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067『ポンプで水を入れる』

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やくもあやかし物語 2

067『ポンプで水を入れる』 





『あっちに水があるーーー(>〇<)!』


 デラシネの手袋に入れて放り上げると、校舎の屋上ぐらいの高さで御息所が叫んだよ。

「行ってみましょうか(^▽^)!」

 オリビアが元気に前に出て、二人で御息所が指差したところに向かった。

 そこは、草むらが少し高くなっていて、丘というほどじゃないんだけど、遊園地の広場なんかで人工的に作られた山ぐらいの感じ。
 浅間山のカルデラを1/100ぐらいにしたら、こんな具合という感じで、カルデラの中にはきれいな水が漲っている。

「火山みたいだから濁っているかと思ったら」

「けっこうきれいですねぇ」

『ほれ、これを使って水を汲め』

 御息所が、キャンパス地の布バケツを放って寄こす。

「ありがたいけど、これだと何十回も往復して、お風呂入る前にくたびれてしまう」

『わたしも手伝うぞ!』

 えらそうに差し出したのは、デパ地下でジュースの試飲に使うような小さな紙コップ。

「お気持ちは嬉しいのですが(^_^;)」

 オリビアも笑顔のまま困ってるし。

『う~ん……じゃあ、あれはどうだ!』

 御息所の後をついていくと、カルデラの縁の草むらにポンプとホースが置いてある。

「看板になにか書いてありますわよ」

 オリビアが倒れた看板を起こすと――水を使う時は、これを使用してください――と書いてある。

「なかなか行き届いているわね。でも使い方は……」

「ええと……」

 オリビアが操作するとパイロットランプが数回点滅して、その横の赤ランプが緑に変わった。

 ブィーン

 ポンプが動き始めた!

『オリビア、慣れてるみたいだな』

「ええ、プリンスエドワード島に住んでいたころに、使ったことがあるの」

 プリンスエドワード島、どこかで聞いたことがある。

『あ、ダメだ、ホースに穴が開いていて水がダダモレだぞよ!』

「あらあら」
 
「ちょっと見てみる!」

 ホースを伸ばして、先の方からチョロチョロ出てくる水を確かめてみる。

『どうだぁ?』「どうかしらぁ?」

「うん、勢いは無いけど、いけるみたい。水もきれいなままだし」

「じゃあ、ちょっと時間はかかるけど、このままお風呂に入れてみましょうか」

「うん、そうだね。バケツで汲むよりはウンとましみたい」

 カルデラからホースを伸ばして風呂桶に先っぽを入れる。水の勢いでホースが暴れてはいけないので、しっかりと押さえたよ。

「ヤクモさんも、慣れてらっしゃるみたいですねぇ」

「あ、実家で庭掃除とお風呂掃除は、わたしの仕事だったし。オリビアは?」

「わたしもお風呂を沸かすのはやりましたけど、掃除や片づけは通いのメイドさんがしてくれましたので」

「あ、やっぱりオリビアはお嬢さまなんだぁ」

「いえいえ、父や母が心配性なだけで(^_^;)」

 いや、ぜったいお嬢さまだよ。でも、こういうことを深入りして聞くのは下品だからね。

 わたしも、中学を卒業して、今の学校に入って、ずいぶん賢くなったと思うよ。

『じゃあ、もっかい水を流すぞよぉ』

 御息所がスイッチを入れて、ホースが生き物のようにピクピクして水が流れ始める。

 プシューー

 数秒して水がやってきたけど、あちこち何十か所も水漏れ。

 でも、漏れた水は盛大なミストみたいになってクッキリと虹を映した。

 ウワァ!

 少しの間、三人で見とれてしまったよ。

 
 

☆彡主な登場人物 

やくも        斎藤やくも ヤマセンブルグ王立民俗学校一年生 ミチビキ鉛筆、おもいやり等が武器
ネル         コーネリア・ナサニエル やくものルームメイト エルフ
ヨリコ王女      ヤマセンブルグ王立民俗学学校総裁
ソフィー       ソフィア・ヒギンズ 魔法学講師
メグ・キャリバーン  教頭先生
カーナボン卿     校長先生
酒井 詩       コトハ 聴講生
同級生たち      アーデルハイド メイソン・ヒル オリビア・トンプソン ロージー・エドワーズ
先生たち       マッコイ(言語学) ソミア(変換魔法) フローレンス(保健室)
あやかしたち     デラシネ 六条御息所 ティターニア オーベロン 三方 少彦名 朝飯前のラビリンス くわせもの  ブラウニー(家事妖精) プロセス(プロセスティック=義手・義足の妖) 額田王 織姫 間人皇女
 
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