上 下
70 / 111

本編67

しおりを挟む
 一国の宰相としてその能力を得たいという想いと、存在を知ったばかりの可愛い息子が男に追いかけまわされるのを避けたい想いが葛藤している。この世界の勢力図を一変しかねない存在が我が子であると思うと、王都に連れていくのも躊躇われる。だが、コルネリウスはまだ会ったばかりのソーマに親愛を寄せていた。

 なぜなら、今のソーマは出会った時のユリウスにそっくりだからだ。

 姿形もだが、困った時の泣きそうな表情も、ザームエルに向けた怒った顔も、なにもかもが愛しい人に似ている。宰相という地位よりも、愛しいものを手元に置きたい男心が勝っていく。

「ソーマ。私はこの国の宰相だし、現在は侯爵という地位にいる。この国の中であれば君を守ることができる。どうだ、私と一緒にユリウスと三人で暮らさないか……その……親子で……」

 親子という単語になぜか顔が赤らんでしまう宰相であった。

「王都……でもここはどうすればいいの?」

「ソーマ。この竜王の館はもともと、竜族が子供を育てるための物なんだ。人に見つからずゆっくりと子供を育てるためのね。だからまだ妊娠もしていないのだったらどこにいても問題はない」

「本当? だったら僕、一度王都に行ってみたい」

 そしてあわよくば、この竜族の魔法が全く効かない女の子を探したい。

 竜族は人間の雌に嫌われる魔法がかけられているなんて、やっぱり信じたくないソーマであった。望みはあくまでも、童貞喪失。

 前世で果たせなかった夢をどうしても叶えたい。先っぽだけでもいいから……。

「では決まったな。ソーマ、君のその魔法は危険すぎる。王都では竜の姿になるのも、魔法を使うのも駄目だ。分かっているな」

「はい……あの、なんて呼べばいいのかな? やっぱり…宰相様?」

「いや、ここはぜひお父さんと呼んでくれ。君の実の父なのだから!」

「じゃあ……お父さん」

 呼ばれただけでコルネリウスはハートを射抜かれたのを感じた。ユリウスだけがこの世界にいればいいと思っていた彼であったが、最愛の人に似た血の繋がった息子というのもそう悪いものではない。むしろ可愛すぎて成人をとうに過ぎている息子なのに、幼い娘を相手にしている父の気持ちになる。この子に近づく男は全員殺処分だ。

「そう言えばコルネリウス、王子はどうしたらいいんだい。ここに残していくわけにはいかないからね」

「あぁそう言えばいたな、そんなのが」

 ソーマを前にしてしまえば、ザームエルなどどうでもよくなっているコルネリウスであった。

「国外にでも送っておいてくれ」

「いいのかい? でも彼もソーマの恋人だろう」

「なんだとっ! それは本当かソーマっ!」

「ぁ……その……えっと」

「ソーマのことを妃と呼んでいたじゃないか。聞こえていなかったのかい。それと、扉の前にいるのは幼馴染で……あれ、どっちがソーマの恋人なんだい」

 父よ、なぜこのタイミングでそんな質問をしてくる。言えるわけないじゃないか、どちらとも恋人じゃないが、どちらにもつい数刻前まで犯されましたとは。今も立てないのはその名残であると。

「一度に二人の恋人を持つ竜族はそうそういないよ。凄いな、ソーマは」

「ちっちがうよ! 多分二人とも魔法でそうなっちゃただけだよ」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

オークなんかにメス墜ちさせられるわけがない!

空倉改称
BL
 異世界転生した少年、茂宮ミノル。彼は目覚めてみると、オークの腕の中にいた。そして群れのリーダーだったオークに、無理やりながらに性行為へと発展する。  しかしやはりと言うべきか、ミノルがオークに敵うはずがなく。ミノルはメス墜ちしてしまった。そしてオークの中でも名器という噂が広まり、なんやかんやでミノルは彼らの中でも立場が上になっていく。  そしてある日、リーダーのオークがミノルに結婚を申し入れた。しかしそれをキッカケに、オークの中でミノルの奪い合いが始まってしまい……。 (のんびりペースで更新してます、すみません(汗))

若き王は側近の欲望に溺れる

彩月野生
BL
ある異世界の国にて。若い美しい王は側近に襲われ好きなように貪られてしまうが、身体は感じてしまい何度も絶頂してしまう。

【完結済】(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。

キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成) エロなし。騎士×妖精 ※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。 気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。 木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。 色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。 ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。 捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。 彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。 少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──? いいねありがとうございます!励みになります。

クソつよ性欲隠して結婚したら草食系旦那が巨根で絶倫だった

山吹花月
恋愛
『穢れを知らぬ清廉な乙女』と『王子系聖人君子』 色欲とは無縁と思われている夫婦は互いに欲望を隠していた。 ◇ムーンライトノベルズ様へも掲載しております。

俺のパンツが消えた

ルルオカ
BL
名門の水泳部の更衣室でパンツが消えた? パンツが消えてから、それまで、ほとんど顔を合わせたことがなかった、水泳部のエースと、「ミカケダオシカナヅチ」があだ名の水泳部員が、関係を深めて、すったもんだ青春するBL小説。 百九十の長身でカナヅチな部員×小柄な名門水泳部エース。パンツが消えるだけあって、コメディなR15です。 おまけの「俺のパンツが跳んだ」を吸収しました。

【BL・R18】可愛い弟に拘束されているのは何ででしょうか…?

梅花
BL
伯爵家長男の俺は、弟が大好き。プラチナブロンドの髪や青色の瞳。見た目もさることながら、性格も良くて俺を『にーに』なんて呼んだりしてさ。 ても、そんな弟が成人を迎えたある日…俺は… 基本、R18のため、描写ありと思ってください。 特に告知はしません。 短編になる予定です。地雷にはお気をつけください!

騎士団専属医という美味しいポジションを利用して健康診断をすると嘘をつき、悪戯しようと呼び出した団長にあっという間に逆襲された私の言い訳。

待鳥園子
恋愛
自分にとって、とても美味しい仕事である騎士団専属医になった騎士好きの女医が、皆の憧れ騎士の中の騎士といっても過言ではない美形騎士団長の身体を好き放題したいと嘘をついたら逆襲されて食べられちゃった話。 ※他サイトにも掲載あります。

【完結】異世界から来た鬼っ子を育てたら、ガッチリ男前に育って食べられた(性的に)

てんつぶ
BL
ある日、僕の住んでいるユノスの森に子供が一人で泣いていた。 言葉の通じないこのちいさな子と始まった共同生活。力の弱い僕を助けてくれる優しい子供はどんどん大きく育ち――― 大柄な鬼っ子(男前)×育ての親(平凡) 20201216 ランキング1位&応援ありがとうごございました!

処理中です...