5 / 192
5『妹と向かい合う』
しおりを挟む
鳴かぬなら 信長転生記
5『妹と向かい合う』
そこに座れ。
リビングの床を指し示すと、一(いち)は大人しく正座する。
俺は、リビングから続く六畳に座る。むろん胡座だ。
リビングのソファーに座らせてはツンツルテンのスカートの中が見えてしまう。
いまの俺は女だから、見えても構うことは無いのだが、俺の美意識に反する。
それに、六畳の部分は畳の分だけ高くなっていて、図らずも上段の間になっている。
位置関係は人間関係を現す。
不肖の妹には、それを示すところから始めなければならない。
一も呑み込んだので、素直に正座している。
「何故だ!?」
「追ってきた」
「何故死んだ?」
「あんたが死んだあと、勝家の嫁に出された。勝家の城を猿が攻めてきた。三人の姫を逃して、勝家と共に死んだ」
「なぜ逃げなんだ?」
「逃げたら猿しかおらん」
「猿は嫌いか?」
「嫌い」
「猿は、一に惚れておる。意に添わんことはせん」
「猿と同じ空気を吸うのも嫌」
「……茶を、いや、コーヒーを淹れてくれ」
「……うん」
妹でなければ切っている。
『タメ口だから?』
また熱田大神が出てきた。
お前の居所は、庭の祠だろ。
『いっちゃんのことは、わたしの責任でもあるから』
好きにしろ。
『心で喋ること覚えたんだ(^▽^)』
妹の前だ。
『やっぱ、妹には優しいんだ』
祠、叩き壊すぞ。
『はいはい、もう黙るから。あ、冷蔵庫にイチゴケーキ入ってるから。じゃね』
であるか。
「砂糖は四つ。冷蔵庫のイチゴケーキも出せ……いや、自分で出そう」
「糖尿になるよ」
「いまの俺は17歳だ」
「女子高生の信長だなんて、キモイんですけど」
おお、冷蔵庫の中は他にもスイーツがいっぱい!
これだけでも転生した甲斐があるぞ。これ……と……これと(^▽^)
「二つも!?」
「食べずに死ねるか(^^♪」
「って、もう死んでるし」
最初にモンブランを平らげ、砂糖四つのコーヒーを飲みながらイチゴケーキを食べるのだ。
「キモイと言ったか」
「う、ううん(聞こえてたんだ(;'∀'))」
「一こそどうした。なぜ、女のまま転生しておる」
「天下なんて、どーでもいいし。でも、熱田大神が転生するならあんたの妹って枠しか無いってゆーし」
「キャラが違いすぎるが」
「いい子ぶるのは止めたの!」
「ほう……」
「前世のあんたは、好き放題やってたじゃん。今度は、あたしがやるんだ!」
「……………」
「……………」
「……………」
「な、なんか言ったら!」
「……食っている」
「もう!」
「そういうかぶき方をしていたのは桶狭間までだぞ」
「い、いいじゃん。いまのあたしは、こーゆーの好きなんだから!」
「……………」
「……………」
「……………」
「な、なんか言ったら!」
「……食っている」
「もう!」
「二回目だ」
「な、なにが!?」
「まあ、好きにしろ」
パンパン
「なに、手叩いてるの?」
「手を叩いたら、誰が出てくるのかと思ってな」
『はいはい、お呼びかしらあ?』
「あ、熱田大神!?」
「一にも見えるのか?」
『あんたたち仲良くなったみたいだし。で、用件は?』
「『一』では馴染めん、元々の『市』にしろ」
『うん、いいわよ。もともとドッキリのつもりだったし』
「「ドッキリか!?」」
『うん』
「それから、こいつは妹では無くて女中という設定にしろ」
「じょ、女中!?」
「この時代はお手伝いさんであったか」
「お手伝い!?」
「いっそ、メイドがいいか。うんメイド服が似合いそうだな……」
「いやだ!」
「では、人間に化けた宇宙人」
「……………」
「妖ではどうだ。熱田大神といっしょに祀ってやるぞ」
「無理!」
『妹というのはデフォルトなんだけどなあ』
「こいつは、妹を辞めたいそうだから、なんとかしてやれ」
「あ、あの……」
「そうだ、従姉妹がいい。そうしろ」
『仕方ないなあ……ここ変えると、他の所で歪が出てくるんだけど』
「い……市の頼みだ、聞いてやってくれ」
『分かった。じゃね……』
「…………………………………」
「な、なによ」
「……イチ」
「え?」
「イチ……ゴケーキ、食べないんだったら俺にくれ!」
ズコ
☆ 主な登場人物
織田 信長 本能寺の変で打ち取られて転生してきた
熱田大神 信長担当の尾張の神さま
織田 市 信長の妹(兄を嫌っているので従姉妹の設定になる)
5『妹と向かい合う』
そこに座れ。
リビングの床を指し示すと、一(いち)は大人しく正座する。
俺は、リビングから続く六畳に座る。むろん胡座だ。
リビングのソファーに座らせてはツンツルテンのスカートの中が見えてしまう。
いまの俺は女だから、見えても構うことは無いのだが、俺の美意識に反する。
それに、六畳の部分は畳の分だけ高くなっていて、図らずも上段の間になっている。
位置関係は人間関係を現す。
不肖の妹には、それを示すところから始めなければならない。
一も呑み込んだので、素直に正座している。
「何故だ!?」
「追ってきた」
「何故死んだ?」
「あんたが死んだあと、勝家の嫁に出された。勝家の城を猿が攻めてきた。三人の姫を逃して、勝家と共に死んだ」
「なぜ逃げなんだ?」
「逃げたら猿しかおらん」
「猿は嫌いか?」
「嫌い」
「猿は、一に惚れておる。意に添わんことはせん」
「猿と同じ空気を吸うのも嫌」
「……茶を、いや、コーヒーを淹れてくれ」
「……うん」
妹でなければ切っている。
『タメ口だから?』
また熱田大神が出てきた。
お前の居所は、庭の祠だろ。
『いっちゃんのことは、わたしの責任でもあるから』
好きにしろ。
『心で喋ること覚えたんだ(^▽^)』
妹の前だ。
『やっぱ、妹には優しいんだ』
祠、叩き壊すぞ。
『はいはい、もう黙るから。あ、冷蔵庫にイチゴケーキ入ってるから。じゃね』
であるか。
「砂糖は四つ。冷蔵庫のイチゴケーキも出せ……いや、自分で出そう」
「糖尿になるよ」
「いまの俺は17歳だ」
「女子高生の信長だなんて、キモイんですけど」
おお、冷蔵庫の中は他にもスイーツがいっぱい!
これだけでも転生した甲斐があるぞ。これ……と……これと(^▽^)
「二つも!?」
「食べずに死ねるか(^^♪」
「って、もう死んでるし」
最初にモンブランを平らげ、砂糖四つのコーヒーを飲みながらイチゴケーキを食べるのだ。
「キモイと言ったか」
「う、ううん(聞こえてたんだ(;'∀'))」
「一こそどうした。なぜ、女のまま転生しておる」
「天下なんて、どーでもいいし。でも、熱田大神が転生するならあんたの妹って枠しか無いってゆーし」
「キャラが違いすぎるが」
「いい子ぶるのは止めたの!」
「ほう……」
「前世のあんたは、好き放題やってたじゃん。今度は、あたしがやるんだ!」
「……………」
「……………」
「……………」
「な、なんか言ったら!」
「……食っている」
「もう!」
「そういうかぶき方をしていたのは桶狭間までだぞ」
「い、いいじゃん。いまのあたしは、こーゆーの好きなんだから!」
「……………」
「……………」
「……………」
「な、なんか言ったら!」
「……食っている」
「もう!」
「二回目だ」
「な、なにが!?」
「まあ、好きにしろ」
パンパン
「なに、手叩いてるの?」
「手を叩いたら、誰が出てくるのかと思ってな」
『はいはい、お呼びかしらあ?』
「あ、熱田大神!?」
「一にも見えるのか?」
『あんたたち仲良くなったみたいだし。で、用件は?』
「『一』では馴染めん、元々の『市』にしろ」
『うん、いいわよ。もともとドッキリのつもりだったし』
「「ドッキリか!?」」
『うん』
「それから、こいつは妹では無くて女中という設定にしろ」
「じょ、女中!?」
「この時代はお手伝いさんであったか」
「お手伝い!?」
「いっそ、メイドがいいか。うんメイド服が似合いそうだな……」
「いやだ!」
「では、人間に化けた宇宙人」
「……………」
「妖ではどうだ。熱田大神といっしょに祀ってやるぞ」
「無理!」
『妹というのはデフォルトなんだけどなあ』
「こいつは、妹を辞めたいそうだから、なんとかしてやれ」
「あ、あの……」
「そうだ、従姉妹がいい。そうしろ」
『仕方ないなあ……ここ変えると、他の所で歪が出てくるんだけど』
「い……市の頼みだ、聞いてやってくれ」
『分かった。じゃね……』
「…………………………………」
「な、なによ」
「……イチ」
「え?」
「イチ……ゴケーキ、食べないんだったら俺にくれ!」
ズコ
☆ 主な登場人物
織田 信長 本能寺の変で打ち取られて転生してきた
熱田大神 信長担当の尾張の神さま
織田 市 信長の妹(兄を嫌っているので従姉妹の設定になる)
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
憑依転生〜脳内美少女と死神と呼ばれた転生者
真木悔人
ファンタジー
その日、不幸な人生を送っていた三人の男が女神によって異世界に転生した。
その一人、主人公の真人は事故で亡くなり、雪という不遇な人生を歩む少女の中に転生する。
女神の話だとこの少女は間もなく死に、その亡骸を使って転生が完了すると言うのだ。
共に生き、情も移り、やがて特別な感情まで芽生え始める真人。そして、いざ雪が亡くなると言うその時、常人では耐えうる事の出来ない残酷な運命が二人を襲う。
凄惨な最期を迎える雪。
真人の積もりに積もったフラストレーションは爆発し、心の壊れた死神が戦国の異世界の地に誕生する──
これは、目的も信念も無かった主人公が異世界で雪と出会い、様々な戦国武将や亜人達の中で成長し、その歪な価値観に変化を生じさせていく物語。
其々が思う幸せを求めて三人の転生者の運命は絡み合い、やがて物語は意外な結末へ……
★完結!★【転生はもう結構です!】崖から落とされ死んだ俺は生き返って復讐を誓うけど困ってるドラゴン助けたら女になって娘が出来ました。
monaka
ファンタジー
99万9999回転生を繰り返し最後に生き返りを選択した男の
転生&生き返り子育てTSファンタジー!
俺、ミナト・ブルーフェイズはテンプレの如く信じていた仲間に裏切られて殺されてしまった。
でも死の間際に走馬燈代わりに前世でイカレ女に惨殺された記憶を思い出すってどういう事だよ!
前世ではヤバい女に殺されて、転生したら仲間に殺される。俺はそういう運命なのか? そんなの認められるはずないよなぁ!? 絶対に復讐してやる謝ったってもう遅い!
神との交換条件により転生はせず生き返ったミナトは自分を殺した奴等に復讐する為動き出す。しかし生き返った彼に待っていたのは予想外の出会いだった。
それにより不思議な力(と娘)を手に入れた彼の人生は想定外の方向へ大きく動き出す。
復讐を果たす為、そして大切なものを守る為、ミナト最後の人生が今始まる。
この小説は小説家になろう、カクヨムにも連載しております。
文字数の都合上各サイトによりタイトルが微妙に違いますが内容は同じです。
聖女なので公爵子息と結婚しました。でも彼には好きな人がいるそうです。
MIRICO
恋愛
癒しの力を持つ聖女、エヴリーヌ。彼女は聖女の嫁ぎ制度により、公爵子息であるカリス・ヴォルテールに嫁ぐことになった。しかしカリスは、ブラシェーロ公爵子息に嫁ぐ聖女、アティを愛していたのだ。
カリスはエヴリーヌに二年後の離婚を願う。王の命令で結婚することになったが、愛する人がいるためエヴリーヌを幸せにできないからだ。
勝手に決められた結婚なのに、二年で離婚!?
アティを愛していても、他の公爵子息の妻となったアティと結婚するわけにもいかない。離婚した後は独身のまま、後継者も親戚の子に渡すことを辞さない。そんなカリスの切実な純情の前に、エヴリーヌは二年後の離婚を承諾した。
なんてやつ。そうは思ったけれど、カリスは心優しく、二年後の離婚が決まってもエヴリーヌを蔑ろにしない、誠実な男だった。
やめて、優しくしないで。私が好きになっちゃうから!!
ブックマーク・いいね・ご感想等、ありがとうございます。誤字もお知らせくださりありがとうございます。修正します。ご感想お返事ネタバレになりそうなので控えさせていただきます。
異世界隠密冒険記
リュース
ファンタジー
ごく普通の人間だと自認している高校生の少年、御影黒斗。
人と違うところといえばほんの少し影が薄いことと、頭の回転が少し速いことくらい。
ある日、唐突に真っ白な空間に飛ばされる。そこにいた老人の管理者が言うには、この空間は世界の狭間であり、元の世界に戻るための路は、すでに閉じているとのこと。
黒斗は老人から色々説明を受けた後、現在開いている路から続いている世界へ旅立つことを決める。
その世界はステータスというものが存在しており、黒斗は自らのステータスを確認するのだが、そこには、とんでもない隠密系の才能が表示されており・・・。
冷静沈着で中性的な容姿を持つ主人公の、バトルあり、恋愛ありの、気ままな異世界隠密生活が、今、始まる。
現在、1日に2回は投稿します。それ以外の投稿は適当に。
改稿を始めました。
以前より読みやすくなっているはずです。
第一部完結しました。第二部完結しました。
私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜
AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。
そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。
さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。
しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。
それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。
だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。
そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。
泥ねずみと呼ばれた少年は、いっそ要塞に住みたい
カシナシ
ファンタジー
冒険者だった親に置いていかれたロキは、宿屋の屋根裏に住み、顔に大きな火傷痕と灰色の髪を持つことから、『泥ねずみ』と呼ばれ、鞭打たれ、働かせられていた。
ある日高熱に侵され、その拍子に日本人高校生だった記憶が蘇る。
魔力暴走で死ぬことは回避出来、愛された記憶により余裕が出来たロキは、必死に生きる道を模索する。
10歳になったら自立し、誰にも虐げられない強い冒険者になることを目標に――――。
おっとりマイペースな少年が、『顔』に振り回されつつも、精霊の加護を駆使し、
ちょっぴり人に不信感を持つ中、友人や仲間を得ながら安心出来る場所を築いていく。
※サブテーマ『BL好き作者がBL展開になりそうになるのを堪えながらなんとか無事に完結させたい』
※↑のため、やや腐臭がするかもしれません。苦手な方はご注意下さい
※ 主人公は絡まれることはあっても恋愛しません。仲間は男か人外のみ
※ざまぁはふりかけ程度。
※R15は念のため(残酷/下品な表現)
※女性向けHOTランキング最高位39位、頂きました。
第16回ファンタジー小説大賞にて25位を頂きました。ありがとうございます!
婚約者が、私より従妹のことを信用しきっていたので、婚約破棄して譲ることにしました。どうですか?ハズレだったでしょう?
珠宮さくら
恋愛
婚約者が、従妹の言葉を信用しきっていて、婚約破棄することになった。
だが、彼は身をもって知ることとになる。自分が選んだ女の方が、とんでもないハズレだったことを。
全2話。
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる