上 下
406 / 432

406『イギリス国王の戴冠式と頼子さん』

しおりを挟む
せやさかい

406『イギリス国王の戴冠式と頼子さん』詩(ことは)   




 お腹から腰にかけてガチガチ。


 手術の後、コルセットっていうかギブスで固められてしまって動きがとれない。

 フレデリック先生の話だと、成功の確率は半分ほど、その半分の確率で治っても完全には戻らない。

 でも、いまは考えない。

 お母さんも付きっ切りだったから、いまは別室で休んでもらってる。

 ナースコールもあるし、カメラも二台付いてるしね。

 腰から下が動かないという以外は、いたって健康。

 天井にディスプレーを付けてもらった。ソフィーの手配らしい。

 ディスプレーにはプレステ5が繋がっている。

「パソコンよりも操作しやすいから」

 ソフィーは、頼子さんやさくらと同じ真理愛の生徒だったし、うちにもよく来てくれていたので、わたしのことも良く知っている。わたし、日ごろの動画はプレステ4で間に合わせてる。

 パソコンよりも簡単だしネトフリやゲームにも直ぐに切り替えられるしね。横になったままなのでプレステのコントローラーの方が断然扱いやすい。

 ただ、プレステ5は初めてだったし、決定が✖ボタン、キャンセルが〇ボタン。ちょっと戸惑ったけど、まあ慣れた。

 そのコントローラーを胸元に戴冠式の中継を見ている。



 むろん、お目当ては頼子さん。



 心配半分楽しみ半分。

 式場のウエストミンスター寺院に世界中の王様やお妃、国家元首の人たちが入場する。

 みなさん、それぞれの国の礼装なので、それを見ているだけでも楽しい。

 入場はアルファベット順なんだろうか、なかなか現れない。

 あ

 枢機卿みたいな人が三人続いたので、まだもうちょっと先と思った瞬間に現れた。

 ナンチャラいうお目出度い行事用のドレスに、サッシュっていうタスキ、タスキの腰のあたりにナンチャラ勲章。

 
 ステキ……


 ちょっとだけ心配だったけど、完全にノープロブレム!

 お年寄りが多い来賓の中で、ひときわ輝いていて、その瞬間は頼子さんのプロモーションビデオみたいになった。

 カメラマンも目を奪われたのか、ずっと頼子さんを追っている。

 おかげで、正面・真横・後姿としっかり見ることができた。

 カトレアとスズランを掛け合わせたら、こんな感じ?

 華やかで、かつ愛らしい。そして、控え目に威厳さえ感じさせるんだけど、口元のアルカイックスマイルが神秘的。

 
 こういう儀式は待ち時間が長い。


 チャールズ国王の馬車が着いて、入場されるまでがけっこうある。

 来賓席では、足を組む人もチラホラ。

 こういう超フォーマルな席で足を組むのは、ちょっと無作法なんだ。

 わたしも、王宮で暮らすようになってサッチャ……イザベラさんに仕込まれたので、そこに目が行く。

 どうしてもくたびれたら足首を組むのは許されるので、そうやってる人もいるんだけど、頼子さんは、キチンと足を揃え、背筋も伸ばして立派だ。

 プログラムとかあればいいのに。

 進行が分からないから、コントローラー胸に持ってきてずっと画面を見てる。

 ちょっとラッコに似てるかもしれない。



 フフフ



 耳もとで小さな笑い声がして、チラッと見る。

 え?

 なんと、『妖精の飛び出しに注意!』の道路標識にあるようなシルエットの妖精が二人! 枕もとに座ってるのと寝そべってるのが、いっしょに画面を見てる。1/12サイズのフィギュアみたい。

 声を掛けちゃいけない……そう思って戴冠式を見ているうちに寝てしまった。



☆・・主な登場人物・・☆

酒井 さくら      この物語の主人公  聖真理愛女学院高校二年生
酒井 歌        さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
酒井 諦観       さくらの祖父 如来寺の隠居
酒井 諦念       さくらの伯父 諦一と詩の父
酒井 諦一       さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
酒井 詩(ことは)   さくらの従姉 聖真理愛学院大学三年生 ヤマセンブルグに留学中
酒井 美保       さくらの義理の伯母 諦一 詩の母 
榊原 留美       さくらと同居 中一からの同級生 
夕陽丘頼子       さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 
ソフィー        ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍少尉
ソニー         ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍伍長
月島さやか       中二~高一までさくらの担任の先生
古閑 巡里(めぐり)  さくらと留美のクラスメート メグリン
百武真鈴(田中真央)  高校生声優の生徒会長
女王陛下        頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首
江戸川アニメの関係者  宗武真(監督) 江原(作監) 武者走(脚本) 宮田(制作進行) 花園あやめ(声優)  
さくらをとりまく人たち ハンゼイのマスター(昴・あきら) 瑞穂(マスターの奥さん) 小鳥遊先生(2年3組の担任) 田中米子(米屋のお婆ちゃん)
  

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました

宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。 ーーそれではお幸せに。 以前書いていたお話です。 投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと… 十話完結で既に書き終えてます。

思い出を売った女

志波 連
ライト文芸
結婚して三年、あれほど愛していると言っていた夫の浮気を知った裕子。 それでもいつかは戻って来ることを信じて耐えることを決意するも、浮気相手からの執拗な嫌がらせに心が折れてしまい、離婚届を置いて姿を消した。 浮気を後悔した孝志は裕子を探すが、痕跡さえ見つけられない。 浮気相手が妊娠し、子供のために再婚したが上手くいくはずもなかった。 全てに疲弊した孝志は故郷に戻る。 ある日、子供を連れて出掛けた海辺の公園でかつての妻に再会する。 あの頃のように明るい笑顔を浮かべる裕子に、孝志は二度目の一目惚れをした。 R15は保険です 他サイトでも公開しています 表紙は写真ACより引用しました

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

夏休みの夕闇~刑務所編~

苫都千珠(とまとちず)
ライト文芸
殺人を犯して死刑を待つ22歳の元大学生、灰谷ヤミ。 時空を超えて世界を救う、魔法使いの火置ユウ。 運命のいたずらによって「刑務所の独房」で出会った二人。 二人はお互いの人生について、思想について、死生観について会話をしながら少しずつ距離を縮めていく。 しかし刑務所を管理する「カミサマ」の存在が、二人の運命を思わぬ方向へと導いて……。 なぜヤミは殺人を犯したのか? なぜユウはこの独房にやってきたのか? 謎の刑務所を管理する「カミサマ」の思惑とは? 二人の長い長い夏休みが始まろうとしていた……。 <登場人物> 灰谷ヤミ(22) 死刑囚。夕闇色の髪、金色に見える瞳を持ち、長身で細身の体型。大学2年生のときに殺人を犯し、死刑を言い渡される。 「悲劇的な人生」の彼は、10歳のときからずっと自分だけの神様を信じて生きてきた。いつか神様の元で神様に愛されることが彼の夢。 物腰穏やかで素直、思慮深い性格だが、一つのものを信じ通す異常な執着心を垣間見せる。 好きなものは、海と空と猫と本。嫌いなものは、うわべだけの会話と考えなしに話す人。 火置ユウ(21) 黒くウエーブしたセミロングの髪、宇宙色の瞳、やや小柄な魔法使い。「時空の魔女」として異なる時空を行き来しながら、崩壊しそうな世界を直す仕事をしている。 11歳の時に時空の渦に巻き込まれて魔法使いになってからというもの、あらゆる世界を旅しながら魔法の腕を磨いてきた。 個人主義者でプライドが高い。感受性が高いところが強みでもあり、弱みでもある。 好きなものは、パンとチーズと魔法と見たことのない景色。嫌いなものは、全体主義と多数決。 カミサマ ヤミが囚われている刑務所を管理する謎の人物。 2メートルもあろうかというほどの長身に長い手足。ひょろっとした体型。顔は若く見えるが、髪もヒゲも真っ白。ヒゲは豊かで、いわゆる『神様っぽい』白づくめの装束に身を包む。 見ている人を不安にさせるアンバランスな出で立ち。 ※重複投稿作品です ※外部URLでも投稿しています。お好きな方で御覧ください。

処理中です...