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120『妖退治・6・京橋空襲』
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巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
120『妖退治・6・京橋空襲』
ああ、抜かっていたぁ……(-_-;)
アキラのことを報告すると、晴天は頭を抱えてしゃがみ込んだ。
頭を抱えても晴天にはすごいオーラがあるようで、眼下の工事現場に隠れていた妖が五六匹ビックリしたように顔を出し、晴天は指先をちょっと動かしただけで電磁波みたいなのを出してやっつけてしまう。猫や犬が微かな音にも反応するようなもので、本人には――やっつけた――という自覚も無い。
「そんなにショックなことなの?」
「グッチは知らない方がいい。いやあ、安倍晴天としたことがぁ……」
「で、アキラがやっつけたのは何だったの?」
「それも知らない方がいい」
「あ、そうなんだ……」
わたしもお祖母ちゃんの孫、正体や名前を知ってしまったら厄介なことになることがあるのを知っている。ほら、西遊記の話しで名前を呼んで、返事をしたら壺の中に吸い込んでしまう魔物の話があったよ。
「これを見てごらん」
五六匹の妖をやっつけたばかりの指を動かすと、B5くらいのチラシが浮かんだ。
わたしの方が、もうちょっと上手いぞという字で――私たちは本日、爆弾を投下しに来たのではありません。日本國民のみなさん、我々の敵は日本国の軍隊と日本政府です。連合国は日本政府と戦争終結についての交渉をしているところです……――ということが書かれている。要は、戦争の終結が近いから、むやみに爆撃して日本人を殺すことは控えるという内容だ。
「終戦の二日前に米軍が撒いていったビラだよ。日付は8月13日」
「ああ、終戦の二日前?」
「お、えらい、終戦の日を知ってるんだ」
「失礼ねえ、それくらいは知ってるわよ」
「怒ると応(こたえ)さんに似てるなあ」
「あんまり誉め言葉にはならないんですけど」
「明日は京橋に行ってみよう」
「京橋ぃ?」
「うん、うまい焼き鳥屋とかがあるしね」
アキラがやっつけてくれたからいいようなものだけど、留守中に攻められたのに大丈夫という気持ちはあったけど、暑さしのぎは大賛成。
こないだの玉造からは駅三つ北にあるのが京橋。例の砲兵工廠の南口が玉造、北口が京橋になるらしい。
環状線と学研都市線、それに京阪電車も乗り入れていて、大阪市東部の一大ターミナル。
「あれぇ、終戦記念日は明日でしょ?」
例のトンネルを出て着いたのが京橋駅の南口。高架の下に二張り白いテントが張られ、大勢の人たちが黙祷している。
人々の前にはお地蔵さんが仰ぎ見るように立てられ、横には『南無阿弥陀仏』の石碑と少年少女がハトが停まった花輪を掲げてるブロンズ像。
これは宮之森でも終戦の日にやっている慰霊祭といっしょだよ。
「終戦の前の日に大空襲があったんだ」
「え?」
「主目標は砲兵工廠だったんだけどね、ターミナルの京橋駅も狙われて、環状線と学研都市線の交差するこの場所に一トン爆弾が落とされたんだ」
「ええ……( ゚Д゚)」
見上げると真上とその上に交差して線路が走っている。
「ちょうど、通勤ラッシュの時間帯で、千人近い人が犠牲になった。半分以上の人たちは身元も分からないまま火葬にされた」
「あ、ああ、真夏だもんね……」
万博の建設現場でも、時どきハトやコウモリが死んでいて、半日もしないうちにカラカラになってる。人間は大きいから……その、すぐに腐っちゃうしね。
「それもあるけど、身元確認ができないくらいにバラバラになってるからなあ」
あ、そういう意味か(;'∀')。
「でも、13日の宣伝ビラには……」
「ボクもがんばって爆弾を、ほら、そこの寝屋川やら大阪城の堀なんかに誘導したんだけどね……」
そうだ、晴天は日之出通商店街の大正屋を爆撃から救ったんだ。
「なんせ、145機も来たからね、それに陰陽師や魔法少女は、あくる日はポツダム宣言受け入れて無条件降伏するって分かってたからね。油断もしていたしね……」
「そうなんだ……」
それから、みんなと一緒に黙祷して、並んでお焼香。
爆撃の話を聞いた後で、焼き鳥や焼き肉は無理……と思ったけど、駅近のいい匂いを嗅ぐと、一瞬で食欲の方が勝って、しっかりゴチになった(^_^;)。
一日休みにするのかと思ったら、昼過ぎには戻って警備にあたった。
そして、残りは「やっぱり自分でやる」と晴天が覚悟を新たにして、半月ぶりに宮之森の自分の家に戻った。
☆彡 主な登場人物
時司 巡(ときつかさ めぐり) 高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
時司 応(こたえ) 巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選(すぐり)になる
滝川 志忠屋のマスター
ペコさん 志忠屋のバイト
猫又たち アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
宮田 博子(ロコ) 2年3組 クラスメート
辻本 たみ子 2年3組 副委員長
高峰 秀夫 2年3組 委員長
吉本 佳奈子 2年3組 保健委員 バレー部
横田 真知子 2年3組 リベラル系女子
加藤 高明(10円男) 留年してる同級生
安倍晴天 陰陽師、安倍晴明の50代目
藤田 勲 2年学年主任
先生たち 花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀 音楽:峰岸 教頭先生 倉田(生徒会顧問) 藤野先生(大浜高校)
須之内直美 証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
御神楽采女 結婚式場の巫女 正体は須世理姫
早乙女のお婆ちゃん 三軒隣りのお婆ちゃん
時司 徒 (いたる) お祖母ちゃんの妹
妖・魔物 アキラ
その他の生徒たち 滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長)
灯台守の夫婦 平賀勲 平賀恵 二人とも直美の友人
120『妖退治・6・京橋空襲』
ああ、抜かっていたぁ……(-_-;)
アキラのことを報告すると、晴天は頭を抱えてしゃがみ込んだ。
頭を抱えても晴天にはすごいオーラがあるようで、眼下の工事現場に隠れていた妖が五六匹ビックリしたように顔を出し、晴天は指先をちょっと動かしただけで電磁波みたいなのを出してやっつけてしまう。猫や犬が微かな音にも反応するようなもので、本人には――やっつけた――という自覚も無い。
「そんなにショックなことなの?」
「グッチは知らない方がいい。いやあ、安倍晴天としたことがぁ……」
「で、アキラがやっつけたのは何だったの?」
「それも知らない方がいい」
「あ、そうなんだ……」
わたしもお祖母ちゃんの孫、正体や名前を知ってしまったら厄介なことになることがあるのを知っている。ほら、西遊記の話しで名前を呼んで、返事をしたら壺の中に吸い込んでしまう魔物の話があったよ。
「これを見てごらん」
五六匹の妖をやっつけたばかりの指を動かすと、B5くらいのチラシが浮かんだ。
わたしの方が、もうちょっと上手いぞという字で――私たちは本日、爆弾を投下しに来たのではありません。日本國民のみなさん、我々の敵は日本国の軍隊と日本政府です。連合国は日本政府と戦争終結についての交渉をしているところです……――ということが書かれている。要は、戦争の終結が近いから、むやみに爆撃して日本人を殺すことは控えるという内容だ。
「終戦の二日前に米軍が撒いていったビラだよ。日付は8月13日」
「ああ、終戦の二日前?」
「お、えらい、終戦の日を知ってるんだ」
「失礼ねえ、それくらいは知ってるわよ」
「怒ると応(こたえ)さんに似てるなあ」
「あんまり誉め言葉にはならないんですけど」
「明日は京橋に行ってみよう」
「京橋ぃ?」
「うん、うまい焼き鳥屋とかがあるしね」
アキラがやっつけてくれたからいいようなものだけど、留守中に攻められたのに大丈夫という気持ちはあったけど、暑さしのぎは大賛成。
こないだの玉造からは駅三つ北にあるのが京橋。例の砲兵工廠の南口が玉造、北口が京橋になるらしい。
環状線と学研都市線、それに京阪電車も乗り入れていて、大阪市東部の一大ターミナル。
「あれぇ、終戦記念日は明日でしょ?」
例のトンネルを出て着いたのが京橋駅の南口。高架の下に二張り白いテントが張られ、大勢の人たちが黙祷している。
人々の前にはお地蔵さんが仰ぎ見るように立てられ、横には『南無阿弥陀仏』の石碑と少年少女がハトが停まった花輪を掲げてるブロンズ像。
これは宮之森でも終戦の日にやっている慰霊祭といっしょだよ。
「終戦の前の日に大空襲があったんだ」
「え?」
「主目標は砲兵工廠だったんだけどね、ターミナルの京橋駅も狙われて、環状線と学研都市線の交差するこの場所に一トン爆弾が落とされたんだ」
「ええ……( ゚Д゚)」
見上げると真上とその上に交差して線路が走っている。
「ちょうど、通勤ラッシュの時間帯で、千人近い人が犠牲になった。半分以上の人たちは身元も分からないまま火葬にされた」
「あ、ああ、真夏だもんね……」
万博の建設現場でも、時どきハトやコウモリが死んでいて、半日もしないうちにカラカラになってる。人間は大きいから……その、すぐに腐っちゃうしね。
「それもあるけど、身元確認ができないくらいにバラバラになってるからなあ」
あ、そういう意味か(;'∀')。
「でも、13日の宣伝ビラには……」
「ボクもがんばって爆弾を、ほら、そこの寝屋川やら大阪城の堀なんかに誘導したんだけどね……」
そうだ、晴天は日之出通商店街の大正屋を爆撃から救ったんだ。
「なんせ、145機も来たからね、それに陰陽師や魔法少女は、あくる日はポツダム宣言受け入れて無条件降伏するって分かってたからね。油断もしていたしね……」
「そうなんだ……」
それから、みんなと一緒に黙祷して、並んでお焼香。
爆撃の話を聞いた後で、焼き鳥や焼き肉は無理……と思ったけど、駅近のいい匂いを嗅ぐと、一瞬で食欲の方が勝って、しっかりゴチになった(^_^;)。
一日休みにするのかと思ったら、昼過ぎには戻って警備にあたった。
そして、残りは「やっぱり自分でやる」と晴天が覚悟を新たにして、半月ぶりに宮之森の自分の家に戻った。
☆彡 主な登場人物
時司 巡(ときつかさ めぐり) 高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
時司 応(こたえ) 巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選(すぐり)になる
滝川 志忠屋のマスター
ペコさん 志忠屋のバイト
猫又たち アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
宮田 博子(ロコ) 2年3組 クラスメート
辻本 たみ子 2年3組 副委員長
高峰 秀夫 2年3組 委員長
吉本 佳奈子 2年3組 保健委員 バレー部
横田 真知子 2年3組 リベラル系女子
加藤 高明(10円男) 留年してる同級生
安倍晴天 陰陽師、安倍晴明の50代目
藤田 勲 2年学年主任
先生たち 花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀 音楽:峰岸 教頭先生 倉田(生徒会顧問) 藤野先生(大浜高校)
須之内直美 証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
御神楽采女 結婚式場の巫女 正体は須世理姫
早乙女のお婆ちゃん 三軒隣りのお婆ちゃん
時司 徒 (いたる) お祖母ちゃんの妹
妖・魔物 アキラ
その他の生徒たち 滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長)
灯台守の夫婦 平賀勲 平賀恵 二人とも直美の友人
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