思いをさせて本当にゴメンな」

助けてもらったのが嬉しいのに怖かった記憶が勝って暴言を吐くのに、恋人はひたすら謝るばかりだった。

「なんか薬、使ったらしい。家に連れ帰ってやれ」

そのまま連れ帰られた受けは、どこに触れても気持ちよくておかしくなった。

シャワーの刺激にすら感じていってしまう。

「こんなのやだぁ恋人が気持ちよくさせてよぉ」

泣きながらしがみつくと「大人の理性を試すな! ああ、くそっ!」と悪態をついて抱いてくれた。

気持ちよくて嬉しくて、受けも溺れてしまう。

薬の効果が切れてようやく正気に戻った受けに、「危なすぎて閉じ込めないと安心できない」と恋人が言い始めた。

「こんなのめったに起きないし」

「お前は自分か可愛いんだってちゃんと自覚してくれ、頼む」

懇願してくる恋人が嬉しくて抱きついた。

「そんなに心配なら閉じ込めろよ」

「言われずとも」

恋人の腕に閉じ込められ幸せを感じるのだった。


おしまい
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