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85『祝賀会』

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はるか ワケあり転校生の7カ月

85『祝賀会』



 パパーーーーン

 玄関を開けると、お母さんがクラッカーを鳴らした。

「おめでとう!」

 って、昨日も聞いたんだけど(お母さんは、由香たちと審査結果の発表までつき合ってくれて、家に帰ると大騒ぎだった)

「今日は、お母さんのだわよ。はるかもクラッカー持って!」

 お母さんには、その日エッセー賞の優秀賞受賞の連絡があったのだ。皮肉なことに、わたしと同じA書房。でもめでたいことに違いはなかった。長いスランプだったから。

 作品は、例の神戸の異人館がテーマだ。

「ねえ、目玉オヤジ大明神にお礼言っとこうよ」

 お母さん、絶好調。

「ねえ、目玉オヤジ大権現、ライトアップとかしてなかったっけ?」
「するわけないでしょ、気象観測レーダーなんだから。わたしたちのエモーションの中でこその神さまなのよ」

 そうか……暮れなずむベランダで手を合わせる母子でした。

 その夜は、タキさんの主催で、母子同時の受賞の祝賀会。
 店を臨時休業にして、京橋の焼き肉屋さんに行った。
 大阪に来てからの宿願の焼き肉ぅ!

 塩タンから始まって、上ミノ、ハラミ、カルビ、ロース……いずれも焼きは控えめに。焼き網の角の方でテッチャン鍋。
 牛骨ス-プに野菜をドッチャリ、肉とホルモン、豆腐とトッポギ、を入れヤンギン醤で味付け。
 締めは、残ったスープにご飯を入れゴマ油を少々。煮詰めていくと真っ赤なリゾット風
 フー……さすがに満腹です。

 で、けっきょく肝心の話はできなかった、白羽さんのNOZOMIプロの件……。

 ナイショだけど、わたしは、タキさんの勧めでハイボールを二杯飲んでいた。
 けっこうイケタ。これはお母さんのDNA。お父さんはほとんど下戸。

 忘れないうちにと、観客動員のメールを打つ。

 気が大きくなっていたんだろう、シカトからの講和条約を結んだばかりの亜美から打った。そして大あくび……間違って、一斉送信のボタンを押したことは、本選の芝居が終わってから分かった。
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