103 / 170
103『朝から全校集会』
しおりを挟む
巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
103『朝から全校集会』
そのあくる日、朝から全校集会。
「みなさんに、悲しいお知らせがあります……」
教頭先生の声が校舎に設置されているスピーカーから聞こえる。
教頭先生は朝礼台の下のマイクで喋っているので、姿が見えるのは最前列だけ。姿が見えない分、ちょっと普通ではない印象。じっさい、朝礼台の横では先生たちがヒソヒソ話しているというか調整しているのが列の隙間から見えるし。
やがて、校長先生が朝礼台に上がって、スタンドマイクに向かう。
ピィーーーーーーーーーーーーン!
とたんにJアラートみたいなハウリングが起こって、不穏な感じがいや増しになる。
放送部が調整して、もう一度校長先生がマイクの前に戻る。
「朝から集合してもらったのは、みんなに悲しい知らせがあるからです」
あ、同じだと思った。
去年、栗原さんが亡くなった時(056『ジュリエットの秘密とわたしの不思議』)と同じ重い空気がグラウンドにたちこめる。
いや、ちょっと違う。
栗原さんの時は、まず教頭先生があらましを語って、そのあと校長先生の言葉だった。今日はヒソヒソの後、すぐに校長先生だ。
「昨日の午後、3年2組の金原美奈さんが不慮の死を遂げられました……」
え……
瞬間で空気が凍り付いた。
高校生にもなれば『不慮の死』の意味は分かる。
昭和の時代は交通事故がよく起こる。去年も二件ほど事故に遭った子がいて、生指の先生が注意してたし。
だから、交通事故かなと思った。
とたんに、三年生の方から嗚咽を堪えるうめき声みたいなのが起こる。中には堪えきれずに泣き出す女子もいる。
やっぱり違う。
「詳細については、まだ伝えるわけにはいきませんが、まずは、黙祷したいと思います。みんな、前を向いてください……」
すすり泣く声が止むことはなかったけれど、私語はピタリと止んで全校生徒が前を向く。こういうところ、昭和の高校生は大人だと思うよ。
「黙祷」
黙祷の後、生指の伊藤先生が「金原さんのことについて疑問や質問のある人もいるだろうが、しばらく待ってください。どうしてもという人は、わたしのところまで来るように」と付け加えた。
その後は、この場を借りてということで、生徒会や先生たちから諸連絡。
どうしても、今でなければならない連絡は一つも無かったけど、日常的な連絡や話をすることで、沈鬱で動揺した空気を収めようという狙いなのが分かった。
魔法少女の力で情報をとろうとしたら取れたんだけど、やめた。
進んで首を突っ込むとろくなことが無いし、なんだか憚られた。
四時間目まで5分短縮の授業。
仲間でテーブルを囲む食堂の窓際席。
ロコが、Bランチのトレーを置くなり、声を潜めた。
「金原さん、実は……自殺だったようです」
「やっぱり……」
「それで……」
「まずは、食べてからにしよう」
取りあえずは食事に集中。
MITAKA(みんなで楽しく語る会)のメンバーは、軽々しく胸に沸いたことを口にすることはしない。いったん呑み込んで整理してからというところがある、聞いてしまったら食事どころじゃない気もしたしね。
その後の話で、金原さんの家は大浜市民会館の近所で、発見した家の人が消防に電話したのが『星の牧場』が終わったころ。その後、救急車や警察が来て大変だったらしいことが分かった。
そうか、あの時のサイレン……
それ以上は話すことも控え、平常時間に戻った午後の授業を受けた。
☆彡 主な登場人物
時司 巡(ときつかさ めぐり) 高校2年生
時司 応(こたえ) 巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女
滝川 志忠屋のマスター
ペコさん 志忠屋のバイト
猫又たち アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
宮田 博子(ロコ) 2年3組 クラスメート
辻本 たみ子 2年3組 副委員長
高峰 秀夫 2年3組 委員長
吉本 佳奈子 2年3組 保健委員 バレー部
横田 真知子 2年3組 リベラル系女子
加藤 高明(10円男) 留年してる同級生
藤田 勲 2年学年主任
先生たち 花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀 音楽:峰岸 教頭先生 倉田(生徒会顧問) 藤野先生(大浜高校)
須之内直美 証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
御神楽采女 結婚式場の巫女 正体は須世理姫
早乙女のお婆ちゃん 三軒隣りのお婆ちゃん
時司 徒 (いたる) お祖母ちゃんの妹
その他の生徒たち 滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 上杉(生徒会長)
灯台守の夫婦 平賀勲 平賀恵 二人とも直美の友人
103『朝から全校集会』
そのあくる日、朝から全校集会。
「みなさんに、悲しいお知らせがあります……」
教頭先生の声が校舎に設置されているスピーカーから聞こえる。
教頭先生は朝礼台の下のマイクで喋っているので、姿が見えるのは最前列だけ。姿が見えない分、ちょっと普通ではない印象。じっさい、朝礼台の横では先生たちがヒソヒソ話しているというか調整しているのが列の隙間から見えるし。
やがて、校長先生が朝礼台に上がって、スタンドマイクに向かう。
ピィーーーーーーーーーーーーン!
とたんにJアラートみたいなハウリングが起こって、不穏な感じがいや増しになる。
放送部が調整して、もう一度校長先生がマイクの前に戻る。
「朝から集合してもらったのは、みんなに悲しい知らせがあるからです」
あ、同じだと思った。
去年、栗原さんが亡くなった時(056『ジュリエットの秘密とわたしの不思議』)と同じ重い空気がグラウンドにたちこめる。
いや、ちょっと違う。
栗原さんの時は、まず教頭先生があらましを語って、そのあと校長先生の言葉だった。今日はヒソヒソの後、すぐに校長先生だ。
「昨日の午後、3年2組の金原美奈さんが不慮の死を遂げられました……」
え……
瞬間で空気が凍り付いた。
高校生にもなれば『不慮の死』の意味は分かる。
昭和の時代は交通事故がよく起こる。去年も二件ほど事故に遭った子がいて、生指の先生が注意してたし。
だから、交通事故かなと思った。
とたんに、三年生の方から嗚咽を堪えるうめき声みたいなのが起こる。中には堪えきれずに泣き出す女子もいる。
やっぱり違う。
「詳細については、まだ伝えるわけにはいきませんが、まずは、黙祷したいと思います。みんな、前を向いてください……」
すすり泣く声が止むことはなかったけれど、私語はピタリと止んで全校生徒が前を向く。こういうところ、昭和の高校生は大人だと思うよ。
「黙祷」
黙祷の後、生指の伊藤先生が「金原さんのことについて疑問や質問のある人もいるだろうが、しばらく待ってください。どうしてもという人は、わたしのところまで来るように」と付け加えた。
その後は、この場を借りてということで、生徒会や先生たちから諸連絡。
どうしても、今でなければならない連絡は一つも無かったけど、日常的な連絡や話をすることで、沈鬱で動揺した空気を収めようという狙いなのが分かった。
魔法少女の力で情報をとろうとしたら取れたんだけど、やめた。
進んで首を突っ込むとろくなことが無いし、なんだか憚られた。
四時間目まで5分短縮の授業。
仲間でテーブルを囲む食堂の窓際席。
ロコが、Bランチのトレーを置くなり、声を潜めた。
「金原さん、実は……自殺だったようです」
「やっぱり……」
「それで……」
「まずは、食べてからにしよう」
取りあえずは食事に集中。
MITAKA(みんなで楽しく語る会)のメンバーは、軽々しく胸に沸いたことを口にすることはしない。いったん呑み込んで整理してからというところがある、聞いてしまったら食事どころじゃない気もしたしね。
その後の話で、金原さんの家は大浜市民会館の近所で、発見した家の人が消防に電話したのが『星の牧場』が終わったころ。その後、救急車や警察が来て大変だったらしいことが分かった。
そうか、あの時のサイレン……
それ以上は話すことも控え、平常時間に戻った午後の授業を受けた。
☆彡 主な登場人物
時司 巡(ときつかさ めぐり) 高校2年生
時司 応(こたえ) 巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女
滝川 志忠屋のマスター
ペコさん 志忠屋のバイト
猫又たち アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
宮田 博子(ロコ) 2年3組 クラスメート
辻本 たみ子 2年3組 副委員長
高峰 秀夫 2年3組 委員長
吉本 佳奈子 2年3組 保健委員 バレー部
横田 真知子 2年3組 リベラル系女子
加藤 高明(10円男) 留年してる同級生
藤田 勲 2年学年主任
先生たち 花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀 音楽:峰岸 教頭先生 倉田(生徒会顧問) 藤野先生(大浜高校)
須之内直美 証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
御神楽采女 結婚式場の巫女 正体は須世理姫
早乙女のお婆ちゃん 三軒隣りのお婆ちゃん
時司 徒 (いたる) お祖母ちゃんの妹
その他の生徒たち 滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 上杉(生徒会長)
灯台守の夫婦 平賀勲 平賀恵 二人とも直美の友人
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
髪の色は愛の証 〜白髪少年愛される〜
あめ
ファンタジー
髪の色がとてもカラフルな世界。
そんな世界に唯一現れた白髪の少年。
その少年とは神様に転生させられた日本人だった。
その少年が“髪の色=愛の証”とされる世界で愛を知らぬ者として、可愛がられ愛される話。
⚠第1章の主人公は、2歳なのでめっちゃ拙い発音です。滑舌死んでます。
⚠愛されるだけではなく、ちょっと可哀想なお話もあります。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる