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70『それ、生きてる!』

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はるか ワケあり転校生の7カ月

70『それ、生きてる!』




 山中先輩が新たに五曲を選び、合計六曲入りの本格的なミュージカルになった。
 栄恵ちゃんも音響係で復活した。
 台本も、あちこち手が加えられ、二ページほど増えた。

 まいったのは、教育勅語。

 全文ではないが、全体の三分の一ほど。
「朕惟フニ我皇祖皇宗國ヲ肇ムルコト……」まるでオマジナイ。わずか四行を覚えるのに二日かかった。
 しかし覚えて意味を知ると、「なるほど」と思われるところもあり、リズムも良く、スミレとカオルの会話が自然になった。
 カオルが昔の女学生は大変だったことをスミレに分かってもらうために、いっしょに教育勅語を実演する。
 最敬礼で「……朋友相信ジ」という下りで鼻水が垂れる。
「やってらんないよ」
 と、スミレ。
「アハハ、ね、でしょ。二三分もすると、あちこちで、鼻をすする音がズズー、ズズーって。まるで壊れた水道管」
 しかし「朋友相信ジ」を、カオルが「FOR YOU 愛信じ」と感じたことが新川でのお別れで生きてくる。
 川の中で消えていこうとするカオルにスミレが叫ぶ。
「おねがい、わたしに取り憑いて! FOR YOU 愛信じて……」
 つまり、「君のために愛を信じて」ということで、このお芝居のテーマにもつながっていく。
 次にってか、一番戸惑ったのは、
「今までの演技は全部捨てて、感じたままで動いてみぃ」
 それまでは、先生が解釈を言ってくれて、それに見合う演技をつけてくれた。
「これではお人形さんや」
 と、先生が言う。
 何度も同じところを繰り返させられた。
 まさにヘビーローテーション。
 置き換えや、感情の物理的記憶など、未熟だけど試してみた。
 簡単なところは三日ほどで変化がでてきた。
 スミレが進一(原本では、ユカという女の子)と、けんか別れするところ。
 それまでは、
「じゃ、おれ一人で行くよ、たった一人の文芸部さん。バイバイ」
「イーだ!」
 だけだった。それが、
「イーだ!」
「ウーだ!」
「せっきょう屋!」
「きまぐれ屋!」
「フン!」
 と、二人で同時に言って、別れることになった。で、これは、稽古のテンションが上がり、スミレのタマちゃん先輩も進一のタロくん先輩も、その気になって出てきたアドリブである。

「それ、生きてる!」という大橋先生の指摘。

「アハハハ!」という乙女先生の爆笑で決まった。
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