80 / 162
080『代議会・2』
しおりを挟む
巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
080『代議会・2』
代議会の二日後、学食のいつもの席、お仲間でランチを食べている。
小春日和の学食は、南向きのガラス壁から穏やかな陽の光に満ちている。
すぐ外の植え込みの梅が知らないうちに六分咲き。
「ええ、先週から咲いてましたよぉ」
ロコのツッコミは厳しいけど、お仲間はコロコロと笑っている。
三年生が居なくなっているので、学食はピークの時間なのにゆったりしている。
「あれ、牧内さんじゃないの?」
食後のお茶をフーフー冷ましながらたみ子が目配せ。
「ああ、さっそくなんですねえ!」
ロコに釣られ、わたしたちも目を向ける。
代議会のことを思い出す。
『本来は部長会議で発言すべきなんですが、年度内の部長会議はありませんので、少し変則的ですが発言させていただきます』
シャキンと背筋を伸ばした牧内さんは穏やかに続けた。
『生徒手帳の第23条には――生徒は運動部あるいは文化部のいずれかに属してクラブ活動に励むものとする――とあります。入学式においても校長先生や諸先生方からも部活度を勧められました』
みんなウンウン頷きながらも、当たり前のことに――それでぇ?――という顔をしている。
『運動部には立派なクラブハウスがあります。文化部も一部教科内容と被る部活については事実上の部室があります。美術部、茶華道部、コーラス部などです。でも、それ以外の文化部には部室がありません。クラブ活動を勧めるからにはやはり施設面での保証がなければいけないと思うんです。わたしは演劇部なんですが、現在は部室が無い状況で、このままでは来年度新入部員を勧誘するのにも差支えが出てきます。どうでしょうか、事実上部室の無い文化部に部室の保証をしていただけないでしょうか』
え……と思った。
去年、イブの集いで照明の打合せをしに行った時は……たしか部室だったような気がする?
同じ疑問があったようで、文化委員長の二年生が指摘した。
『ご記憶に留めていただいてありがとうございます。でも、あれは正規には図書分室で、来年度には図書室の申し出で使えなくなります。図書室も蔵書が多いですから無理も言えません。このままでは。機材は倉庫に間借りし、日常の部活は、その時その時空いている教室を探さなければなりません。機材の保管以外にも、着替えの場所も必要ですし、新入生もどこに入部願を持って行っていいか分からない状況になります。どうか宜しく生徒会並びに先生方でご勘案願いますようお願い申し上げます』
なんちゅう大人びた言い方! ううん大人だよ、ちょっとシビレた!
これに対して生徒会長の上杉さんも、キリっと眼鏡をかけ直して、こう応えた。
『牧内さんの申し出はごもっともです。さっそく生徒会顧問の倉田先生とも協議して可及的速やかにご返答します』
なんか国会の質問と答弁みたいで、二人ともカッコよかった!
「フン、それこそ国会答弁、オタメゴカシに決まってるじゃないか」
休み時間、10円男に言ってやると鼻で笑ってバカにした。
世間知らずの令和少女は俯くしかなかったんだけど、目の前の(ガラス越しだけど)光景はすごい。
牧内さんは生徒会顧問の倉田先生と、なにやら図面を広げて校舎のあちこちを見て周っている。
「あれ、校舎と敷地の図面ですよ、本格的に検討に乗り出したんですねえ! やりますねえ!」
「そうそう、こういうことが明日に繋がるのよ、わたしも行ってくる!」
真知子は、さっさと食器を片して学食を出て行った。「わたしもぉ!」とロコも出ていく。
わたしたちもと思って中華まんの残りをパクつく。
大口開けたところで10円男と目が合う。
事情を知ってか、再び鼻で笑う10円男。
こいつ、ほんとに改心してクソババア(大叔母の徒)の旦那になるのかねえ?
遅れて、佳奈子といっしょに駆けつけると、もう校舎図面のあちこちにチェックが入って、前進してますって感じだった!
☆彡 主な登場人物
時司 巡(ときつかさ めぐり) 高校一年生
時司 応(こたえ) 巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女
滝川 志忠屋のマスター
ペコさん 志忠屋のバイト
猫又たち アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
宮田 博子(ロコ) 1年5組 クラスメート
辻本 たみ子 1年5組 副委員長
高峰 秀夫 1年5組 委員長
吉本 佳奈子 1年5組 保健委員 バレー部
横田 真知子 1年5組 リベラル系女子
加藤 高明(10円男) 留年してる同級生
藤田 勲 1年5組の担任
先生たち 花園先生:4組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀 音楽:峰岸 教頭先生 倉田(生徒会顧問)
須之内直美 証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
時司 徒 (いたる) お祖母ちゃんの妹
その他の生徒たち 滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 7組) 上杉(生徒会長)
灯台守の夫婦 平賀勲 平賀恵 二人とも直美の友人
080『代議会・2』
代議会の二日後、学食のいつもの席、お仲間でランチを食べている。
小春日和の学食は、南向きのガラス壁から穏やかな陽の光に満ちている。
すぐ外の植え込みの梅が知らないうちに六分咲き。
「ええ、先週から咲いてましたよぉ」
ロコのツッコミは厳しいけど、お仲間はコロコロと笑っている。
三年生が居なくなっているので、学食はピークの時間なのにゆったりしている。
「あれ、牧内さんじゃないの?」
食後のお茶をフーフー冷ましながらたみ子が目配せ。
「ああ、さっそくなんですねえ!」
ロコに釣られ、わたしたちも目を向ける。
代議会のことを思い出す。
『本来は部長会議で発言すべきなんですが、年度内の部長会議はありませんので、少し変則的ですが発言させていただきます』
シャキンと背筋を伸ばした牧内さんは穏やかに続けた。
『生徒手帳の第23条には――生徒は運動部あるいは文化部のいずれかに属してクラブ活動に励むものとする――とあります。入学式においても校長先生や諸先生方からも部活度を勧められました』
みんなウンウン頷きながらも、当たり前のことに――それでぇ?――という顔をしている。
『運動部には立派なクラブハウスがあります。文化部も一部教科内容と被る部活については事実上の部室があります。美術部、茶華道部、コーラス部などです。でも、それ以外の文化部には部室がありません。クラブ活動を勧めるからにはやはり施設面での保証がなければいけないと思うんです。わたしは演劇部なんですが、現在は部室が無い状況で、このままでは来年度新入部員を勧誘するのにも差支えが出てきます。どうでしょうか、事実上部室の無い文化部に部室の保証をしていただけないでしょうか』
え……と思った。
去年、イブの集いで照明の打合せをしに行った時は……たしか部室だったような気がする?
同じ疑問があったようで、文化委員長の二年生が指摘した。
『ご記憶に留めていただいてありがとうございます。でも、あれは正規には図書分室で、来年度には図書室の申し出で使えなくなります。図書室も蔵書が多いですから無理も言えません。このままでは。機材は倉庫に間借りし、日常の部活は、その時その時空いている教室を探さなければなりません。機材の保管以外にも、着替えの場所も必要ですし、新入生もどこに入部願を持って行っていいか分からない状況になります。どうか宜しく生徒会並びに先生方でご勘案願いますようお願い申し上げます』
なんちゅう大人びた言い方! ううん大人だよ、ちょっとシビレた!
これに対して生徒会長の上杉さんも、キリっと眼鏡をかけ直して、こう応えた。
『牧内さんの申し出はごもっともです。さっそく生徒会顧問の倉田先生とも協議して可及的速やかにご返答します』
なんか国会の質問と答弁みたいで、二人ともカッコよかった!
「フン、それこそ国会答弁、オタメゴカシに決まってるじゃないか」
休み時間、10円男に言ってやると鼻で笑ってバカにした。
世間知らずの令和少女は俯くしかなかったんだけど、目の前の(ガラス越しだけど)光景はすごい。
牧内さんは生徒会顧問の倉田先生と、なにやら図面を広げて校舎のあちこちを見て周っている。
「あれ、校舎と敷地の図面ですよ、本格的に検討に乗り出したんですねえ! やりますねえ!」
「そうそう、こういうことが明日に繋がるのよ、わたしも行ってくる!」
真知子は、さっさと食器を片して学食を出て行った。「わたしもぉ!」とロコも出ていく。
わたしたちもと思って中華まんの残りをパクつく。
大口開けたところで10円男と目が合う。
事情を知ってか、再び鼻で笑う10円男。
こいつ、ほんとに改心してクソババア(大叔母の徒)の旦那になるのかねえ?
遅れて、佳奈子といっしょに駆けつけると、もう校舎図面のあちこちにチェックが入って、前進してますって感じだった!
☆彡 主な登場人物
時司 巡(ときつかさ めぐり) 高校一年生
時司 応(こたえ) 巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女
滝川 志忠屋のマスター
ペコさん 志忠屋のバイト
猫又たち アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
宮田 博子(ロコ) 1年5組 クラスメート
辻本 たみ子 1年5組 副委員長
高峰 秀夫 1年5組 委員長
吉本 佳奈子 1年5組 保健委員 バレー部
横田 真知子 1年5組 リベラル系女子
加藤 高明(10円男) 留年してる同級生
藤田 勲 1年5組の担任
先生たち 花園先生:4組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀 音楽:峰岸 教頭先生 倉田(生徒会顧問)
須之内直美 証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
時司 徒 (いたる) お祖母ちゃんの妹
その他の生徒たち 滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 7組) 上杉(生徒会長)
灯台守の夫婦 平賀勲 平賀恵 二人とも直美の友人
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
やくもあやかし物語
武者走走九郎or大橋むつお
ファンタジー
やくもが越してきたのは、お母さんの実家。お父さんは居ないけど、そこの事情は察してください。
お母さんの実家も周囲の家も百坪はあろうかというお屋敷が多い。
家は一丁目で、通う中学校は三丁目。途中の二丁目には百メートルほどの坂道が合って、下っていくと二百メートルほどの遠回りになる。
途中のお屋敷の庭を通してもらえれば近道になるんだけど、人もお屋敷も苦手なやくもは坂道を遠回りしていくしかないんだけどね……。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
まじぼらっ! ~魔法奉仕同好会騒動記
ちありや
ファンタジー
芹沢(せりざわ)つばめは恋に恋する普通の女子高生。入学初日に出会った不思議な魔法熟… 少女に脅され… 強く勧誘されて「魔法奉仕(マジックボランティア)同好会」に入る事になる。
これはそんな彼女の恋と青春と冒険とサバイバルのタペストリーである。
1話あたり平均2000〜2500文字なので、サクサク読めますよ!
いわゆるラブコメではなく「ラブ&コメディ」です。いえむしろ「ラブギャグ」です! たまにシリアス展開もあります!
【注意】作中、『部』では無く『同好会』が登場しますが、分かりやすさ重視のために敢えて『部員』『部室』等と表記しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる