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122『600人6交代にしてやる』

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鳴かぬなら 信長転生記

122『600人6交代にしてやる』信長 




 数え直すと、船内には600人の浦島太郎がいる。

 艪口は両舷合わせて100なので、6交代制にした。

 予定では3交代のつもりだったので、漕ぎ手の浦島太郎たちも櫂を漕ぐ手に力が入る。



 そーーれ! よいやっさ!!  そーーれ! よいやっさ!!



 一人の時は、さんざんプータレていた浦島太郎だが、人数が増えて俄然、意気軒高になってきた。

 長篠の戦を思い出す。

 信玄はくたばったものの、武田騎馬隊は力も強く意気盛ん。その軍団は、五里の彼方からでも半端ではない圧を感じさせ、歯向かう者は、その圧に気おされて武田軍の姿を見る前に膝が笑って立てなくなったという。

 家康なんか、三方ヶ原でさんざんに打ち負かされ、僅かな家来たちに守られ、ウンコ漏らしながら逃げ帰った。

「殿! あまりの恐ろしさにクソを漏らされましたな!?」

 三河武士は遠慮が無い、鞍壺のウンコを指さし、のどちんこ剝き出しにしてカラカラと笑う。

「バ、バカを申せ! それは、腰の味噌が鞍にこすれて付いただけじゃ(#`O´#)o!」

 三河の田舎者は塩分補給の為に腰に味噌袋を下げて戦にいく。それに掛け、ギリ、ギャグにして面目を保ちおった。

 大河ドラマでもやってるから、よく知られた家康のエピソードだ。



 あのエピソードには裏がある。



 子どもの頃、家康はうちに人質になっていた時期がある。子どもの頃は神経質なやつで、一緒に遊んでいて、よく腹を壊していた。

「お兄ちゃんがイジメるからだよ!」

 市が口を尖らせて文句を言ったのも懐かしいがな。

「竹千代、そんなことでは、元服して戦に行くようになったら戦場でウンコ漏らすぞぉ」

「え、え、どうしよう(;゚Д゚)」

 マジにビビる家康は情けなかったが、あいつ、家庭環境も相当だったから、将来のことを思って知恵を付けてやった。

「そういう時はな『腰に付けた味噌が鞍に付いただけじゃ!』と言っておけ」

「でも、味噌とウンコじゃニオイが違う」

「ウンコと言うからじゃ。クソと言っておけばミソとは一時違いであろうが」

「さ、さすがは信長君!」

「俺のことは『信長様』と呼べ」

「で、でも信秀様が『兄弟と思って付き合え』と……」

「親父は、いまの俺しか見ておらん。いずれは天下を取って竹千代も家来の一人じゃ、主君に『信長君』はありえないだろうが」

「な、なるほど」

 すると、市が前歯の抜けた顔でケラケラ笑いおって……え、なにを思い出に浸っているんだ?

 どうも、浦島太郎の女々しさが伝染ってしまったか(-_-;)。

 そうだ、その浦島太郎。

 長篠の戦の我が軍団と同じだ。武田と聞くだけで震えの来るやつらだったが、鉄砲三千丁の三段構えを教えてやると、ウンコも漏らさずに立派に戦いおった。

 人は使いようとモチベーションの持たせ方で変わる。

 

 そーーれ! よいやっさ!!  そーーれ! よいやっさ!!



 600人の掛け声は迫力がある。600人……こいつ、かなりの引きこもりであるとは思っていたが、600人=600年とはな。



 そんな調子で二昼夜、まだ二日は掛かるだろうと晩ご飯のメニューを考えていた。

 あ、船中での飯は美味いぞ。

 なんといっても、浦島太郎は漁師だ。漕ぎ手の当番が当たっていない時は、甲板で調練をやるんだが、それでも一度にはできないので、手空きの浦島太郎たちに魚を獲らせてご飯を作らせる。

 都合四日となると、4×4=16、16回のご飯だ、楽しみだろうが!

 それがだ、海の上に居るとめっぽう腹の空くものでな、夜食とお八つもあるんだぞ!

 鬼ヶ島では激戦が予想される。しっかり食っておかなければな。しっかり食うためには美味いものを食わなくてはならん(^▽^)。

『酒も飲みたいなあ(^_^;)』『わたしは食べ過ぎたから鯛茶漬けがいい』

 思金神もアッチャンも、ご飯の時は実体化する。

 勾玉や剣に変態していても食べられるらしいが、それでは味気ないらしい。

「よし、三人で献立を考えよう!」

『『考えよう!』』

 その気になったところで見張りの浦島太郎がメガホンで叫んだ。



「鬼ヶ島が見えるぞおおおおお!」



 予定よりも二日早く鬼ヶ島決戦が始まろうとしていた!

 

☆彡 主な登場人物

織田 信長       本能寺の変で討ち取られて転生  ニイ(三国志での偽名)
熱田 敦子(熱田大神) あっちゃん 信長担当の尾張の神さま
織田 市        信長の妹  シイ(三国志での偽名)
平手 美姫       信長のクラス担任
武田 信玄       同級生
上杉 謙信       同級生
古田 織部       茶華道部の眼鏡っ子  越後屋(三国志での偽名)
宮本 武蔵       孤高の剣聖
二宮 忠八       市の友だち 紙飛行機の神さま
雑賀 孫一       クラスメート
松平 元康       クラスメート 後の徳川家康
リュドミラ       旧ソ連の女狙撃手 リュドミラ・ミハイロヴナ・パヴリィチェンコ  劉度(三国志での偽名)
今川 義元       学院生徒会長
坂本 乙女       学園生徒会長
曹茶姫         魏の女将軍 部下(備忘録 検品長) 曹操・曹素の妹
諸葛茶孔明       漢の軍師兼丞相
大橋紅茶妃       呉の孫策妃 コウちゃん
孫権          呉王孫策の弟 大橋の義弟
天照大神        御山の御祭神  弟に素戔嗚  部下に思金神(オモイカネノカミ)

 

 
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