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第二章

4 ☆

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「はっ……もぅぃく!」

 ソファの肘掛けに手をつきながら、朔弥から逼迫した啼き声が放たれるのに心地良く耳を傾けながら、腰を強く打ち付けた。

「ゃぁぁぁぁぁあっ」

 敏感でどんな愛撫にも溶けてしまう身体はその激しさに遂情し、蜜を飛ばした。昨夜もたっぷりと愛し合ったのに、今にも泣き出しそうな顔を見てまた啼かせたくなった。

(相変わらず自覚がないな)

 そんな表情をすれば男の嗜虐心を煽る。もっと泣かせて啼かせて、自分だけに縋り付かせたくなってしまう。そんな危うさを秘めているのだと自覚して欲しいと願う反面、柾人の前でならいくらでも見せて欲しいと切望する。

 会社の上層部なら誰もが知っていることを話して、あんなにも悲しそうな顔をされるとは思いも寄らなかった。

 柾人にとってはもう遠い過去の話だ。時折思い出してはもう顔も忘れてしまった両親に詫びるくらいで、たいした感情はなかった。

 朔弥は優しい。柾人の過去を語れば自分のことのように傷ついてはこちらを慰めようとしてくれる。その想いにつけ込んでいいようにしてしまう悪い大人の部分をそっと隠す。

 ガクガクと痙攣する足が今にも崩れ落ちそうだ。

 ヴィラに戻って寝室に入るのももどかしく、玄関で深いキスをしながらようやく辿り着いたリビングで二人は互いを求めて腰を揺らめかせた。

 出張から戻ってきた次の週は忙しくあまり恋人としての時間を取ることができなかった申し訳なさと、一秒でも長く抱いていたい欲とが綯い交ぜになった高揚感が、未だに落ち着かない。

 どこまでも甘やかしたいのに、欲望のまま犯し続けてしまいたい感情がすぐに勝ってしまう。

 達った敏感な身体がきついくらいに締めつけては、妖しいまでに蠢く内壁の絡まりに、持って行かれそうになるのをぐっと堪えた。

 達くのは、この清麗な恋人をもっと甘やかしてからだ。

 思っていることをあまり口にしない朔弥が、ほんの少しだけ咲子に嫉妬したような表情を見せてくれたことで舞い上がっている柾人は、細い腰を引き寄せた。

「ぁぁっ……まだだめぇぇ」

 敏感な身体がまた跳ねた。欲望が抜けないよう倒れそうになる上体を抱え、下から突き上げながら触れられてないのに尖った胸の飾りを苛んだ。

「ひぃっぁぁぁぁっ!」

 爪先立ちになった朔弥が必死で腕に縋り付きながら、柾人が与える愉悦に翻弄されていく。この瞬間が一番幸福を感じると言ったら、朔弥はどんな表情をするだろうか。

 自分にしか助けを求められない彼が、ただただ愛撫に翻弄され欲望のままに蜜を吐き出していくのを味わうのは、柾人の歪んだ欲望を満たしてはこの上ない快感だ。

 このままずっと抱いていたくなる。

 僅かに腰を前後に揺らしただけで甘い啼き声と共に涙が零れ落ちる。感じすぎると朔弥の涙腺はあっけなく決壊し、愉悦の分だけ涙を見せてくれるのが堪らない。

 昨夜も散々可愛がったせいでなかなか勃たない分身が透明な蜜を垂らしながら揺れているのを見れないのが残念だ。室内すべてが鏡だったら、どんなに感じきった表情もつぶさに見られるだろうか。

 ピンと胸の飾りを弾けばまた身体が跳ねた。

「ぁっんん! だめぇぇぇ」

 啼き言すら愛らしい。鍛えられた柾人の腕に爪を立てながら感じきってる朔弥をもっと啼かせたくて、容赦なく快楽を与えていく。すっかり柾人とのセックスに慣れた身体は、きつく締め付け搾り取るような動きをして柾人を翻弄していく。

「ぁっ……ぉねがっぉねがぃ……だからぁぁぁ」

「どうして欲しいんだい、教えてくれないか」

 訊ねながらも、答えられないよう腰の動きを激しくしていく。

「だめっ……まぁぉさっ、ゃらせてぇぇぇ」

「なにをだい?」

「オレにっさせてぇ」

 今までになかった可愛いおねだりに、ゴクリと唾を飲み込んだ。

 動きを止め強く細い身体を抱きしめる。薄い腹の上から自分の形を確かめるように少しだけ強く押せば、内壁がねっとりと絡みついて搾り取る動きを始める。

「ゃっ!」

「こうされるのは嫌なのかい」

「オレが、気持ちよくさせるから……ぬいてぇぇ」

 気持ちよすぎて涙を流す可愛い顔がこちらを見る。それだけで白旗を揚げた。美しく可愛い恋人の頬にキスを落としてから、心地良い中からずるりと欲望を抜いた。

「ぁんっ」

 それだけでこちらを煽るような可愛い声が漏れる。もう一度貫いてどこまでも啼かせたいのをぐっと堪え、朔弥に導かれるままソファへと腰掛けた。

「柾人さんはなにもしないでください」

 いつになく念を押してくる朔弥は、柾人の膝に乗り上げると、肩を強く掴んだままゆっくりと腰を下ろしていった。

「さく、や?」

 今までにない積極的な彼の行動に、心臓が大きく高鳴った。自ら腰を振ることは今までもあったが、それは柾人が導いたからで、朔弥が自分から積極的になってしたことはなかった。

「動かないでください……んんっ」

 まだ開いたままの蕾がゆっくりと先端を飲み込んでいく。先ほどまで最奥を犯していたから苦しくはないだろうが、朔弥はギュッと眉間に皺を寄せながら、緩やかな速度で少しずつ飲み込んでいった。

 だが、痙攣した膝は朔弥の身体を支えてはくれなかった。

 半分まで飲み込んだところで体勢が崩れ、一気に最奥まで飲み込んでいく。

「ひぃっ」

「ぐっ……大丈夫か、朔弥」

「ん……ふかぃ……ぁぁっ」

 柾人にすっかり慣れた内壁は、また理性を瓦解させるようにねっとりと絡みついては蠢く。いつになく興奮した柾人はグッと奥歯を噛み締めながら達きそうになるのを堪え、愉悦に溶けた朔弥の表情を存分に眺めた。

 まつげに絡まった涙が今にも流れ落ちそうだ。

 手を乗せた太ももは、感じすぎてピクピクと痙攣を繰り返し、それが僅かな振動となり繋がっている柾人を悦ばせる。感じすぎて動けずにいる朔弥は何度も荒い呼吸を繰り返し、僅かに瞼を上げると泣きそうな表情のまま無理矢理に笑顔を作った。

「オレ、柾人さんのこと、本当に好きだから……うごかないで、オレだけを感じて」

 ふぅっと細く長い息を吐き出した後、朔弥がゆっくりと腰を動かし始めた。

「ぁぁっん! き……もち、いい?」

 淫らに動きながらまた眦に涙を溜め、訊ねてくる。

「あぁ……、朔弥が私の上で淫らになっているというだけで興奮する」

「……うれし……ぁぁぁぁっ!」

 その言葉を体現したようにまたドクンと欲望に熱が集まり大きくなる。敏感な内壁がそれを感じ取って朔弥を啼かす。

「淫らな君は、誰よりも綺麗だ」

 薄い唇が少しだけ口角を上げ、それから大胆に踊り始めた。

「ぁぁっいぃ! まぁぉさっすきぃぃ」

 自ら感じる場所を柾人の欲望で擦りながら、何度も何度もその口から啼き声と共に好きだと伝えてくる。

「あぁ……私も、愛してる」

 ポロポロと涙を零しながら、朔弥が嬉しそうに笑顔を浮かべる。その美しさに柾人は見惚れ、言葉が発せなくなった。綺麗なのは誰よりも知っている。笑顔が魅力的なのも。だが淫蕩な行為の最中での、どこまでもこちらを慈しむ表情は、誰もに救いの手を差し伸べる聖母のようであった。

 堪らなかった。

 柾人はその頬を包むと、自分のものであるのを確認するように激しく唇を貪った。

「んんっ……ぁっ」

 深いキスに、朔弥は舌を伸ばし自らを差し出してくる。それを思う存分味わいながら、朔弥が与えてくれる愉悦を貪っていく。感じる場所を擦られて悦ぶ身体はどこまでも淫らに快楽を追いかけているのに、慎ましい心はすべてを柾人に預けようとしている。

 そのアンバランスさが柾人の脳までもを焦がしていった。

「んんっん! らめ、ぃく!」

 僅かに離れた唇が絶頂の瞬間を告げると、間を置かずして朔弥の分身が柾人の腹を叩くようにしながら蜜を吐き出した。きついくらいの締め付けに、柾人も堪らず最奥に蜜を吐き出していく。

 潤み蕩けた眼差しが柾人の肩へと隠されていく。この世でもっとも美しい恍惚とした表情をもっと堪能したくて朔弥を呼ぶ。

「達ったばかりの綺麗な顔を見せてくれないかい」

「やっ……はずかしい」

「私にだけ、見せて欲しい」

 乞えば、恥ずかしがり屋な恋人は頬を染めながら、まだ蕩けたままの表情を見せてくれる。

「愛してるよ、朔弥……ずっと私の側にいてくれ」

 懇願しながら、またふわりと微笑む頬に手を伸ばし、涙の跡を拭っていく。唇にまで流れたそれを拭おうとして、キスで濡れた薄い唇が柾人の親指を食んだ。赤い舌がペロリと指先を舐めくすぐってくる。そうしながら少しずつ誘うように吸い込み、甘く噛んでくる。

「こら、そんなことをしたら午後はベッドから下ろしてやれなくなる」

「んっ、もっろまぁぉさんろぃもひよぃいる(もっと柾人さんを気持ちよくする)」

 聖母が淫靡に誘ってくるそのギャップに平伏するしかなかった。

「あっ!」

「ではたっぷりと愛し合おう……ベッドで」

 朔弥と繋がったままソファから立ち上がれば、細い足が慌てて腰に絡みついてきた。昨夜二人がぐちゃぐちゃに乱したベッドをまた形をとどめないほど乱しながらどこがどちらの身体が分からなくなるほど互いを貪った。
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