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387『2683』

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せやさかい

387『2683』さくら   




 2683……何の数字やと思います?


 冬物衣料のクリアランス、ティーンの人気ブルゾンが2683円!

 ちゃいます。

 イコカの残高、2683円、そろそろチャージせなあかん。うちのイコカは残高103円で終わってるけど。

 ちゃいます。

 昨日食べたあれこれのカロリー合計、2683キロカロリー。ちょっと食べすぎ。

 ちゃいます。

 うちの家から堺東の駅まで2683メートル……う~ん、そんなもんやけど計ったことないから分かりません。

 
 じつは、令和5年は、紀元2683年なんです!


 で、今日は2月11日で、建国記念の日ぃなんです!

 話は、頼子さんロスで落ち込んでたあくる日のこと。

「ちょっと佐藤さん……」

 朝のショートホームルームが終わったら、教室出る足を止めてペコちゃんがオイデオイデする。

 留美ちゃんとメグリンは心配そうに、ソニーはニヤニヤ笑って視線を向けてくる。

 三人の気持ちを一言で表したら――なにやらかしたんやぁ?――ですわ。

 呼ばれたうちも、ちょっとドキドキ。

 せやかて、ペコちゃんは、うちに欠点を宣告した時みたいな憂い顔してるし。ふだんは『さくら』って呼び捨てやし。

「えと、なんですか?」



「実はね……」



 と、ヒソヒソ話しをされて、一週間後の今朝、大きな姿見の前でメチャ緊張してます!

 同じように、留美ちゃん、メグリン、ソニーの三人も!

 三人とも揃いの巫女服の上に千早いうのんを羽織って、手にはぶどうを逆さに持ったような神楽鈴。

 髪もロン毛のエクステ付けて、地毛との境目を半紙みたいな紙で巻いて熨斗が付いてる。

「これがわたしか!?」

 目ぇ剥いてるのはソニー。

 ソニーはブロンドなんで、黒髪のウィッグ。ペコちゃんは「地毛でも構わないんだけど、ブロンドの付け毛は無いからねぇ」と恐縮してた。

 それで、黒髪のウィッグにしたんやけど、眉毛が合わへん。「じゃあ描くわ」とペンシルで描いたら、今度はまつ毛が合わへん。それで、今度は黒のツケマまでしたら、完全に別人!

「ごめんね、ここまでやらせてぇ」

 ペコちゃんは恐縮のしまくり。

「いや、先生、いいですよ。新しい自分を発見しました!」

「みっともなくないかなあ(;'∀')」

 頭一つ分背の高いメグリンは背中が丸い。

「大丈夫よ、たった五日間だったけど、舞の呼吸はピッタリ合うようになってきたし!」

 ドン!

「は、はい」

 背中に気合いを入れられてピッとすると、うちの頭はメグリンの肩よりも低くなる。まあ、ええけど。

「なんだか『君の名は』の……みたい」

「それ連想したら、巨大隕石が降ってくる!」

「え、あ、どうしよう!」

 留美ちゃんは妄想の世界に入りかけてるしぃ(^_^;)



「じゃあ、そろそろ本番、神楽殿に行くよ!」



 もう分かってると思うんですけど、うちらは、ペコちゃんの神社でお神楽を舞います。

 今日は建国記念の日ぃで、一般的には休日やねんけど、ペコちゃんの神社では建国祭という行事なんですわ。

 神楽舞をやる氏子のお嬢さんたちの都合が悪くなって、急きょペコちゃんはうちらに頼んだわけです。

 うちの学校はカトリックやし、うちはお寺の子ぉやし、だいたい担任がクラスの生徒に家の用事頼むのは反則めいてるし。

 それで、学院長先生の許可までもらって、うちらに頼んだというわけ。

 学校は、特別な理由によるアルバイトいうことで公に許可してくれる。



 渡り廊下を通って静々と神楽殿へ。



 昨日までの鬱陶しい曇り空もすっかり晴天になって、神楽殿の前には氏子さんやら一杯の参拝客やら見物のお客さんやら。あ、院長先生まで来てくれて……テイ兄ちゃんとお祖父ちゃんも。

 よし、気合い入れて頑張るぞ!

 
 2683年前のこの日、神武天皇が橿原神宮で即位されて、今の日本が始まったんやそうです。

 うちも一週間前までは知らんかったんやけどね。

 あ、頼子さんと詩(ことは)ちゃんには知らせてません。

 あとで動画を送ってやって、羨ましがらせてやろうと、四人の意見が一致したからね。



☆・・主な登場人物・・☆

酒井 さくら      この物語の主人公  聖真理愛女学院高校一年生
酒井 歌        さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
酒井 諦観       さくらの祖父 如来寺の隠居
酒井 諦念       さくらの伯父 諦一と詩の父
酒井 諦一       さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
酒井 詩(ことは)   さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
酒井 美保       さくらの義理の伯母 諦一 詩の母 
榊原 留美       さくらと同居 中一からの同級生 
夕陽丘頼子       さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 聖真理愛女学院高校三年生
ソフィー        ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍少尉
ソニー         ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍伍長
月島さやか       さくらの担任の先生
古閑 巡里(めぐり)  さくらと留美のクラスメート メグリン
百武真鈴(田中真央)  高校生声優の生徒会長
女王陛下        頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首
江戸川アニメの関係者  宗武真(監督) 江原(作監) 武者走(脚本) 宮田(制作進行) 花園あやめ(声優)  
さくらをとりまく人たち ハンゼイのマスター(昴・あきら) 瑞穂(マスターの奥さん)
  
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