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終章1

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 ソーマは今、王城の接見の間に立たされていた。

 物々しい雰囲気でこの国を動かしている面々がずらりと立ち並び、中央の数段高い場所に設置された豪奢な椅子には、髭を生やした威厳ある男が座っている。その隣に見知った顔がなければ、ソーマはすぐに逃げ出していただろう。

 ソーマの両隣にはゲオルクとザームエルが、その細い身体を守るように立っていた。

「話は聞いた。第五王子と勇者とで、先日の竜をこの者の中に封じたというのだな」

「はっ、左様にございます。この者が死せぬ限り、銀色の竜が再び蘇ることはございません、陛下」

 王城の礼儀に詳しいザームエルが受け答えをする。

「ではこの者を永久に地下牢に閉じ込めるべきです、陛下!」

「それで自死されては敵わん。ここは我が館に招き、丁重に持て成そう」

「何を言っている。これほどまでに危険な者を王都どころかこの国に置いてはならん。すぐさま追放せねば」

 お偉い人々が口々に好き勝手言っているが、ソーマはそれをぼんやりと、だが神妙な顔をしながら聞くしかなかった。

 なぜこうなったのだろうと呆れながら。

 事の発端は、三人が共に生きるのはいいが、ソーマの容姿が変わらないことに周囲が疑問を抱きはしないかと懸念したことだった。

 王都のみならず各地で有名になっている勇者のゲオルクに、王都を竜から守った第五王子のザームエルだ。その隣にいる人間がずっと変わらない姿をしていたら、周囲は変に思うだろう。

 だからと言って三人で各地を転々とする生活もできるはずがない。

 悩んだ三人は、この国でもっとも有能な策謀家の元を訪れた。他でもない、宰相コルネリウスその人である。

 まず三人が恋仲になったことを報告したときは、応接室が壊れるんじゃないかというほど大暴れし大変だったが、そこはユリウスの計らいでなんとかなった。色々と大変だったが。

 だが、自分の死後、息子であるソーマが平穏に暮らせるようにするためと話すと、熟考した後、二人を受け入れある提案をした。

 その案とは、周囲がソーマが不死であっても仕方ないと思わせることだった。

 天命を授かった王子と勇者は二人で竜の討伐に向かい、途中で会った賢者により、竜の封印方法を授かる。それ以外に竜を倒す術はないと伝えたと同時に、その賢者は光り輝き消え、そこに残ったのがこの青年であった。三人は竜の住処へと向かい、教えられたとおりに竜を封じたというシナリオだ。

 ベタである、ベタ過ぎである。RPGのお約束シナリオそのままであった。

 さらに信憑性を増させるために、コルネリウスの指示のもと、ひと月ゲオルクとザームエルは竜の洞窟に籠らされ、そして意図的にぼろぼろの状態でソーマを伴って帰還する演出まで用意した。そして今、帰還の報告のために王の前に三人でいる、という運びだ。

(本当にこんな話信じちゃうのかな、この人たち)

 だが話の流れは変なところに行き、なぜかソーマの身柄を誰が引き受けるかになっている。

 なんか皆が皆して下心があるようなないような、訳の分からない展開だ。

(おかしいな……魔法は使ってないから魅了してないはずなんだけど……)

「こんなどこの馬の骨ともわからぬ者を王城になど置いてはなりませんっ!」

「左様にございます。この者は我が一族が監視いたします!」
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