上 下
193 / 432

193『満開の梅にことよせて』

しおりを挟む

せやさかい

193『満開の梅にことよせて』詩(ことは)          

 

 

 境内の梅が満開になった。

 

 写真を撮ろうかと提案したら、みんなが手を挙げて、けっきょく家族総出の記念写真になる。

 いちおうお寺なので、パイプ椅子三つ出して坊主席。

「わしらは後ろでええで」

 そう言うと、お祖父ちゃんは留美ちゃんを手招きして、さっさと座らせてしまう。

「あ、わたし、立ってます(^_^;)」

「ええからええから( ^)o(^ )」

 愚兄に促されて、わたしとさくらが留美ちゃんを挟んで座る。

「留美ちゃん、こいつも頼むわ」

 愚兄がダミアを留美ちゃんの膝にのせて重しにして留美ちゃんの遠慮を封じてしまう。

 お父さんが愛用のカメラを出してきて、手際よくセッティング。

 檀家とか坊主仲間の集まりで慣れているので、こういうことをやらせると手際がいい。

 クンクン クンクン

「もう、女の子が前に座ってるからって、クンカクンカしないでよね」

「い、いや、ちゃうて! 花粉症や花粉症!」

「まあ、どうだかあ~」

「留美ちゃん、うちと替わりい」

 さくらが上手いことを言って、留美ちゃんを真ん中に据える。

 わずか三十秒で、留美ちゃんを真ん中にした記念写真のポジションが決まる。

 三枚撮って、みんなも自分のスマホを出して、同じものを何枚も撮る。

「う~ん、釣鐘堂の脇もええし、紅梅のとこもええし……」

 さくらもノッテきて、女子三人、境内のあちこちで続きを撮ってみる。

「あ、夕陽丘さんも呼んであげたらよかったね」

 分かっていながら、わざわざ苗字の方で言ってみる。

「あ、それはまた日を改めて……でも、なんで苗字で?」

「えへ、ちょっと実験」

 言いながら、お祖父ちゃんと山門の方へ歩いて行く愚兄を見る。愚兄には『頼子さん』でインプットされているので、とっさには反応しない。

「写真、頼子さんには、わたしから送っていいですか?」

 留美ちゃんの素直な反応に愚兄の耳がピクリと動いたような気がしたのは考えすぎ?

「ああ、それやったら俺から……」

 アハハハ

 アグレッシブな反応に、三人思わず笑ってしまう。

「ちょっと、みんな来てみい」

 お祖父ちゃんが、山門の前でオイデオイデしている。

「なあに?」「なになに?」「なんですか?」

 山門の脇をを見て新鮮な驚き。

「あ、あ、すみません((ノェ`*)っ))」

 留美ちゃんが表札を見て顔を赤くする。

 うちはお寺なので、表札が二つある。

 大きな『安泰山如来寺』という大きいのと、普通サイズの『酒井』の表札。

 その『酒井』の表札が新しくなり『酒井』の横に小さく『榊原』と書き加えてある。

「郵便とか宅配さんとか困らんようにな」

 郵便と宅配のためだと言ってるけど、留美ちゃんを家族の一員として受け入れていることの意味の方が大きい。留美ちゃんの顔が、また赤くなった。

「ね、ここでも写真撮ろう!」

 お父さんとお母さんは抜けていたけど、再びの撮影会。

 これで最後の一枚……と思ったら、山門の前を真っ新な聖真理愛女学院高校の制服着た女の子が自転車で駆け抜けていった。

 え?

 そう言えば、今日あたりが合格者登校日。

 この近所にも聖真理愛の生徒がいるんだと、三年前の自分を見るようで、少し胸が熱くなった。

 

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました

宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。 ーーそれではお幸せに。 以前書いていたお話です。 投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと… 十話完結で既に書き終えてます。

思い出を売った女

志波 連
ライト文芸
結婚して三年、あれほど愛していると言っていた夫の浮気を知った裕子。 それでもいつかは戻って来ることを信じて耐えることを決意するも、浮気相手からの執拗な嫌がらせに心が折れてしまい、離婚届を置いて姿を消した。 浮気を後悔した孝志は裕子を探すが、痕跡さえ見つけられない。 浮気相手が妊娠し、子供のために再婚したが上手くいくはずもなかった。 全てに疲弊した孝志は故郷に戻る。 ある日、子供を連れて出掛けた海辺の公園でかつての妻に再会する。 あの頃のように明るい笑顔を浮かべる裕子に、孝志は二度目の一目惚れをした。 R15は保険です 他サイトでも公開しています 表紙は写真ACより引用しました

家に帰ると夫が不倫していたので、両家の家族を呼んで大復讐をしたいと思います。

春木ハル
恋愛
私は夫と共働きで生活している人間なのですが、出張から帰ると夫が不倫の痕跡を残したまま寝ていました。 それに腹が立った私は法律で定められている罰なんかじゃ物足りず、自分自身でも復讐をすることにしました。その結果、思っていた通りの修羅場に…。その時のお話を聞いてください。 にちゃんねる風創作小説をお楽しみください。

政略結婚の約束すら守ってもらえませんでした。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 「すまない、やっぱり君の事は抱けない」初夜のベットの中で、恋焦がれた初恋の人にそう言われてしまいました。私の心は砕け散ってしまいました。初恋の人が妹を愛していると知った時、妹が死んでしまって、政略結婚でいいから結婚して欲しいと言われた時、そして今。三度もの痛手に私の心は耐えられませんでした。

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

処理中です...