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89『クラブの合評会』
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はるか ワケあり転校生の7カ月
89『クラブの合評会』
「え、ウソ……ウソでしょ……!?」ケータイを握りしめたまま絶句した。
本選では出場校十三校の内、上位三校が近畿大会に出場できる。
その確率四分の一の中から我が真田山学院高校は漏れた。
タマちゃん先輩は要領よく講評の中味をメールにまとめていてくれていた。
落ちた理由は以下の二点である。
――作品に血が通っていない。
――行動原理、思考回路が高校生のそれではない。
死亡診断書のように、簡潔で、意味不明である。
明くる日のクラブ。
葬儀の後かたづけのように道具を整理し、クラブの合評会になった。
だれも、何も語らない。
「他に、なにを言われたんですか!?」
じれたわたしの声は、いささかトゲを含んでいた。栄恵ちゃんはビクっとした。
「……よかったら聞かせて下さい」
柔らかく言い直した。
「上手くて、安心して聞いていられる……しかし世界が二人のためにしか存在しないような窮屈さ、どうしても血が通っていないように感じる。もしかしたら思考回路や行動原理が、高校生のそれではない……」
タロくん先輩が、電車事故のお詫びのような沈鬱さで、メモを読み上げた。
「どこをもって、血が通っていないと言われたんですか! 何をもって、行動原理や思考回路が高校生じゃないっていうんですか! 具体的な指摘はなかったんですか!?」
「それは……」
先輩は黙り込んでしまった。
「タロくん責めても、しゃあないよ……」
乙女先生がつぶやくようにたしなめた。
「で、何も言い返さないで帰ってきたんですか!?」
「審査の講評いうのはそういうもんやねん……」
わたしの詰問口調に、珍しく、乙女先生は声を落とした。
「大橋先生は、知ってるんですか、このこと?」
「わたしが電話しといた」
「で、先生は?」
「はるかと同じようなこと言うてた。ただ、あんたらをミスリードしたらあかん言うて、今日は席外してはる」
ドスン、ガタン……積み方の悪かった道具が準備室で転がり落ちる音がした。
89『クラブの合評会』
「え、ウソ……ウソでしょ……!?」ケータイを握りしめたまま絶句した。
本選では出場校十三校の内、上位三校が近畿大会に出場できる。
その確率四分の一の中から我が真田山学院高校は漏れた。
タマちゃん先輩は要領よく講評の中味をメールにまとめていてくれていた。
落ちた理由は以下の二点である。
――作品に血が通っていない。
――行動原理、思考回路が高校生のそれではない。
死亡診断書のように、簡潔で、意味不明である。
明くる日のクラブ。
葬儀の後かたづけのように道具を整理し、クラブの合評会になった。
だれも、何も語らない。
「他に、なにを言われたんですか!?」
じれたわたしの声は、いささかトゲを含んでいた。栄恵ちゃんはビクっとした。
「……よかったら聞かせて下さい」
柔らかく言い直した。
「上手くて、安心して聞いていられる……しかし世界が二人のためにしか存在しないような窮屈さ、どうしても血が通っていないように感じる。もしかしたら思考回路や行動原理が、高校生のそれではない……」
タロくん先輩が、電車事故のお詫びのような沈鬱さで、メモを読み上げた。
「どこをもって、血が通っていないと言われたんですか! 何をもって、行動原理や思考回路が高校生じゃないっていうんですか! 具体的な指摘はなかったんですか!?」
「それは……」
先輩は黙り込んでしまった。
「タロくん責めても、しゃあないよ……」
乙女先生がつぶやくようにたしなめた。
「で、何も言い返さないで帰ってきたんですか!?」
「審査の講評いうのはそういうもんやねん……」
わたしの詰問口調に、珍しく、乙女先生は声を落とした。
「大橋先生は、知ってるんですか、このこと?」
「わたしが電話しといた」
「で、先生は?」
「はるかと同じようなこと言うてた。ただ、あんたらをミスリードしたらあかん言うて、今日は席外してはる」
ドスン、ガタン……積み方の悪かった道具が準備室で転がり落ちる音がした。
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