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138『一本早い電車に乗った』
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巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
138『一本早い電車に乗った』
寝付けなかったわりには早く目が覚めて、いつもより一本早い電車に乗った。
6組の佐伯さんのことと、それを受けて屋上で開いた臨時MITAKAのせいだ。
一つ手前の寿町が近づくと、ドアのそばで唸り声。
う~~~ん
大荷物抱えたお婆さんが下りるのに苦労している。モンペに地下足袋、頭に手拭い巻いて、電車で時どき出会う行商のお婆ちゃん。
たいていは二三人のチームで、荷物持って乗り降りの時は助け合ってキビキビ動いてる。
でも、今朝は何かの事情で一人で乗って、仲間の補助が無いから苦労してるんだ。
「だいじょうぶですか!?」
声をかけた時は、もう荷物の端っこを持ち上げている。
「あ、どうもありがとうございます(^○^;)」
「いいえ」
背負った大荷物を介助をしながらホームに出て……この時代、ホームにエレベーターなんか付いてないから、そのまま改札を出るところまで付き合ってしまう。
「ほんとうに、ありがとうねお嬢ちゃん。電車出ちまったけど、だいじょうぶ?」
「あ、はい、隣の宮之森だし、一本早いのに乗ってたし(^_^;)」
「そう、でもほんとうにありがとうございました」
「は、はい、じゃあ(^_^;)」
とどめのありがとうが照れくさくって、そのまま宮之森目指して歩き始める。うまく道を拾っていけばいつもの時間に学校に着ける。
ええと……こっちだったかなあ。
滅多に通らない寿町の路地を進む。見覚えのあるお屋敷の角を曲がって……うん、あの祠を過ぎたら商店街に抜ける道!
え?
祠の向こう側、祠の壁に手をついてゼーゼー言ってるジャージ姿にビックリ。
「え、御神楽さん!?」
バイトの結婚式場以外ではめったに見かけない御神楽さん(じつは須世理姫)が死にそうなくらいにくたびれている。
文化祭のサポートに来てくれた時以外は外では見かけない御神楽さん。当然巫女服じゃないけど、下と上で紅白のジャージなので雰囲気は巫女さん。
「あ、ああ、地獄でグッチ。ちょっとエネルギーちょうだいね」
「え、あ、だいじょうぶ!?」
「おお、朝から人助けしたね、いつもよりエネルギーが多いよ……あ、ああ、なんとか一息だわぁ」
「あの、どうしたんですか?」
「佐伯さん、生き返らせてたのよ……」
「え……ええ!?」
「ちょっと待って……」
御神楽さんが手を振ると床几が出てきて、とりあえず祠の横に並んで座る。
「あの子、そんなに切羽詰まっていたわけじゃないのよ」
「そ、そうなの!?」
「いや、理由はあるわよ。人間関係がヘタで、ちょっと孤立はしてたのよ。それが、金原さんが亡くなったのに地味に影響受けちゃっててね」
「あ、ああ……」
それは、先生やあたしたちも心配していた。こういうのは伝染しやすいって。
「あの子の愛唱歌は『学生時代』なのよ」
「学生時代?」
「ああ、ほら、こんなの……」
御神楽さんが指を回すと聞いたことのある曲が流れた。
――蔦の絡ま~るチャ~ペルで 祈りを捧げた日~♪――
「これの二番がね――讃美歌を歌いながら清い死を夢見たぁ♪――なのよ」
「えええ、そんなことでぇ!?」
「いや……それが、引き金になったのが文化祭の【ウェディングパラダイス】なのよ」
「え、なんで【ウェディングパラダイス】が原因で死のうと思うんですか!?」
「すてきすぎたのよ」
「え、ええ?」
「グッチたち、めちゃくちゃ楽しそうだったでしょ」
「あ、そりゃもちろん」
「17歳っていえば、人生でいちばん輝いてる歳でしょ。それが女の晴れ着、花嫁衣裳をクラスの女子全員が身に着けて、いっそうキラキラしちゃってさ。まあ、疎外感……人にも言えないで、金原さんのことも記憶に新しいし、飛躍したわけよ……【ウェディングパラダイス】は、わたしも調子に乗っちゃったからね……」
「そ……あ……でも、助かったのなら」
「ほかの神さまの力も借りて、黄泉比良坂で待ち受けて、ついさっきこっちまで引き戻してきたとこ」
「そ、そうなんだ……」
「あ……もうちょっとエネルギーくれる?」
「あ、うん、もうちょっとなら」
「じゃあ……」
しがみついてきたと思ったら、なんだか急速に力を吸いだされる感じ……あ、ちょっ、それ以上は……(;゜Д゜)
目の前が暗くなってきて……気が付いたら、学校の正門前に倒れていた。
☆彡 主な登場人物
時司 巡(ときつかさ めぐり) 高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
時司 応(こたえ) 巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選(すぐり)になる
滝川 志忠屋のマスター
ペコさん 志忠屋のバイト
猫又たち アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
宮田 博子(ロコ) 2年3組 クラスメート
辻本 たみ子 2年3組 副委員長
高峰 秀夫 2年3組 委員長
吉本 佳奈子 2年3組 保健委員 バレー部
横田 真知子 2年3組 リベラル系女子
加藤 高明(10円男) 留年してる同級生
安倍晴天 陰陽師、安倍晴明の50代目
藤田 勲 2年学年主任
先生たち 花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀 音楽:峰岸 世界史:吉村先生 教頭先生 倉田(生徒会顧問) 藤野先生(大浜高校)
須之内直美 証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
御神楽采女 結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている
早乙女のお婆ちゃん 三軒隣りのお婆ちゃん
時司 徒 (いたる) お祖母ちゃんの妹
妖・魔物 アキラ
その他の生徒たち 滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長)
灯台守の夫婦 平賀勲 平賀恵 二人とも直美の友人
138『一本早い電車に乗った』
寝付けなかったわりには早く目が覚めて、いつもより一本早い電車に乗った。
6組の佐伯さんのことと、それを受けて屋上で開いた臨時MITAKAのせいだ。
一つ手前の寿町が近づくと、ドアのそばで唸り声。
う~~~ん
大荷物抱えたお婆さんが下りるのに苦労している。モンペに地下足袋、頭に手拭い巻いて、電車で時どき出会う行商のお婆ちゃん。
たいていは二三人のチームで、荷物持って乗り降りの時は助け合ってキビキビ動いてる。
でも、今朝は何かの事情で一人で乗って、仲間の補助が無いから苦労してるんだ。
「だいじょうぶですか!?」
声をかけた時は、もう荷物の端っこを持ち上げている。
「あ、どうもありがとうございます(^○^;)」
「いいえ」
背負った大荷物を介助をしながらホームに出て……この時代、ホームにエレベーターなんか付いてないから、そのまま改札を出るところまで付き合ってしまう。
「ほんとうに、ありがとうねお嬢ちゃん。電車出ちまったけど、だいじょうぶ?」
「あ、はい、隣の宮之森だし、一本早いのに乗ってたし(^_^;)」
「そう、でもほんとうにありがとうございました」
「は、はい、じゃあ(^_^;)」
とどめのありがとうが照れくさくって、そのまま宮之森目指して歩き始める。うまく道を拾っていけばいつもの時間に学校に着ける。
ええと……こっちだったかなあ。
滅多に通らない寿町の路地を進む。見覚えのあるお屋敷の角を曲がって……うん、あの祠を過ぎたら商店街に抜ける道!
え?
祠の向こう側、祠の壁に手をついてゼーゼー言ってるジャージ姿にビックリ。
「え、御神楽さん!?」
バイトの結婚式場以外ではめったに見かけない御神楽さん(じつは須世理姫)が死にそうなくらいにくたびれている。
文化祭のサポートに来てくれた時以外は外では見かけない御神楽さん。当然巫女服じゃないけど、下と上で紅白のジャージなので雰囲気は巫女さん。
「あ、ああ、地獄でグッチ。ちょっとエネルギーちょうだいね」
「え、あ、だいじょうぶ!?」
「おお、朝から人助けしたね、いつもよりエネルギーが多いよ……あ、ああ、なんとか一息だわぁ」
「あの、どうしたんですか?」
「佐伯さん、生き返らせてたのよ……」
「え……ええ!?」
「ちょっと待って……」
御神楽さんが手を振ると床几が出てきて、とりあえず祠の横に並んで座る。
「あの子、そんなに切羽詰まっていたわけじゃないのよ」
「そ、そうなの!?」
「いや、理由はあるわよ。人間関係がヘタで、ちょっと孤立はしてたのよ。それが、金原さんが亡くなったのに地味に影響受けちゃっててね」
「あ、ああ……」
それは、先生やあたしたちも心配していた。こういうのは伝染しやすいって。
「あの子の愛唱歌は『学生時代』なのよ」
「学生時代?」
「ああ、ほら、こんなの……」
御神楽さんが指を回すと聞いたことのある曲が流れた。
――蔦の絡ま~るチャ~ペルで 祈りを捧げた日~♪――
「これの二番がね――讃美歌を歌いながら清い死を夢見たぁ♪――なのよ」
「えええ、そんなことでぇ!?」
「いや……それが、引き金になったのが文化祭の【ウェディングパラダイス】なのよ」
「え、なんで【ウェディングパラダイス】が原因で死のうと思うんですか!?」
「すてきすぎたのよ」
「え、ええ?」
「グッチたち、めちゃくちゃ楽しそうだったでしょ」
「あ、そりゃもちろん」
「17歳っていえば、人生でいちばん輝いてる歳でしょ。それが女の晴れ着、花嫁衣裳をクラスの女子全員が身に着けて、いっそうキラキラしちゃってさ。まあ、疎外感……人にも言えないで、金原さんのことも記憶に新しいし、飛躍したわけよ……【ウェディングパラダイス】は、わたしも調子に乗っちゃったからね……」
「そ……あ……でも、助かったのなら」
「ほかの神さまの力も借りて、黄泉比良坂で待ち受けて、ついさっきこっちまで引き戻してきたとこ」
「そ、そうなんだ……」
「あ……もうちょっとエネルギーくれる?」
「あ、うん、もうちょっとなら」
「じゃあ……」
しがみついてきたと思ったら、なんだか急速に力を吸いだされる感じ……あ、ちょっ、それ以上は……(;゜Д゜)
目の前が暗くなってきて……気が付いたら、学校の正門前に倒れていた。
☆彡 主な登場人物
時司 巡(ときつかさ めぐり) 高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
時司 応(こたえ) 巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選(すぐり)になる
滝川 志忠屋のマスター
ペコさん 志忠屋のバイト
猫又たち アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
宮田 博子(ロコ) 2年3組 クラスメート
辻本 たみ子 2年3組 副委員長
高峰 秀夫 2年3組 委員長
吉本 佳奈子 2年3組 保健委員 バレー部
横田 真知子 2年3組 リベラル系女子
加藤 高明(10円男) 留年してる同級生
安倍晴天 陰陽師、安倍晴明の50代目
藤田 勲 2年学年主任
先生たち 花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀 音楽:峰岸 世界史:吉村先生 教頭先生 倉田(生徒会顧問) 藤野先生(大浜高校)
須之内直美 証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
御神楽采女 結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている
早乙女のお婆ちゃん 三軒隣りのお婆ちゃん
時司 徒 (いたる) お祖母ちゃんの妹
妖・魔物 アキラ
その他の生徒たち 滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長)
灯台守の夫婦 平賀勲 平賀恵 二人とも直美の友人
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