334 / 432
334『バグパイプと丘の上の王子さま』
しおりを挟む
せやさかい
334『バグパイプと丘の上の王子さま』さくら
朝食の食卓に着くと同時にバグパイプが鳴り出した。
みんなも「あれえ?」いう顔で、座りかけた腰を上げて窓の方を向く。
「ああ、アーネストさんだわ」
頼子さんは、一瞬で確認すると――こっちこっち――と目でサイン。
「練習かねて、朝食の間やってくれてるんだわ。彼も、どうやらかり出されるみたいね」
アーネストさんは、このお屋敷の執事。サッチャー……イザベラさんは女王陛下に付いてるメイド長やけど、アーネストさんはお屋敷に付いてる執事さん。
イザベラさんは女王陛下に付いて、夏の間だけここに居てるけど。アーネストさんは、陛下の移動に関係なくお屋敷に居て、維持管理と運営を任されてる。
「バグパイプの演奏付きって、素敵で贅沢ねぇ」
詩(ことは)ちゃんの目ぇがへの字になる。
「あはは、うちの朝は、どないかしたらお経のBGやもんね」
留美ちゃんが、いっしょにウフフと笑う。留美ちゃんも、すっかり如来寺の子ぉです。
「両方ともいいですよ、お経もバグパイプもライブですからね……」
多くは語らへんけど、メグリンは一人でご飯食べてるときが多いんちゃうやろか。
うちも、小6までは母子家庭で、半分くらいは一人飯やったから、雰囲気で分かる。
「さあ、さっさと食べちゃおうか、今日も予定がいっぱいだよ!」
「「「「はい!」」」」
昨日は、ジョギングの後、シャワーしてから、ジョン・スミスの運転でエディンバラの街に。
せやけど、前みたいに観光やないんです。
ミリタリータトゥーのための衣装合わせ。
さすがにオーダーメイドやないねんけど、試着した上で部分的な補正が入る。
詩ちゃんはウエスト、メグリンは胸のタック、頼子さんは肩のとこ、うちはスカート丈を補正……そうですよ、うちのんは、3センチも丈を詰めました!
留美ちゃん一人だけは、補正無しのピッタリ。ま、こういうこともある。
それが終わって、昼からはスコティッシュダンスの練習。
練習の前と後に、ちょっとだけ時間があって、ロイヤルマイル(エディンバラ城に続くメインストリート)を、ちょっとだけ散歩。
今日も似たようなスケジュールやねんやろね。
朝ごはんが済んで、部屋に戻る。
今年は、頼子さんの希望で、みんな揃って大部屋に寝泊まりしてます。
「あれ、バグパイプ、まだ続いてる」
「というか、増えてない?」
雁首揃えて窓の下を見る。
なんと、ソフィーとソニーの姉妹もやってるやおまへんか!
「お祖母ちゃん、どこまで広げるつもりなんだろぅ」
呆れたり、素敵に思ったりしてると、頼子さんのパソコンが着信のシグナル。
「あ、テイ兄ちゃんからだよ。スカイプやっていいかって」
よくない!
言おうと思ったら、すでに頼子さんは、スタートのボタンをクリックしてた。
クソ坊主の話は割愛やねんけど、途中でおばちゃんが割り込んできた。
『ねえ、バグパイプが聞こえてるわよね!』
おばちゃんらしからぬハイテンションで、画面に現れる。
「おばさま、バグパイプがお好きなんですか?」
プリンセススマイルで頼子さん。
『うん、そうよ、頼子ちゃん! バグパイプって言ったら《丘の上の王子さま》なんだからね!』
「「「「「丘の上の王子さまぁ?」」」」」
みんな、ぜんぜん分かってへんねんけど、おばちゃんの喜びようは、こっちまで嬉しくなってくる。
別にマイクを付けてカメラを持ってバルコニーまで出て、ちょうどソフィア姉妹に見本を見せてるアーネストさんを激写する。
あとで「丘の上の王子さまなんだって!」と、頼子さんが伝えてあげると、少年のように頬を染めるアーネストさんが、とっても可愛かったです(^▽^)/
で、『丘の上の王子さま』ってなんやろ?
☆・・主な登場人物・・☆
酒井 さくら この物語の主人公 聖真理愛女学院高校一年生
酒井 歌 さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
酒井 諦観 さくらの祖父 如来寺の隠居
酒井 諦念 さくらの伯父 諦一と詩の父
酒井 諦一 さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
酒井 詩(ことは) さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
酒井 美保 さくらの義理の伯母 諦一 詩の母
榊原 留美 さくらと同居 中一からの同級生
夕陽丘頼子 さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王位継承者 聖真理愛女学院高校三年生
ソフィー 頼子のガード
ソニー ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド
月島さやか さくらの担任の先生
古閑 巡里(めぐり) さくらと留美のクラスメート メグリン
女王陛下 頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首
334『バグパイプと丘の上の王子さま』さくら
朝食の食卓に着くと同時にバグパイプが鳴り出した。
みんなも「あれえ?」いう顔で、座りかけた腰を上げて窓の方を向く。
「ああ、アーネストさんだわ」
頼子さんは、一瞬で確認すると――こっちこっち――と目でサイン。
「練習かねて、朝食の間やってくれてるんだわ。彼も、どうやらかり出されるみたいね」
アーネストさんは、このお屋敷の執事。サッチャー……イザベラさんは女王陛下に付いてるメイド長やけど、アーネストさんはお屋敷に付いてる執事さん。
イザベラさんは女王陛下に付いて、夏の間だけここに居てるけど。アーネストさんは、陛下の移動に関係なくお屋敷に居て、維持管理と運営を任されてる。
「バグパイプの演奏付きって、素敵で贅沢ねぇ」
詩(ことは)ちゃんの目ぇがへの字になる。
「あはは、うちの朝は、どないかしたらお経のBGやもんね」
留美ちゃんが、いっしょにウフフと笑う。留美ちゃんも、すっかり如来寺の子ぉです。
「両方ともいいですよ、お経もバグパイプもライブですからね……」
多くは語らへんけど、メグリンは一人でご飯食べてるときが多いんちゃうやろか。
うちも、小6までは母子家庭で、半分くらいは一人飯やったから、雰囲気で分かる。
「さあ、さっさと食べちゃおうか、今日も予定がいっぱいだよ!」
「「「「はい!」」」」
昨日は、ジョギングの後、シャワーしてから、ジョン・スミスの運転でエディンバラの街に。
せやけど、前みたいに観光やないんです。
ミリタリータトゥーのための衣装合わせ。
さすがにオーダーメイドやないねんけど、試着した上で部分的な補正が入る。
詩ちゃんはウエスト、メグリンは胸のタック、頼子さんは肩のとこ、うちはスカート丈を補正……そうですよ、うちのんは、3センチも丈を詰めました!
留美ちゃん一人だけは、補正無しのピッタリ。ま、こういうこともある。
それが終わって、昼からはスコティッシュダンスの練習。
練習の前と後に、ちょっとだけ時間があって、ロイヤルマイル(エディンバラ城に続くメインストリート)を、ちょっとだけ散歩。
今日も似たようなスケジュールやねんやろね。
朝ごはんが済んで、部屋に戻る。
今年は、頼子さんの希望で、みんな揃って大部屋に寝泊まりしてます。
「あれ、バグパイプ、まだ続いてる」
「というか、増えてない?」
雁首揃えて窓の下を見る。
なんと、ソフィーとソニーの姉妹もやってるやおまへんか!
「お祖母ちゃん、どこまで広げるつもりなんだろぅ」
呆れたり、素敵に思ったりしてると、頼子さんのパソコンが着信のシグナル。
「あ、テイ兄ちゃんからだよ。スカイプやっていいかって」
よくない!
言おうと思ったら、すでに頼子さんは、スタートのボタンをクリックしてた。
クソ坊主の話は割愛やねんけど、途中でおばちゃんが割り込んできた。
『ねえ、バグパイプが聞こえてるわよね!』
おばちゃんらしからぬハイテンションで、画面に現れる。
「おばさま、バグパイプがお好きなんですか?」
プリンセススマイルで頼子さん。
『うん、そうよ、頼子ちゃん! バグパイプって言ったら《丘の上の王子さま》なんだからね!』
「「「「「丘の上の王子さまぁ?」」」」」
みんな、ぜんぜん分かってへんねんけど、おばちゃんの喜びようは、こっちまで嬉しくなってくる。
別にマイクを付けてカメラを持ってバルコニーまで出て、ちょうどソフィア姉妹に見本を見せてるアーネストさんを激写する。
あとで「丘の上の王子さまなんだって!」と、頼子さんが伝えてあげると、少年のように頬を染めるアーネストさんが、とっても可愛かったです(^▽^)/
で、『丘の上の王子さま』ってなんやろ?
☆・・主な登場人物・・☆
酒井 さくら この物語の主人公 聖真理愛女学院高校一年生
酒井 歌 さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
酒井 諦観 さくらの祖父 如来寺の隠居
酒井 諦念 さくらの伯父 諦一と詩の父
酒井 諦一 さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
酒井 詩(ことは) さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
酒井 美保 さくらの義理の伯母 諦一 詩の母
榊原 留美 さくらと同居 中一からの同級生
夕陽丘頼子 さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王位継承者 聖真理愛女学院高校三年生
ソフィー 頼子のガード
ソニー ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド
月島さやか さくらの担任の先生
古閑 巡里(めぐり) さくらと留美のクラスメート メグリン
女王陛下 頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました
宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。
ーーそれではお幸せに。
以前書いていたお話です。
投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと…
十話完結で既に書き終えてます。
思い出を売った女
志波 連
ライト文芸
結婚して三年、あれほど愛していると言っていた夫の浮気を知った裕子。
それでもいつかは戻って来ることを信じて耐えることを決意するも、浮気相手からの執拗な嫌がらせに心が折れてしまい、離婚届を置いて姿を消した。
浮気を後悔した孝志は裕子を探すが、痕跡さえ見つけられない。
浮気相手が妊娠し、子供のために再婚したが上手くいくはずもなかった。
全てに疲弊した孝志は故郷に戻る。
ある日、子供を連れて出掛けた海辺の公園でかつての妻に再会する。
あの頃のように明るい笑顔を浮かべる裕子に、孝志は二度目の一目惚れをした。
R15は保険です
他サイトでも公開しています
表紙は写真ACより引用しました
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
揺れる波紋
しらかわからし
ライト文芸
この小説は、高坂翔太が主人公で彼はバブル崩壊直後の1991年にレストランを開業し、20年の努力の末、ついに成功を手に入れます。しかし、2011年の東日本大震災と福島第一原子力発電所の事故によって、経済環境が一変し、レストランの業績が悪化。2014年、創業から23年の55歳で法人解散を決断します。
店内がかつての賑わいを失い、従業員を一人ずつ減らす中、翔太は自身の夢と情熱が色褪せていくのを感じます。経営者としての苦悩が続き、最終的には建物と土地を手放す決断を下すまで追い込まれます。
さらに、同居の妻の母親の認知症での介護が重なり、心身共に限界に達した時、近所の若い弁護士夫婦との出会いが、レストランの終焉を迎えるきっかけとなります。翔太は自分の決断が正しかったのか悩みながらも、恩人であるホテルの社長の言葉に救われ、心の重荷が少しずつ軽くなります。
本作は、主人公の長年の夢と努力が崩壊する中でも、新たな道を模索し、問題山積な中を少しずつ幸福への道を歩んでいきたいという願望を元にほぼ自分史の物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる