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094『階段下の部室』
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巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
094『階段下の部室』
学校というのは狭いようで広い。
小学校の倍はあるんじゃないかなあ。
小さな町なら一個分……は大げさだとしても、〇丁目の区分なら二つか三つは入るくらいの広さ。
町の同じ〇丁目でもさ、たとえば三軒隣りだと、どうかすると越してこられたことにも気づかない。
ほら、先週、いつものように登校しようとしたら三軒隣のお婆ちゃんが昭和の川向うに付いて来ちゃってビックリした。
日に一回だけ使える魔法で戻してあげようと思ったら、道路沿いの医院の屋上に飛ばしてしまって、アセアセになってるところを御神楽さんに助けてもらった。
帰りに家の前を通って、苗字が早乙女さんだということを確認。それ以外のことはまだ分からない。
三軒隣りでも、こんな感じだから、〇丁目が三つも入るような学校なら知らないところがあっても当然。
夕べの雨でグラウンドがグチャグチャなんで、本館前のコンクリのところでトスバレーに興じる昼休。
「いくよ!」
佳奈子が打ち上げたボールは緩く弧を描いてロコの頭上に落ちてくる。
運動音痴のロコでも十分返せる球だったんだけど、ボールの後ろに太陽があった。
クシュン!
クシャミといっしょに目をつぶってしまって、あえなく、ボールは南館の昇降口に飛び込んで行ってしまった。
「ああ、ごめ~ん(^_^;)」
佳奈子が謝って、ロコは「ドンマイドンマイ」と昇降口に駆けていく。
予鈴が鳴るまでトスバレー、終わるとロコが「ちょっとこっちです」とみんなを難関昇降口の階段下に手招きする。
ああ……
階段下の様子を見て、みんな同じように落胆の声を上げた。
二月の代議会でさ、8組の牧内さんが――部活を奨励されていながら、活動の拠点である部室を保証されていないクラブがある――と発言して、学校と生徒会を動かして、部室の候補地を倉田先生といっしょに探しているのを食堂から見たじゃん。
その後、正式に部室が設定されることになったって、みんなで喜んだ。
メデタシメデタシ(^▽^)と思って、新部室はいつできるんだろう……思っているうちに忘れてしまった(^_^;)。牧内さんもなにも言わなかったしね。
階段の下、三角の空洞のところがベニヤ板で塞がれて、トイレのドアみたいなのが付いていて、それだけは立派に『演劇部』と墨で書かれた相撲部屋みたいな看板が掛けられていた。
「中は、畳二畳分もないですよぉ」
ロコの呟きに続く者は居なかった。
思ったことはみんないっしょ。
あんなに大見得きって『いい問題提起だ、部室を確保しよう!』と言った割にはショボすぎる。
ほら、魔法使いの少年が親類の家に引き取られて階段の下の部屋で寝起きしてた有名な映画があるでしょ。あの感じ。
でも、あの映画はこの時代では原作も生まれてないからね、言わない。
二月から二か月以上あったのに誰も気づかなかった。
春休みを挟んで卒業式や入試や、学校行事がいろいろあった。
でもさ、牧内さんはクリスマスイブの集いでも、照明とかでお世話になって、作法室でやったMITAKAにも参加してくれて、ほとんど仲間なんだけどね。
「あ、もう本鈴鳴るよ!」
たみ子の声で、みんな教室に戻る。基本的にみんな真面目なんだ。
後で、真知子が演劇部の倉庫、正しくは図書分室で古い本や視聴覚機材を補完する部屋なんだけど。そこに出向いて牧内さんと話した。
「ううん、大進歩だよ。妥当な要求ならちゃんと学校は聞いてくれるって前例ができたんだから。これ以上は設備変更とか予算とか、生徒会を超える問題もあるしね、演劇部としては喜んでる」
「そう、でも、ごめんね。ぜんぜん問題トレースできてなくて」
「ドンマイドンマイ、学校って結構広いんだから」
牧内さんは、わたしと同じ感覚で、ちょっと嬉しかった。
☆彡 主な登場人物
時司 巡(ときつかさ めぐり) 高校2年生
時司 応(こたえ) 巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女
滝川 志忠屋のマスター
ペコさん 志忠屋のバイト
猫又たち アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
宮田 博子(ロコ) 2年3組 クラスメート
辻本 たみ子 2年3組 副委員長
高峰 秀夫 2年3組 委員長
吉本 佳奈子 2年3組 保健委員 バレー部
横田 真知子 2年3組 リベラル系女子
加藤 高明(10円男) 留年してる同級生
藤田 勲 2年学年主任
先生たち 花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀 音楽:峰岸 教頭先生 倉田(生徒会顧問)
須之内直美 証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
御神楽采女 結婚式場の巫女 正体は須世理姫
時司 徒 (いたる) お祖母ちゃんの妹
その他の生徒たち 滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 7組) 上杉(生徒会長)
灯台守の夫婦 平賀勲 平賀恵 二人とも直美の友人
094『階段下の部室』
学校というのは狭いようで広い。
小学校の倍はあるんじゃないかなあ。
小さな町なら一個分……は大げさだとしても、〇丁目の区分なら二つか三つは入るくらいの広さ。
町の同じ〇丁目でもさ、たとえば三軒隣りだと、どうかすると越してこられたことにも気づかない。
ほら、先週、いつものように登校しようとしたら三軒隣のお婆ちゃんが昭和の川向うに付いて来ちゃってビックリした。
日に一回だけ使える魔法で戻してあげようと思ったら、道路沿いの医院の屋上に飛ばしてしまって、アセアセになってるところを御神楽さんに助けてもらった。
帰りに家の前を通って、苗字が早乙女さんだということを確認。それ以外のことはまだ分からない。
三軒隣りでも、こんな感じだから、〇丁目が三つも入るような学校なら知らないところがあっても当然。
夕べの雨でグラウンドがグチャグチャなんで、本館前のコンクリのところでトスバレーに興じる昼休。
「いくよ!」
佳奈子が打ち上げたボールは緩く弧を描いてロコの頭上に落ちてくる。
運動音痴のロコでも十分返せる球だったんだけど、ボールの後ろに太陽があった。
クシュン!
クシャミといっしょに目をつぶってしまって、あえなく、ボールは南館の昇降口に飛び込んで行ってしまった。
「ああ、ごめ~ん(^_^;)」
佳奈子が謝って、ロコは「ドンマイドンマイ」と昇降口に駆けていく。
予鈴が鳴るまでトスバレー、終わるとロコが「ちょっとこっちです」とみんなを難関昇降口の階段下に手招きする。
ああ……
階段下の様子を見て、みんな同じように落胆の声を上げた。
二月の代議会でさ、8組の牧内さんが――部活を奨励されていながら、活動の拠点である部室を保証されていないクラブがある――と発言して、学校と生徒会を動かして、部室の候補地を倉田先生といっしょに探しているのを食堂から見たじゃん。
その後、正式に部室が設定されることになったって、みんなで喜んだ。
メデタシメデタシ(^▽^)と思って、新部室はいつできるんだろう……思っているうちに忘れてしまった(^_^;)。牧内さんもなにも言わなかったしね。
階段の下、三角の空洞のところがベニヤ板で塞がれて、トイレのドアみたいなのが付いていて、それだけは立派に『演劇部』と墨で書かれた相撲部屋みたいな看板が掛けられていた。
「中は、畳二畳分もないですよぉ」
ロコの呟きに続く者は居なかった。
思ったことはみんないっしょ。
あんなに大見得きって『いい問題提起だ、部室を確保しよう!』と言った割にはショボすぎる。
ほら、魔法使いの少年が親類の家に引き取られて階段の下の部屋で寝起きしてた有名な映画があるでしょ。あの感じ。
でも、あの映画はこの時代では原作も生まれてないからね、言わない。
二月から二か月以上あったのに誰も気づかなかった。
春休みを挟んで卒業式や入試や、学校行事がいろいろあった。
でもさ、牧内さんはクリスマスイブの集いでも、照明とかでお世話になって、作法室でやったMITAKAにも参加してくれて、ほとんど仲間なんだけどね。
「あ、もう本鈴鳴るよ!」
たみ子の声で、みんな教室に戻る。基本的にみんな真面目なんだ。
後で、真知子が演劇部の倉庫、正しくは図書分室で古い本や視聴覚機材を補完する部屋なんだけど。そこに出向いて牧内さんと話した。
「ううん、大進歩だよ。妥当な要求ならちゃんと学校は聞いてくれるって前例ができたんだから。これ以上は設備変更とか予算とか、生徒会を超える問題もあるしね、演劇部としては喜んでる」
「そう、でも、ごめんね。ぜんぜん問題トレースできてなくて」
「ドンマイドンマイ、学校って結構広いんだから」
牧内さんは、わたしと同じ感覚で、ちょっと嬉しかった。
☆彡 主な登場人物
時司 巡(ときつかさ めぐり) 高校2年生
時司 応(こたえ) 巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女
滝川 志忠屋のマスター
ペコさん 志忠屋のバイト
猫又たち アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
宮田 博子(ロコ) 2年3組 クラスメート
辻本 たみ子 2年3組 副委員長
高峰 秀夫 2年3組 委員長
吉本 佳奈子 2年3組 保健委員 バレー部
横田 真知子 2年3組 リベラル系女子
加藤 高明(10円男) 留年してる同級生
藤田 勲 2年学年主任
先生たち 花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀 音楽:峰岸 教頭先生 倉田(生徒会顧問)
須之内直美 証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
御神楽采女 結婚式場の巫女 正体は須世理姫
時司 徒 (いたる) お祖母ちゃんの妹
その他の生徒たち 滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 7組) 上杉(生徒会長)
灯台守の夫婦 平賀勲 平賀恵 二人とも直美の友人
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