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書籍化記念

柾人が嫉妬をした夜は9

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「や……だぁぁっ、もぉ……おねがっ」

 淫らに腰をくねらせ、嫌だと言葉に乗せても上気した肌はもっと確かな刺激をくれと言っているようで、柾人も己の情欲をひたすら押さえつけ可愛がることに専念する。

「言ってくれないとわからないよ。どうして欲しいんだい」

 恥ずかしがり屋な恋人はあまりおねだりを口にしないとわかっていて、けしかける。

 未だに求めるのは柾人からで、それが少しだけ不満でもあった。

 今回のプレゼンのためにずっと家でも仕事をしていたのは、まだ若い朔弥から求めて欲しくて意地になっていた部分もある。

 彼に愛されている実感はあるが、もっと欲してもらいたいと思うのは強欲だろうか。

 散々指で弄った胸の飾りを落ち潰し、同時に口の中にあるのを少し強めに噛んだ。

「やぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 くねらせていた腰が何度も跳ね上がり、数秒強張った後にマットレスに沈んだ。

 ニヤリと笑う。

 一度も触れられることなく遂情するのは久しぶりだろう朔弥の顔を堪能するために、散々苛んだ胸から顔を離した。

 上気した頬に閉じることのできなくなった赤い唇。その奥にちらりと覗くもっと赤い舌。そして涙を滲ませてとろりと溶けた眼差し。仕事中の怜悧な雰囲気はそこになく、初めて会った頃のように守りたいと切望するほどに庇護欲を掻き立てる表情だ。あの頃と違うところがあるとするのなら、艶めいた眼差しだろう。色情を纏う濡れた目が柾人をじっと見つめ、その先を促している。

 いつもであれば煽られて彼の身体を貪るのだが、今日だけはそうしたくはなかった。

 本当に彼に愛されていると、彼から求められていると、物理的にも感覚的にも感じたくなる。

 目の前にある赤く熟れた胸の飾りをまた口に含もうとして、朔弥が柾人の頬を包んだ。震える指が引き寄せる。

「ひどいです……」

「どうしてだい? 私はもっと朔弥を気持ちよくさせたいだけだが」

「うそ……意地悪して楽しんでる……」

 その通りだが、大人のずるさで是とは言わない。はぐらかして再び感じる場所だけを可愛がろうとするが、細い指に引き留められる。長めの睫毛に絡まった涙まで見える距離に引き寄せられ、愉悦に熱くなった吐息がかかる。少しだけ頭を上げて唇を重ねてきた。

 啄むだけのキス。

「今日の柾人さんは……意地悪で……わがままです」

「朔弥の方が意地悪と思うが? 私にあれだけ我慢をさせて」

 頑是無い子供と同じだとわかっていても、堪えられない。

 朔弥の手がスラックスのベルトに伸ばされた。
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