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065『オリビアの御息所観』

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やくもあやかし物語 2

065『オリビアの御息所観』 




「ねえ、もうなにか魔物とか妖とか出たかしらぁ(^▽^)?」

 肝試しの順番が回ってきて、ちょうど戻ってきた友だちに聞くように目を輝かせるオリビア。

 聴講生の詩(ことは)さんと並ぶ清楚な子なので、いいところのお嬢さんと思って、あんまり話したことも無い。
 ハイジのルームメイトでもあるんだけど、あまりハイジに打ち解けた様子もないので、美人だけど堅物な子なんだと思っていたよ。

「アーデルハイド(ハイジの本名)はね、表面のわたしだけを見て、そう思ってるんだと思うわ。あんまり自分を前に出すのも気が引けて、日常のあいさつ程度にしか話せてはいないですからね。同じ部屋にいるんだもの、一年生の内にはお友だちになれると思っていてよ」

 ああ、この喋り方じゃダメだろうなぁと思う。あまり人のことは言えないけど。

 でも、とくにメゲてもいないし、悪口を言う感じでもないので、いい子なんだと思う。わたしも、自分から進んで友だちを作るタイプじゃないので、これはいい機会になるかもと思ったよ。

「うん、化物めいた感じじゃないんだけどね……」

 織姫に出会って、額田王(ぬかだのおおきみ)や間人皇女(はしひとのひめみこ)に出くわしたことを話したよ。むろん、日本の万葉集の人物なんで、簡単に時代背景の話しとかもしながらね。

「まあ、それは素敵! あ、ごめんなさい。実際に戦ったら大変だったんでしょうけど」

「ううん、ネル、コーネリアもがんばってくれたしね」

「あ、コーネリアのことはネルって呼んでるの?」

「あ、うん、ルームメイトだしね」

「あ、そうよね……」

 あ、オリビアはハイジとは打ち解けられてはいないんだった(^_^;)。

「でもでも」

 リカバーしようと思ったら、オリビアの方が身を乗り出してきたよ。

「そういうマンヨウシュウ系の妖が出てくるのは、やくもの知識とか才能に感応してのことじゃないかしら?」

「え、そうなのかなあ( ゚Д゚)?」

 こっちがビックリしたけど、ひょっとしたらそういうものなのかもしれないという気もしてきたよ。

「ええ、魔物の中には、その人の知識や思い出の力を借りて姿を現すのもあるというわよ」

「えへへ、そうかなあ」

「とんでもない魔物や妖が出るかと覚悟して来たけど、ちょっと楽しみになったかもしれないわ(^○^)」

『それは違うぞよ!』

「きゃ(>○<)!」

 ポケットからいきなり御息所が飛び出してきて、座ったまま跳びあがるオリビア。

「いきなり出てきちゃダメでしょうがぁ」

『そなたらが間違った認識をしておるからよヽ(`Д´)ノ』

「な、なになのかしら、この子は?」

「驚かしてごめんね。日本から付いてきた妖……」

『あやかしだってぇ!?』

 二人の顔の高さまで飛び出て文句を言うミヤスドコロ。

「あ、いや、実はねぇ、この子は六条の御息所って云って……」

 ちょっと込み入ってるけど、御息所の話しを源氏物語から説き起こして説明する。

「源氏物語なら少し知ってるわ。今年は大河ドラマにもなっているし、ドナルド・キーンさんの本も読んだわ」

「アヒルとトランプのドナルドなら知ってるんだけどぉ(^○^;)」

 学校のみんなが交代でサポートしに来てくれるのは嬉しいけど、ちょっとめんどくさいかもしれないと思ったよ。

「あ、いろんな人が言ってるんだけど、六条の御息所は寝ている間に鬼になって人を呪い殺すって……」

『ゆ、ゆうなあ(>△<)!』

「違うのよ。夕顔って可愛くて儚げな女の子を採り殺してしまうところがあるでしょ『廃院の怪』というくだり」

『わあーわあー、ゆうなあ(>▢<)!』

「あれって、物の怪が夕顔を殺して、その物の怪が六条の御息所と……」

『ゆうなあ(*◎皿◎*)!!』

「あれって、源氏の君が夕顔を廃院に連れ出して三日三晩……励んだ結果夕顔が突然死んでしまって、それを物の怪のせいにした……という話でしょ。もともと丈夫じゃなかった夕顔には無理だったのよ。それを六条の御息所のせいにして、それも、文中じゃあくまでも物の怪と書いて、読者は『ぜったい六条の御息所』が取り殺したと思うようにしてあるのよ」

『そ、そう思ってくれるのかぁ?』

「ええ、絶対そうよ!」

『オリビア、いいやつだなぁ、おまえ( ノД`)』

「サキュバスは、あんな殺し方はしないものよ」

『だからぁ、そういうサキュバスちがうしぃ!』

 ああ、やっぱりややこしくなる(^_^;)



☆彡主な登場人物 

やくも        斎藤やくも ヤマセンブルグ王立民俗学校一年生 ミチビキ鉛筆、おもいやり等が武器
ネル         コーネリア・ナサニエル やくものルームメイト エルフ
ヨリコ王女      ヤマセンブルグ王立民俗学学校総裁
ソフィー       ソフィア・ヒギンズ 魔法学講師
メグ・キャリバーン  教頭先生
カーナボン卿     校長先生
酒井 詩       コトハ 聴講生
同級生たち      アーデルハイド メイソン・ヒル オリビア・トンプソン ロージー・エドワーズ
先生たち       マッコイ(言語学) ソミア(変換魔法) フローレンス(保健室)
あやかしたち     デラシネ 六条御息所 ティターニア オーベロン 三方 少彦名 朝飯前のラビリンス くわせもの  ブラウニー(家事妖精) プロセス(プロセスティック=義手・義足の妖) 額田王 織姫 間人皇女
 
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