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161『リボンとかネクタイとか・2』

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せやさかい

161『リボンとかネクタイとか・2』頼子        

 

 
 ネクタイ・リボンの話の続きから。

 なぜ、我々の聖真理愛女学院の制服にはリボンが無いのかという疑問。

 ググっても分からない。かと言ってソフィアに聞くのは降参するみたいなので、ペヤングの超大盛焼きそばを食べようとしているジョン・スミスに聞いてみた。

「あ、それはですね。聖真理愛女学院はミッションスクールなので、日ごろの学校生活の中でもキリスト教の精神を大事にします」

「キリスト教の精神を大事にすると、どうしてネクタイやリボンが無くなるわけ?」

「それは、キリスト者は、神にのみ服従するからですよ」

「神に服従すると、リボンとかネクタイが無くなるわけ?」

「はい」

「どうして?」

「それはご自身でお考え下さい。女王陛下から、安易に答えを与えないように申し付かっております」

「ペヤングの超大盛って、諜報部員の『適正体重保持義務』に反する恐れがあるんじゃないかしら」

「わたしの身長と筋肉量から見ると、この超大盛でレギュラーの量なんですよ、殿下」

「ん……待って」

 横に置いてあるマウスとの高さに違和感を感じた。ちょっとしゃがんでみる……。

「あ、普通の超大盛よりもブットイ!?」

 ゴミ箱を覗こうとしたら、ジョン・スミスが浮足立つんだけど、一瞬早くゴミ箱に入っている焼きそばのフタを取り上げる。

「な、な、なんと!?」

 パッケージに書いてあったのは『ペヤング ソースやきそば 超超超大盛 GIGAMAX』

 おまけにマヨネーズマックスバージョンで、その熱量は2174キロカロリー!!

「禁断のギガマックス……ジョン・スミス、あなた……」

「こ、これは……女王陛下には、どうぞご内聞に(;゜Д゜)」

「あなたの答え次第ね……」

「いたしかたありません……」

 

 ジョン・スミスの弱みを握って聞きだした答えはこうだ。

 ネクタイやリボンは『人を縛ることの象徴』で、貴族性のヨーロッパで国王や貴族の主人に仕えるために――わたしはあなた様に縛られます――という意味があるのだそうよ。

 縛られると言ってもSMじゃないのは分かるわよね。

 キリスト者を縛るのは三位一体の『天にまします我らが神』以外には無いわけで、世俗の権力に縛られる象徴であるネクタイやリボンはしないというわけ。

「なるほどねえ……」

 そのネクタイを形式化して引っ張られたらすぐにとれてしまうようにしたのは、言ってみれば、権力からの解放を指向するとも言える。想像力を膨らませれば、自由への指向と言えるかもしれない……というのはジョン・スミスの解説。

 わたしは、ますます夏目銀之助君への興味が湧いた。

 折しも、八月の第一週で、学校もようやく遅い夏休みに突入。

 ジョン・スミスから召し上げたカップ焼きそばのあれこれをお土産に如来寺の部室に向かった。

 

 
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