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073『ニャンコの名前』
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せやさかい
073『ニャンコの名前』
ニャンコがうちの子になると決まって、部活はうちの家でやることになった。
留美ちゃんも頼子さんもニャンコを引き取りたそうにしてたんやけど、家族のネコアレルギーとかででけへんくなった。
あたしが預かることになって、うちに来たそうにしてたけど、いずれは飼い主に返さならあかんと思うと、言い出されへんかったんやね。ほかにも、ニャンコを見たらはしゃいでしもて迷惑かけるんちゃうやろかとか、気ぃもつこてたみたい。
「え、まだ名前つけてなかったの!?」
ニャンコと再会するなり「名前は、なんて付けたの?」と、留美ちゃん。
「えと、まだ絞り切れてないさかい、とりあえず『ネコちゃん』やねんけど」
「それは、早く付けてあげなきゃ『ネコちゃん』で憶えてしまったら、変えられないよ」
「あ、そうですねえ」
じつは困ってた。そやかて、名前つけるっていうのは、めっちゃむつかしい。
ゲームで、アバターとか作ったり、主人公に名前つけならあかんかったりするでしょ。そんなとき、なかなか名前決められへん人なんです。
さくらいう自分の名前もね、気に入ってはいるねんけど、小学四年のとき『男はつらいよ』のDVD観てて寅さんの妹が『桜』いうのにショック!
倍賞千恵子さんの桜は、めっちゃ美人で可愛くて、お兄ちゃん思いで、人付き合いもうまくて、家事も仕事もチャッチャとこなして、歌もメゾソプラノのキレイな声で……憧れ持つのもおこがましいほどの女性。そんな桜に圧倒されてたら、お母さんが、こない言うた。
「お父さんと二人でね、この倍賞さんの桜みたいな女の子になったらいいなって、それで付けたんだよ」
慰めになりませんやんか(-_-;)
よけいに重たなる。お父さんは、家を出てったきりという点では寅さんに似てるけど。いやいやちゃう。寅さんは、ときたま帰って来るけど、お父さんは帰ってこーへん。
むろん、お母さんは、寅さんになぞらえることで、娘に希望を持たせたかったんや。
あんたは倍賞さんの桜みたいにええ子やねんで……とか。お父さんも、そのうち帰って来るとか……ね。
そやけど、うちは、ただただ圧倒されてたんです。
あ、そうそう、ニャンコの名前。
けっきょく、頼子さん、留美ちゃん、それに、うちの家族が思いついた名前を一つ一つ呼んでみることにする。
それでニャンコが反応したら、それに決めることにした。
テイ兄ちゃんの案は最初から外しとく。なんせ『とら』とか『くま』やさかい。
たま ミケ ショコラ ソラ モモ ココ マル ムギ きなこ りん メイ ナナ
候補に挙がった五十ちょっとの名前で呼ぶんやけど、ニャンコはキョトンとしてる。
ネコちゃん
ミャー
あかんあかん、ネコちゃんで憶えかけてる。
「もう、ネコちゃんでええんちゃうん」
「テイ兄ちゃん!」
いつのまにか、うちの家族も集まってきて廊下から覗いてる。
「こんなん、どうや」
お祖父ちゃんが、不肖の孫を押しのけて入ってきた。
ダミア
お祖父ちゃんが呼びかけると、ニャンコはチリンと鈴を鳴らして「ニャーー」と返事をした。
「どうやら、気に入ったようやなあ」
なんかナッツみたいと思たけど、あたしも『ダミア』と呼んでみる。
ニャー
返事しただけやのうて、トテトテとあたしの膝元に歩いてきた。
かくして、ネコちゃんの名前は『ダミア』と決まった。
073『ニャンコの名前』
ニャンコがうちの子になると決まって、部活はうちの家でやることになった。
留美ちゃんも頼子さんもニャンコを引き取りたそうにしてたんやけど、家族のネコアレルギーとかででけへんくなった。
あたしが預かることになって、うちに来たそうにしてたけど、いずれは飼い主に返さならあかんと思うと、言い出されへんかったんやね。ほかにも、ニャンコを見たらはしゃいでしもて迷惑かけるんちゃうやろかとか、気ぃもつこてたみたい。
「え、まだ名前つけてなかったの!?」
ニャンコと再会するなり「名前は、なんて付けたの?」と、留美ちゃん。
「えと、まだ絞り切れてないさかい、とりあえず『ネコちゃん』やねんけど」
「それは、早く付けてあげなきゃ『ネコちゃん』で憶えてしまったら、変えられないよ」
「あ、そうですねえ」
じつは困ってた。そやかて、名前つけるっていうのは、めっちゃむつかしい。
ゲームで、アバターとか作ったり、主人公に名前つけならあかんかったりするでしょ。そんなとき、なかなか名前決められへん人なんです。
さくらいう自分の名前もね、気に入ってはいるねんけど、小学四年のとき『男はつらいよ』のDVD観てて寅さんの妹が『桜』いうのにショック!
倍賞千恵子さんの桜は、めっちゃ美人で可愛くて、お兄ちゃん思いで、人付き合いもうまくて、家事も仕事もチャッチャとこなして、歌もメゾソプラノのキレイな声で……憧れ持つのもおこがましいほどの女性。そんな桜に圧倒されてたら、お母さんが、こない言うた。
「お父さんと二人でね、この倍賞さんの桜みたいな女の子になったらいいなって、それで付けたんだよ」
慰めになりませんやんか(-_-;)
よけいに重たなる。お父さんは、家を出てったきりという点では寅さんに似てるけど。いやいやちゃう。寅さんは、ときたま帰って来るけど、お父さんは帰ってこーへん。
むろん、お母さんは、寅さんになぞらえることで、娘に希望を持たせたかったんや。
あんたは倍賞さんの桜みたいにええ子やねんで……とか。お父さんも、そのうち帰って来るとか……ね。
そやけど、うちは、ただただ圧倒されてたんです。
あ、そうそう、ニャンコの名前。
けっきょく、頼子さん、留美ちゃん、それに、うちの家族が思いついた名前を一つ一つ呼んでみることにする。
それでニャンコが反応したら、それに決めることにした。
テイ兄ちゃんの案は最初から外しとく。なんせ『とら』とか『くま』やさかい。
たま ミケ ショコラ ソラ モモ ココ マル ムギ きなこ りん メイ ナナ
候補に挙がった五十ちょっとの名前で呼ぶんやけど、ニャンコはキョトンとしてる。
ネコちゃん
ミャー
あかんあかん、ネコちゃんで憶えかけてる。
「もう、ネコちゃんでええんちゃうん」
「テイ兄ちゃん!」
いつのまにか、うちの家族も集まってきて廊下から覗いてる。
「こんなん、どうや」
お祖父ちゃんが、不肖の孫を押しのけて入ってきた。
ダミア
お祖父ちゃんが呼びかけると、ニャンコはチリンと鈴を鳴らして「ニャーー」と返事をした。
「どうやら、気に入ったようやなあ」
なんかナッツみたいと思たけど、あたしも『ダミア』と呼んでみる。
ニャー
返事しただけやのうて、トテトテとあたしの膝元に歩いてきた。
かくして、ネコちゃんの名前は『ダミア』と決まった。
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