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本編94
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二人とも再会した時の、なんとも言えないあの顔を見てしまったら、ソーマにはどちらかを選ぶことなんてできない。
(どちらも選べないなんて、傲慢だ僕……)
アニメの悩む主人公に怒ってたはずなのに、いざ自分がその立場になって、どちらも選べないことの苦しさを思い知った。どちらを選んでも、どちらかを悲しませてしまう。
二人を悲しませたくはない。
けれど確実にどちらかが悲しむのだ、選ぶということは。
長く一緒にいたゲオルクの隣は居心地がいい。
短かったが、それでも濃厚な時間を共にしたザームエルの腕も離したくない。
それぞれがソーマに向ける優しさや愛情が、嬉しかった。
「僕、どうしたらいいんだろ……」
ソーマは何度も寝返りを打ちながら悩み続けた。
結論が出ないままいつの間にか寝てしまい、使用人によって起こされるまで夢の中でも悩み続けうなされていたらしい。
朝の支度を手伝ってもらいながらぼんやりとしたまま食堂に行けば、悩むきっかけを与えた二人が、楽しそうに朝食を摂っていた。
「おはよう、ソーマ。よく眠れたかい」
昨夜はあんなに苦しそうな声を上げていたのに、なぜそんなに肌艶よく爽やかに挨拶できるのだろう。実の親ながら恨めしくなる。
対して、コルネリウスはソーマをじっと見つめて、なんて声をかけていいのか分からないといった風だ。
だから少しだけソーマから歩み寄る。
「お父さんたち、おはよう」
引いてもらった椅子に腰かけ、運ばれた食事に手をつける。
「おはよう、ソーマ。昨夜は早く帰ってきたが会えなくて残念だ」
「せっかく早く帰ってくれたのに、ずっと寝ててごめんなさいお父さん」
お父さんと口にする度に、コルネリウスが能面の下でキュンキュンしてるとも知らず、緊張した顔に必死の笑顔を浮かべる。まったく実感はないが、実の父なのだから親しげに接しないとと必死になる。
二人のぎこちないやり取りを微笑ましげに傍観するユリウスは、思い出したように話を振った。
「二、三日前からやたらと第五王子から連絡が来てたよ。ソーマに会いたがってたけど、どうする?」
今ここでその話題に触れますか、産みの親よ。
「あ……そうなんだ」
ソーマは曖昧に笑った。未だ自分の中で結論が出ていない感情を持て余している状況で、果たして会ったほうが良いのか解りかねていた。ただ、ゲオルクもザームエルのことも、どうでもいいと放っておくことはできなかった。
世間一般的にそれは『情が移る』という感情なのかもしれないが、前世含めソーマの人生で、ここまで誰かのことを気になるのは初めてだった。だからこそ、どうしていいのかわからない。
「………会う、よ」
「それがいいと僕も思うよ」
ユリウスはそう答えて優雅に食事を口に運んだ。
今まで黙っていたコルネリウスが口を開いた。
「私は無理して会う必要はないと考えている。手の早いザームエル王子のことだ、ソーマに何をするかわかったもんじゃない」
(どちらも選べないなんて、傲慢だ僕……)
アニメの悩む主人公に怒ってたはずなのに、いざ自分がその立場になって、どちらも選べないことの苦しさを思い知った。どちらを選んでも、どちらかを悲しませてしまう。
二人を悲しませたくはない。
けれど確実にどちらかが悲しむのだ、選ぶということは。
長く一緒にいたゲオルクの隣は居心地がいい。
短かったが、それでも濃厚な時間を共にしたザームエルの腕も離したくない。
それぞれがソーマに向ける優しさや愛情が、嬉しかった。
「僕、どうしたらいいんだろ……」
ソーマは何度も寝返りを打ちながら悩み続けた。
結論が出ないままいつの間にか寝てしまい、使用人によって起こされるまで夢の中でも悩み続けうなされていたらしい。
朝の支度を手伝ってもらいながらぼんやりとしたまま食堂に行けば、悩むきっかけを与えた二人が、楽しそうに朝食を摂っていた。
「おはよう、ソーマ。よく眠れたかい」
昨夜はあんなに苦しそうな声を上げていたのに、なぜそんなに肌艶よく爽やかに挨拶できるのだろう。実の親ながら恨めしくなる。
対して、コルネリウスはソーマをじっと見つめて、なんて声をかけていいのか分からないといった風だ。
だから少しだけソーマから歩み寄る。
「お父さんたち、おはよう」
引いてもらった椅子に腰かけ、運ばれた食事に手をつける。
「おはよう、ソーマ。昨夜は早く帰ってきたが会えなくて残念だ」
「せっかく早く帰ってくれたのに、ずっと寝ててごめんなさいお父さん」
お父さんと口にする度に、コルネリウスが能面の下でキュンキュンしてるとも知らず、緊張した顔に必死の笑顔を浮かべる。まったく実感はないが、実の父なのだから親しげに接しないとと必死になる。
二人のぎこちないやり取りを微笑ましげに傍観するユリウスは、思い出したように話を振った。
「二、三日前からやたらと第五王子から連絡が来てたよ。ソーマに会いたがってたけど、どうする?」
今ここでその話題に触れますか、産みの親よ。
「あ……そうなんだ」
ソーマは曖昧に笑った。未だ自分の中で結論が出ていない感情を持て余している状況で、果たして会ったほうが良いのか解りかねていた。ただ、ゲオルクもザームエルのことも、どうでもいいと放っておくことはできなかった。
世間一般的にそれは『情が移る』という感情なのかもしれないが、前世含めソーマの人生で、ここまで誰かのことを気になるのは初めてだった。だからこそ、どうしていいのかわからない。
「………会う、よ」
「それがいいと僕も思うよ」
ユリウスはそう答えて優雅に食事を口に運んだ。
今まで黙っていたコルネリウスが口を開いた。
「私は無理して会う必要はないと考えている。手の早いザームエル王子のことだ、ソーマに何をするかわかったもんじゃない」
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