183 / 432
183『詩ちゃんと大掃除』
しおりを挟むせやさかい
183『詩ちゃんと大掃除』さくら
きょうは自分の部屋の大掃除。
来週になると本堂とかの大掃除になるので、まずは自分の部屋から。
お寺の大掃除はたいへんなんです。
なんせ、敷地だけでも五百坪。本堂の内陣と外陣で百坪。とても一日では終わりません。
去年は、まずはお寺が先と思て、自分のを後回しにしたら、ヘゲヘゲでなんにもできませんでした。
まあ、その年の四月に引っ越してきたから、大掃除いうほどのこともないこともあったんやけどね。
せやさかい、今年は、まずは自分の部屋から。
わたしの部屋は玄関上がって、リビングの外の廊下をL字型に進んだどん詰まりの階段を上がった二階。
廊下を挟んで詩(ことは)ちゃんと向かい合わせの八畳間。
「「よし、やるぞ!」」
詩ちゃんと、気合いを入れて、それぞれの部屋にかかる。
たった一年と九カ月やねんけど、本棚の後ろとかベッドの下は埃だらけ(^_^;)
床のカーペットを半分まくって、本堂用の掃除機をガアアアアって感じでかけまくる。
ガアアアアア グガガガガガアアアアアア ガッガッガッガガアアアアアアア
え、え、なんか音がおかしい(;゜Д゜)
「ゴミが溜まってるんだよ」
詩ちゃんが廊下まで出てきて忠告してくれる。
「えと……(掃除機の開け方が分からへん)」
「あ、こうやるんだよ」
バッチンていうんやろか、トランクの金具みたいなんをバッチンと開けて、グニっと回してカパッと開ける。むろん開けたのは詩ちゃん。
「「うっわあああ!」」
ゴミ袋がパンパン。
「このまま取り出したら、埃だらけになっちゃうよ(^_^;)」
「窓、あけよか」
詩ちゃんの提案で、越してきた時に一回開けただけの窓を開ける。
うちの部屋は、あたしが越してくるまでは、ずっと物置になってて、あたしが使う分だけ片づけただけやから、窓を半分隠すようにして、屏風みたいなもんが突っ込んである。それをどけて、どっこいしょ!
グァラリ!
「うっわああ!」
開けてビックリ。
窓の外は、お寺の裏通りになってて、四メートルの生活道路を挟んでお隣りさん。
ほら、去年火事が起こった、あのお家。
お隣りとは、町会の班が違うので日常的なお付き合いはない。
お隣りに行くには、階段を下りて、L字の廊下を通って玄関に出て、本堂と釣鐘堂の前を通って山門を出て、お寺の外周を半分回ったとこ。
ちょっと遠い感じやったんやけど、こうやって窓を開けると、ちょっとジャンプしたらお隣りの玄関先。
ちょっと変な感じ。
「去年の火事、大事になってたら、ここから燃え移ってるね……」
詩ちゃんが怖いことを言う。
「さ、ゴミ袋」
「本堂やったね」
「あ、この部屋にもあるよ」
「ほんま?」
「うん……」
詩ちゃんはデリカシーのある子ぉで、さすがに元物置とは言わへん。
「こっちのクローゼットにね……」
これも思いやり。ただの納戸やねんけど、クローゼットと優しく言うてくれる。
「ええと、たしか……こっちに」
「あ、これ?」
「あ、そうそう」
その時、ちょっと無精して、手前の段ボール箱をどけへんかったんで、バランスを崩した段ボール箱がドサドサっと落ちてきた。
「あっちゃあ」
オッサンみたいな声あげて、片づけようと思ったら、箱が崩れて中身が出てきてしもた(^_^;)。
「あ、これ、お祖父ちゃんのだ」
中身はノートやら原稿用紙やらがびっしりと詰まってた。
チラリと見ると、原稿みたい。
「お祖父ちゃん、昔は小説家になりたかったとか言ってたから……」
「すごい、みんな手書きやんか!」
ビッシリ入ってる原稿、あんまり多いんで読んでみよういう気にはなれへん。とりあえず、ビックリ。
その中に、厳重に封印されて巻いた麻ひもの結び目も蝋で固めてあるという特別そうなのが目に入る。
「え、うそお!?」
袋に筆書きしてあるタイトルを見てビックリした。
「『鬼滅の刃』!?」
「ちょっと、違うみたい……」
詩ちゃんと落ち着いて読み直すと……タイトルは……
「『滅鬼の刃』!?」
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが
マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって?
まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ?
※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。
※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。
ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました
宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。
ーーそれではお幸せに。
以前書いていたお話です。
投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと…
十話完結で既に書き終えてます。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
家に帰ると夫が不倫していたので、両家の家族を呼んで大復讐をしたいと思います。
春木ハル
恋愛
私は夫と共働きで生活している人間なのですが、出張から帰ると夫が不倫の痕跡を残したまま寝ていました。
それに腹が立った私は法律で定められている罰なんかじゃ物足りず、自分自身でも復讐をすることにしました。その結果、思っていた通りの修羅場に…。その時のお話を聞いてください。
にちゃんねる風創作小説をお楽しみください。
隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました
ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら……
という、とんでもないお話を書きました。
ぜひ読んでください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる